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富山大物理の採点ミス(解答作成ミス)に思うこと【物理は概念であるがゆえに難しい】

富山大令和4年度入試の物理で採点ミスがあったようです。正確には解答にミスがあったとのことでした。
どのような間違いであったのか気になったので、確認してみました。

変圧器の問題のようですね。
ミスは2か所あり、最初は、(1)(b)。

変圧器の問題では、通常鉄芯の中に内部抵抗は設定しないので、珍しい設定だと感じます。この内部抵抗を設定したことで、問題が生じたのでしょう。
本問では、2次コイル側の回路(右端が切れていますが回路があるという前提)でのP1の「電位」を問うています。

ミスは符合だったようですね。

2か所目は、(3)(b)。

1次コイルの自己インダクタンス(L)を求める問題で、こちらも符合のミスとのことです。

出典はこちら

では、なぜミスが生じたのか。朝日新聞の記事によれば、

(プレゼント機能を使っています。3月8日10:45までリンクの記事が読めます)

大学によると、物理の問題は、教授を含む教員13人で構成する委員会が作成し、作問と点検を分担した。試験の前年8月に問題ができたが、回路上の一点の電位を問うなどの2問の正答例で、符号が逆転するミスが起きた。計9回の点検が繰り返されたがミスに気付かなかった。

とあります。国立大学らしく、丁寧に作問し、幾重にもチェックをかけています。それでもミスは生じるということでしょう。朝日新聞は、問題作成者への忖度なども原因の一つだったという大学側の見解を報じています。

どうしてミスが生じたのか、富山大の見解は以下の通りです。
(1)(b)について

赤太枠は筆者による

(3)(b)について

塾講師の立場でいうと、二つのミスは、どちらも符合のミスですが、根本的に原因が異なるのではと感じます。

同情できるのかなと感じるのは、(1)(b)のミスで、1次コイル側に回路を設定したことで、鉄芯に抵抗が必要になり、(2)でキルヒホッフの法則を使う問題が設定されました。その結果、2次コイル側にも抵抗が設定されることになり、(1)(b)のような電位を問う問題が成立するのでは?となったのではと思います。

変圧器の場合、磁場の変化を共有することで、「2次コイルに誘導起電力が生じ」ますが、この概念が抜けると、説明にもあるように、通常の電圧降下を起こす回路に見えてしまったのかなと思います。物理の場合、現象をどのようにとらえるかによって、思考は変化します。作問の先生も、チェックする先生も現象の捉え方の罠にはまってしまったのかもしれません。

一方、(3)(b)はミスが生じた見解が不思議に感じます。入試問題でよくコイルのインダクタンスは問われますが、多くはスカラー(大きさ)で考えることが多く、多くの受験生もスカラーで解いたのではと思います(キルヒホッフの法則で解いても、誘導起電力の符号はミスしようがない)。なので、解答をみて、かなりビックリしたのではと思います。考えられるの原因のひとつとして、作問した先生が入試問題作成に不慣れだったのかもしれません。

マスコミは、このようなミスが起こると容赦なくたたきますが、個人的にはそれだけでいいんだろうかと思います。確かに受験生が受けた不利益は大きいものがあるので、大学側のミスはあってはならないものではあります。ただ、そのような責任を問うのであれば、大学の先生の待遇はきちんとしたものでないといけないのではと感じます。

現場の先生の悲痛は、正しく社会が受けとめる必要があるのかなと思います。傷のなめあいはよくありませんが、作問に関わる先生の置かれた状況もよく分析したうえで、ミスの防止につなげて欲しいなと思います。

あと、ひとつ言えるのは、大学の先生のいろんな待遇はもっと良くする方向で考えないといけないということでしょう。それは小中高の先生の待遇にもつながる話です。未来のある若者をもっと大切にする意味でも、今の状況は良くないと思っています。もっと先生を大切にしてほしいと感じます。



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