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日曜日の本棚#23『パディントン発4時50分』アガサ・クリスティー(ハヤカワ文庫)【マープルをサポートするキャラクターに注目!】

毎週日曜日は、読書感想をUPしています。

前回はこちら。

今回は、アガサ・クリスティーの2大キャラクターの一人、ミス・マープルの『パディントン発4時50分』です。
初のマープルものでした。私にとって、マープルのファーストネームが、ジェーンと知り、「そうなんだ!」という発見からスタートしました(^^)

作品紹介(ハヤカワ文庫より)

ロンドン発の列車の座席でふと目をさましたミセス・マギリカディは窓から見えた風景に、あっと驚いた。並んで走る別の列車の中で、いままさに背中を見せた男が女を締め殺すところだったのだ…鉄道当局も、警察も本気にはしなかったが、好奇心旺盛なミス・マープルだけは別だった!

本作はやはり有名なこのシーン。

この場面はよく知られていますよね。この先、どんな展開をみせるのか。全く予備知識がなく、おかげで楽しむことができた作品です。

所感

◆安楽椅子探偵:マープル

クリスティーを代表するキャラクター、ポアロは『オリエント急行殺人事件』のように事件へリアルタイムに遭遇するなど、アクティブに動く「動」の役割に対して、マープルは、「静」ともいうべき存在です。所謂、安楽椅子探偵として活躍します。しかし、肝心な謎解きでは、しっかりと存在感を示しています。また、論理的な謎解きを示すというよりも、豊富な人生経験を生かして、人間に対する洞察力から事件の扉を開いています。後述するルーシーへの仰天のミッションも楽しいところです。

◆ルーシー・アイルズバロウの活躍

本作では、体調があまりよくないマープルに代わって、家政婦ルーシー・アイルズバロウが活躍します。オックスフォード大学の数学科を出たというトリッキーな設定のキャラクターです。何でもこなすスーパー家政婦として描かれ、スケジュールの空きがないというフリーランスの鏡のような人物です。
事件を目撃した友人エルスペス・マギリカディから相談を受けたマープルが、ルーシーを口説き落として、目をつけたお屋敷に送り込みます。

クリスティー作品は本当にキャラクターが魅力的。ルーシーも例外ではありません。
残念ながら、ルーシーは本作限りのキャラクターようです。もっと活躍を見たかったと思わせる人物です。

◆緩めの塩梅が心地よい作品

本作は、ミステリーの区分としては、クリスティー作品に多い、いわゆる犯人当て(フーダニット)ですが、気難しい館の当主(ルーサー・クラッケンソープ)と娘のエマ、財産を当てにする息子たちの思惑が蠢く作品となっており、本格ミステリの記号化された登場人物というわけではありません。なので、人間模様も楽しい作品です。ガチガチのロジックで詰めるようなテイストではないのが、私にはよい塩梅に感じられました。マープルのキャラクターに合った世界観なのではと思います。

マープルが大活躍するという作品ではないので、マープル作品を本作から入るのは違っているかもしれませんが、マープル作品では最も有名な作品でもありますので、十分に楽しめる作品ではと思います。




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