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SLやまぐち号が素晴らしかったので乗ってみてねってだけの話(番外編)

12月の中旬、西日本へはるばる旅行へ。そのとき「SLやまぐち」というSL観光列車に乗ってきたのですが、これが素晴らしいものだったので布教することにします。

SLやまぐち基本概要

SLとはSteam Locomotiveを略した和製英語で、日本語訳は「蒸気機関車」となります。石炭を燃やし、その熱で水から水蒸気を発生させてピストンに送り、連動した車輪を動かして走る列車です。実用としての蒸気機関車は平成を待たずして消えてしまいましたが、SLブームなども手伝って比較的多数の機関車が解体を免れ、その多くは静態保存され、そして一部は「動態保存」……すなわち、釜に再び火が入れられて軌道の上を走っています。SLやまぐちはそういった動態保存のSL列車のひとつであり、同時に観光列車でもあります。

画像:Google Mapに加筆

SLやまぐち号は文字通り、本州最西端都道府県の山口県内を走行するSL列車。山陽新幹線も停まる新山口駅から山口線を通って島根県の津和野駅まで走ります。運行本数は午前に新山口を経つ1日1往復、土休日の運転です。
扱いとしては全車指定席の快速列車で、乗車には乗車券の他に別料金の指定席券が必要となります

牽引する機関車は2種、C57形1号機とD51形200号機。
C57形は1937年から201両製造された、近代蒸気機関車の最高傑作のひとつとされる機関車で、細いボイラーと大きな動輪の組み合わせからスタイル全体のバランスが取れ、「貴婦人」の愛称で親しまれたんだそう。
D51形は1936年から1945年まで製造された貨物用大型機関車で、「デゴイチ」の愛称で親しまれています。製造時期が戦争前後であったことから増大する貨物需要に応えるために1115両にものぼる数が製造されたとのことで。
SLやまぐち号では、この2種の蒸気機関車のうちどちらかが、乗客の乗る「客車」を牽引します。


乗車、車内の様子は?

さて、ここからは実際の写真を交えながらどんな列車か紹介していきましょう。

私が乗ったのは津和野発新山口行、つまり復路にあたる列車でした。この日の牽引機関車はD51形。

往路、新山口駅を出発してはるばる津和野まで走ってきた機関車は客車を置いて駅から少し離れた位置で方向転換、給炭、給水をして復路の時間まで待っているのですが、その間に来る旅客列車が去ると間もなく出発準備に入ります。

ホームのない線路に留置していた客車と連結し、一旦前進してからポイント(=進路)を切り替えてホームのある線路へ。入換作業と呼ばれるこの作業は駅から南側にある踏切でも見られますが、乗り遅れにはご注意。
(写真で機関車が前方に煙を吐いてるように見えるのは列車がバックしてるからで、前進してるときは煙は後ろに流れます)

定刻通りの15時45分、汽笛一声、客車列車特有の前後に揺られるような衝撃と共にSLやまぐち号は新山口へ向けて出発。1時間45分の旅が始まります。

山口線は山あり谷ありトンネルありの起伏に富んだ地形ですが、特急列車も走るため線形はよく、比較的速度を出して走ります。
沿線には鉄道ファンや地元の方も集まり、手を振ってくれています。手を振ると振り返してくれます。

私ら乗客が乗る客車。車内は木目を多用しており、デザインからして古そう……

と、思うでしょう?

SLやまぐちで使われる35系客車はなんと2017年に新造されたばかりの新型客車なんです。SLやまぐち自体はもっと前からあり、客車はそれこそ昔に製造された12系を使用していましたが、山口ディスティネーションキャンペーンに合わせて新しい客車に代替わりしました。SL観光列車では、わざわざ手間かけて高価な鉄道車両をたった数両だけ新造するのではなく既存の古い客車を手直しして使用することが通例となっていますので、新造客車は実はすごいことだったりします。それでもデザインをレトロ風としてるのは、蒸気機関車が牽引していた時代に合わせるため。

客車は5両編成で、4両が指定席、1両はグリーン車🍀となっています。

指定席券で乗れる普通席は4人掛けのボックスシート、その1区画を4人の指定席として販売するので4人未満で乗ると相席になることもあります。

青いシートの客車はオハ35をモデルにしたデザイン。2~4号車3両。

緑のシートの客車は先のオハ35より少し古いオハ31をモデルにした客車です。5号車1両です。

さらに3号車の半室はフリースペースで、パネル展示があるほか小さい売店や運転シミュレータ(休止中)もあります。シミュレータは休止中ですが、記念撮影スポットとして開放されています。

老若男女が詰めて座り、旅を楽しむ様子を切り取ると、昔に日常的に使われてた「汽車」のような雰囲気が出るんです。これがいいんですよ!

