見出し画像

宿の親父とPerfumeと その1

  今年のGWは1週間使って旅をしていた。ちょうどJR北海道が「6日間周遊きっぷ」という非常におトクな切符を販売していて、これがしかもGW中も使えるものだからありがたく利用させていただいた。

 ただ、宿は探さなければならない。性格的に私はあらかじめ探すといったことはできず、いつも行き当たりばったりなのだが、GW中ともなるとどこの宿もいっぱいで、下手をすればまだまだ寒い北海道の夜を、ヒグマの恐怖なんかにも怯えながら野宿しなければならない。

 3日目のことだが、いよいよ近場で宿を見つけられなかった。諦めて列車(それも1日数本しか走っていない路線)で1時間半ほど移動した場所にあるゲストハウスの予約を取った。1時間半と言ったがこれは最寄り駅までの話で、鉄道の駅からは歩ける距離ではない。もちろん公共交通もなく宿の主人に迎えに来てもらわなければいけない。

 しかしなんと都合の悪いことか、スマホの電池が切れ掛かっている。充電器は持っていない。しかも周囲に充電できるスポットそのものが見当たらない。なんとか残りの充電で連絡する。ゲストハウスのホームページには若者向け云々と書いていて、非常にやり手のオーナーと見た。でも、こんな日に空室があることにも若干の心配がある。どんな人が電話に出るのかとドキドキしながらダイヤルすると電話口から聞こえたのはゆっくりとした暗い声。だいぶ高齢の方なのかなと思い、イメージしていたものとのギャップに驚く。どこか先が思いやられてしまう。

 さて、なんとか鉄道に乗り目的の駅を目指す。少しうたた寝をしてしまったがなんとか目的の駅で降りる。北海道各地に見られるのだが、レトロな味わいのある駅で連絡橋を渡り改札口へと急ぐ。

 駅前には1台の車が停まっている。あちらも私に気がつき降りてくる。そのとき、一瞬わたしは目を疑った。出てきたのは確かに若くはないが、髪は明るい赤。服装も少しハワイアンな感じの、見た目が少しファンキーなおじさんである。先ほどの電話口の声と同じなのだが、予想とのギャップが激しい。二度目のギャップに情報の処理が追いつかない。そんなことを彼はつゆ知らず、車に乗るように案内してくれた。

 車に乗り込むとこれまた驚かされる。Perfumeのコンサート映像がナビ用と思われるモニターに映し出されている、あの軽快なリズムがまだその場に馴染めていない私をさらに混乱させる。

 さらに、それがまるで何もないように会話が進んでいく。BGMではない。後部座席に乗った私からも映像はよく見える。この空間はなんなのか。混乱は収まらない。

 さて、この旅はどうなるのか。混乱したまま進む車の中での話はまた次回としよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?