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「年内入試」という名称が定着することの功と罪【少子化と数の均衡点はどこか?】

学校型推薦入試、総合型選抜入試をひとくくりにして、「年内入試」と表現する報道が目立つようになりました。

個人的には、良い面とそうでない面があるように感じています。

まず、良い面としては、私立大学の生き残り戦略として、学校型推薦入試、総合型選抜入試を重視せざるを得ない現実を可視化した点が大きいと思っています。

東京のある名門私大は、学校型推薦入試や総合型選抜入試を増やすことを、あたかも選抜機能として優れているからと(だけ)アピールしていたので、これはどうなんだろうと思っていました。

もちろん、推薦入試や総合型選抜入試が悪いと言っているわけではありません。ただ、これらの入試制度が一般入試よりも優れていると言わんばかりの言い分は実体を反映しているとは言えないと思っていたので、「年内入試を推し進めるのは、私立の事情による」という理解が進むことは悪くないと思っています。

事実、学生の青田買いという側面が伝えられると、その大学は、持論をそこまで強調しなくなった印象があります。私立大学の場合、ブランドイメージも大切だとは理解しつつも、自分たちの都合のよい方向に誘導できなくなったのは、全体的に見てよいことだと判断しています。
何事も多面的な情報が提示されることが大切だと感じるところです。

そのうえで、どのような受験チャンネルを選ぶかは、受験生の問題だと思っています。

一方で、「年内入試」という言葉が広まることのデメリットもあるのではと思います。
「年内」が強調されると、学校型推薦入試や総合型選抜入試は、「早く終わりたい」という意識の強い受験生には福音となって響いてしまうのはやむを得ないと思うからです。
つまり、「年内入試」は少なくともスケジュールだけをみても、楽だというイメージが広まりやすい(実際そうですし)。また、現時点では、制度の過渡期という点もあり、記事にあるように、

2020年の改革を受けて総合型・学校推薦型選抜にも学力を問うことが求められるようになった今も、定員割れを起こしている大学を中心に、受験すればほぼ合格できるという大学が増えています。

という現実もあります。
この問題は深刻で、少子化が加速している以上、定員割れをしている大学は、志望してくれるだけでありがたいお客様となり、合格?どうぞどうぞとなる一面がある。

塾の仕事をしている人間の目線では、受験生のうち、「年内入試」を希望しているのは、1~2割で、多くの受験生が選択肢の多様化を主な理由で、一般入試を希望しています。
逆に言うと、志望大学がはっきりしている場合は、「年内入試」を希望する割合が高くなる。現状では、明らかに入りやすい入試なので、ある意味当然です。

今後、このバランスが崩れたとき、入試は大きく変わるのではと思っています。
少子化は確実に加速し、その結果、経営との均衡点は、確実にハードルが高くなっている。私立大学があの手この手で、「年内入試」で早く定員を埋めたいという意識はより高くなるでしょうから。

実は、一般入試は、中~高偏差値大以外では、実質機能しなくなっていると私は理解しています。

大学の入学を許可するためには、大学を何をすべきなのかはそろそろ考えをまとめないといけない現実があるのではと思っています。

現状では、実質学力不問、学費を払ってくれる人募集となっている大学は結構ある。これを放置することは、いいとは思えません。経営だけをみれば、仕方ないという側面があります。それを超える指標が大学に求められていると思いますが、現状では、そのような萌芽は見えてこないなとも思っています。

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