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地図で明治国道を《謎》る  3

現代版国道図: デジタル化された明治国道

ここからは,明治国道の表示例を幾つかご紹介します.図1は『カシミール3D』で地理院タイル(新版-淡色,レベル9)に路線を表示した事例です.この図も『カシミール3D』にkmlファイルをドラッグ&ドロップすればすぐに描画されます.

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図1:明治国道の路線図(中日本)


「国道表」は大正9年の道路法制定による廃止までに48回の改正が行われますが,この地図ではそれら改正前後の路線も含めています.

例えば図1の破線の枠に囲まれた箇所にある二本の線はその一例です.ここは陸羽街道の氏家-白河間にて大きな路線の付替があった場所です.改正後の路線はその区間だけがkmlファイルとしてデータ構造化させているので,GISソフトウェアでの機能で色分けや線種を変えるなど,視覚化を工夫することもできます.


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図2は同じく『カシミール3D』で『地理院タイル』(新版-淡色,レベル11)にて起点付近を表示したものです.デジタルトレースでは,路線のほかに,「駅名」(地名)もポイントデータとしてkml化しています.

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図2: 『地理院タイル』に路線と駅名(地名)を『カシミール3D』にて表示させた場合の表示例


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図3はタイルマップを活用した事例です.(a)は『今昔マップ』の地図区分である「首都圏」の旧版地図をタイルマップ方式にて『カシミール3D』に読み込み,ズームレベル15にて表示しています.


国道データは路線ごとにデータ構造化させているため,GISソフトウェアで色分け機能があれば,任意に着色させることもできます.ここでは,国道1号(赤),国道5号(黄緑),国道6号(黄),国道13号(橙),国道16号(青)としています.

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図3:『カシミール3D』上で『今昔マップ』の旧版地図(タイルマップ)にデジタルトレースデータを色分けした表示例 (日本橋付近),


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図4は発展型で,ここでは『今昔マップ』のタイルマップと地理院タイル『色別標高図』とを乗算方式で2つのレイヤーをミキシングさせています.こうすることにより,「時間」による土地利用の変化だけでなく,「地形」の特徴を同時にとらえることで道の成り立ちも考察しやすくなります.

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図4:『カシミール3D』上で『今昔マップ』の旧版地図と地理院タイル『色別標高図』とを重ね合わせた事例 (横浜付近)


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最後に図5は趣味から実学へGISによる歴史地理学,歴史情報学も意識した新旧国道の対比です.ここではViewerソフトとして『QGIS』を用いています.タイルマップは図6(b)と同じ『今昔マップ』の「首都圏」(1896-1909)で横浜付近をタイルマップで流し込んでいます.


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図5: 様々なオープンデータを『QGIS』上で重ね合わせた事例


なお,余談となりますが,『QGIS』のタイルマップのフォーマットはxmlに対して,『カシミール3D』ではjsonの違いがあります.それぞれのタイルマップのフォーマットやxmlからjsonへのpythonの変換コード(mapper)もありますので,興味があれば参照ください [6,7].


赤線で示している国道は,国土交通省の『国土数値情報』にある『道路データ』(平成7年(1995)年)のラインデータ [1],および青で示されている地区は情報・システム研究機構(ROIS)の『歴史的行政区域データセットβ版』のデータセット [2]のうち,大正8年の「保土ヶ谷町」のポリゴンデータです.

『道路データ』はshapefile(.shp)形式,また,『歴史的行政区域データセットβ版』はgeojson形式とデータフォーマットが異なりますが,『QGIS』であればGISで流通するマルチフォーマットに対応するため,このような異なる形式での表示も変換することなく表示することができます.


『QGIS』の内蔵する解析ツールや自作のpythonコードを実装させることで,新旧国道の重複率や重複区間の表示,もしくは旧行政区画といった特定のポリゴンにおける国道延長などの解析的な計算も行えるようになるでしょう.

(つづく)

[1] 国土交通省:国土数値情報/道路データ
[2] 情報・システム研究機構: 歴史的行政区域データセットβ版



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