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都市のデジタルツイン特別編     ―能登半島地震支援―

 「都市のデジタルツインって!?」シリーズ第10回の発信です。
 今回は、令和6年元旦に発生した能登半島地震に対するデジタルツインの支援について、担当者目線でご報告します。
 
 初めに、この度の地震によりお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
 また、被災者の救済と被災地の復興支援のために尽力されている方々に深く敬意を表します。


データ掲載に至るまで

 地震発生の翌日以降、国土地理院などから空中写真を中心とした被災状況に関するデータが順次公開されました。
 同時に、XなどではGIS(地理情報システム)に詳しい方がそれぞれソフトウェアを使いそれらのデータを可視化し発信していました。
それらを横目で見ながら、都のデジタルツイン3Dビューアは、誰でも手持ちのデータ(ローカルデータ)を簡単に重畳することが可能で、その結果やデータなどの内容をリンクで共有する機能があったことから、能登半島地震関連の公開されたデータを重畳し、これが被災地支援に役に立たないか、ということを内々に試行していました。
 
 1月中旬、石川県が、被災前に森林管理のために取得していた点群データを非商用に限り公開しました。この点群データは被災地の地形等が詳細にわかる貴重なデータでした。
 今回の地震は、被災規模が大きく行方不明者が多数出て、かつ、山間部に集落が点在、道路網が遮断、悪天候が続く、など厳しい条件下で被災者支援やライフライン復旧対応をされている真っ最中にデータの公開を決断された石川県のご苦労は計り知れないものがありました。
 
 この石川県の点群データの公開と機を同じく、都の3Dビューアに石川県の点群を掲載してはどうかという声があがりました。
 都の3Dビューアは、専用ソフト等が要らず、誰でもウェブブラウザ上で閲覧や簡単な分析などができるという特徴を持っています。そして、点群データを可視化できる公開ツールを有する自治体は全国でも都のみです。また、先ほどお話ししたように誰でも手持ちのデータを追加して、可視化もできることから非常に有効なツールです。
 
 検討を始めた際に、一番初めに頭によぎったのは被災自治体の意向でした。
 その時点では、まだ多くの行方不明者の探索、被災者支援やライフライン復旧対応が最優先で、被災自治体がデータの可視化というフェーズではないと推察されました。
 データの有用さや我々の3Dビューアで支援できることもあろうと想定はできましたが、様々な憶測等に基づく不確かな情報が拡散されるとかえって現場に負担がかかります。
 
 まずは被災地自治体の意向を確認し、その意向を踏まえ支援することにしました。
 お話を伺い、大変な状況の中でデータ公開を決断された石川県の想いをしっかりと受けて支援しよう、そして何よりも「被災自治体に負担を絶対かけない」ことを大原則としました。ここを間違えると支援が余計なお世話どころか、邪魔以外何物でもなくなるからです。
 
 3Dビューアに掲載するにあたり、石川県のデータは公開されたサイトからダウンロードする、発災後のデータは都が国と調整し、都が直接入手掲載する、と被災地自治体に負担をかけない手法を徹底しました。
 また、石川県の公開した点群データには色がなかったことから、同時期に公開された画像を用いて、都で加工し色を付けて(RGBあり)公開することとしました。

可視化したデータ

 様々な調整を経て2月2日より、以下のデータを3Dビューアで閲覧できるようになりました。

<被災前のデータ>

①点群データ(石川県公開データを基に都が加工)
…3次元の位置情報を有するデータ

点群データ


※参考:点群データとは?

②微地形表現図(石川県公開データ、森林総合研究所公開データ)
…地形特徴を直感的に理解しやすい形で表現した0.5mメッシュの画像データ。特徴としてダイナミックな地形表現が可能
 
③その他
…市町村境界・道路などのデータ

<被災後のデータ>

①オルソ画像(国土地理院の公開データ(1月2日、5日、11日、14日、17日撮影))
…写真画像に三次元計測データ等を加え正射変換を行った画像データ

②斜面崩壊・堆積分布データ(国土地理院の公開データ)
…国土地理院が地震発生後に撮影した空中写真から、斜面崩壊地及び土砂堆積箇所の範囲について判読(一部は再度判読)したデータ

斜面崩壊・堆積分布データ

③陸化したと思われる港等(国土地理院の公開データ)
…空中写真で確認した、陸化したと思われる港等のデータ
 
④亀裂分布データ:国土地理院の公開データ
…地震によって生じたと考えられる地表の亀裂箇所について空中写真判読を行ったデータ
 
 今後、石川県など被災地自治体の要望などを踏まえて順次データ追加・更新を行います。
 
 なお、石川県がご苦労されて公開されたデータを、都が3Dビューアでデータ公開・可視化をしましたが、これで終わりではありません。
 
 都は、2月中旬より、デジタル面での支援のため、職員等を石川県に派遣しています。

 こうしたデジタル専門人材の派遣も含め、被災地のニーズを踏まえ、余計なお節介になることなく、今回の3Dビューアでのデータ公開・可視化が少しでも被災地の復興の力になるよう
引き続き支援をしていきます。

おわりに

 今回公開したデータの先には、被災前の人々の穏やかな日々の暮らしがあり、美しい里山や豊かな里海など、愛すべき故郷の姿があります。また、それを一瞬にして変えてしまった地震の凄惨さも表されています。
 このデータ公開を機に、一人でも多くの方々が被災地に心を寄せていただき、一日も早い復興支援に少しでもお力添えいただけると幸いです。