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労働者の労働時間や健康管理の責任

コロナ禍で在宅勤務(テレワーク)が推奨され、働く場所や時間を自由に選択できることが社会に受け入れられるようになりました。これが実現できたのはオンライン会議などがストレスなくできるインターネットの普及やデジタル化など科学技術の進歩のおかげです。

テレワークという時間や場所に縛られない働き方が認められるようになると、子育てや介護、遠方に住んでいるといった状況やライフスタイルに合わせて自由な働き方ができるようになります。仕事をするのを諦めていた人も労働参加することができます。

個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を企業が許容することで「働きやすさ」が大幅に向上します。

今の労働基準法制というのは、戦後まもない昭和22年に制定されたもので、鉱山法とか工場法を前身としているそうです。鉱山とか工場に労働者が集められれ、使用者(企業)の管理下で指揮命令に従い、一定の時間働くことを想定しています。その後、何度も改正されましたが、現在の柔軟な働き方をカバーしているとは言い難いものがあります。

労働基準法は労働時間などの条件を規定し、労使間の契約によって労働者をまもるものです。その後、労働者の安全や心身の健康を保全するために労働基準法から派生して労働安全衛生法ができました。これらの労働基準法制によれば企業(使用者)は労働者をまもることが義務付けられています。

テレワークの普及で労働者が使用者の目の届かないところで、好きな時間に働けることになり、さらには副業も解禁されるとなると、使用者(企業)は労働者をどこまでまもるべきなのでしょうか?

政府は労働者の副業、兼業を推進していて、厚労省も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を平成30年に作成しています。(令和2年に改正)
このガイドラインは基本的には労働基準法に準拠していますが、労働基準法では以下のように規定してます。

労働基準法(以下「労基法」という。)の労働時間規制、労働安全衛生 法の安全衛生規制等を潜脱するような形態や、合理的な理由なく労働条件等を 労働者の不利益に変更するような形態で行われる副業・兼業は、認められず、 違法な偽装請負の場合や、請負であるかのような契約としているが実態は雇用 契約だと認められる場合等においては、就労の実態に応じて、労基法、労働安全衛生法等における使用者責任が問われる。

副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚労省)

また、ガイドラインには下記のような記載がある。企業は労働者の就業時間や健康管理をしなければならないという前提になっています。

必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要である。

副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚労省)

一方で、留意点として労働者自身による就業時間や健康管理も少しだけ求めています。これは、労働基準法が原則的に労働時間や健康を企業が責任を持って管理すべきとあるからです。

就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である。

副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚労省)

副業や兼業が促進され、企業で労働者の管理ができなくなると、労働者は起業(個人事業主を含む)しなければならなくなります。そうすると労働基準法で保護されるべき労働者ではなくなります。

企業が労働者を個人事業主として独立させ、契約によって仕事を与える偽装請負などに対して釘を刺しています。しかしながら、多様なライフスタイルを考慮した自由な働き方は、企業の労働管理の限界を突破することは容易に予測されるでしょう。

人生100年時代になって、ひとつの企業で働き続けるより、副業や兼業によって新たなスキルを身につけ、フリーランスとして働く人はますます増えると思います。その際の健康管理のあり方はやがて個人の責任になると思います。