デザインはレトロでも、新しい列車。そして古いのはデザインだけですから、手洗い設備は洋式の綺麗なトイレです。
観光客への配慮も十分で、デッキには大型スーツケースの置ける荷物置きも整備されています(場所に限りがあります)。ただしリュックサック程度なら網棚の上に置けます。
またテーブルの窓際にコンセントが付いており、携帯電話等の充電も大丈夫です。ただしボックスシート1区画につき1つだけなので、電源タップは持っていくことをオススメします。

さて最後の1両、グリーン車指定席。復刻モデルはマイテ49です。一等車をイメージした車内は座面の柔らかい大型シート3列で、コンセントもちゃんと1人1席。前後間隔も広く取られています。

グリーン車にはサロン的な展望室もあり、SLのすぐ後ろになる復路ではこんな感じでSLの後ろ姿を眺めることができます。

また、ボックスシート区画もあります。ただし2席と4席の区画それぞれ1つずつのみ。なおインターネット予約(e5489)ではここはシステム上別列車扱いされます。

注意点として、グリーン車は青春18きっぷでは乗れません。グリーン車指定席券とは別に、正規の有効な乗車券が必要です。普通席でしたら青春18きっぷ+指定席券で乗車可能です。

その他、グリーン車の客室内にはグリーン車指定席券を持っていないと立ち入ることが出来ません。普通席の指定席券しか持ってないのに見学と称して覗く、立ち入るのは厳禁です

グリーン車ですから当然普通席より高いわけですが、それでも乗りたいという人は非常に多く、座席の少なさも相まって指定席争奪戦が苛烈を極めています。取るのにすっごく苦労したんですよここの指定席券!!!!!


そして忘れてはいけないのが「展望デッキ」。風の通り抜ける開放的なデッキで後方展望を楽しめます。

この展望デッキは客車の両端にあり、最後尾になる側が開放されます(前方は機関車のすぐ後ろになるため閉鎖されます)。往路の津和野行はグリーン車乗客のみですが、復路の新山口行は指定席券を持ってれば誰でも立ち入ることができます。写真は復路で、利用者は多いですが広いのでそう窮屈な感じはしないはず……。

案内表示機。デザインこそ昔っぽい雰囲気ですが、液晶で停車駅や路線図の案内をしています。

グリーン車展望室から1枚。窓を開けることが出来るので、窓を開けて景色を眺める乗客の姿も多く見られました。ただしトンネル内では煙が充満するので、トンネル地帯は窓を閉めるよう案内されます。
ちなみにこのD51は煤の多い機関車なので、窓を開けてるだけで煤の匂いが漂ってきますし、白いマスクを着けてると明らかな灰色になります。なので乗った日の夜はしっかりシャワーを浴びることをオススメします。

総括制御で一斉に動く電車と違い、動力が先頭だけなので動き出すときや停まるときは前後にガクンガクンガクンと揺れます。結構大きいです。が、これも機関車牽引の客車ならではの体験であり、なかなか面白いのではないでしょうか?

短時間の停車がほとんどですが、たまに3分~とか比較的長時間停まる停車もあります。この際は多くの人が一斉に先頭へ走り、ホーム先端はちょっとした撮影会会場さながら。みんな蒸気機関車大好きなんですね~。
車内を歩き回る人が多く、フリースペース内は密集というほどでないにしてもかなり混んでましたが、一斉に撮影会に行くタイミングでは車内が一気に空くので売店利用の絶好のチャンスでもあります。なお車内を歩くときは、すれ違いに配慮して荷物は貴重品等の最低限以外は座席に置いておくのがよさそうです。

走行中の車窓スポットほか、列車が停まる駅なんかにも近づく度に車掌さんより駅周辺や沿線の案内がなされます。メモ書きか録音でもしてない限り内容なんてちっとも覚えてないんですけど、こういう放送を聞くと行ってみたいなって思うのが不思議なところです(笑)。夜行列車の定番チャイムだった「ハイケンスのセレナーデ」アレンジチャイムと共に放送されるこういった観光案内が旅の雰囲気を盛り上げてくれるのは間違いないでしょう。

津和野を出て、トンネルをいくつも潜り、勾配を下り、何度か停車し、時折現れるお見送りの地元の方や撮影に来た鉄道ファンを横目に南下すると、主要駅のひとつ、山口駅に到着。ここでやや長時間の行き違い待ちをして発車、湯田温泉駅で多くの乗客を降ろすと、終点までラストスパート。冬の宵の口の薄暗い空の下を新山口駅へ向けて走ります。

窓を開けると煤の薫り交じりの風が吹き込み、軽快な音とともに上下に揺られながら走る……そこにはまさしく汽車旅の旅情がありました。

日没の早い冬、到着する頃にはすっかり暗くなっています。新山口、山陽線と山口線、新幹線が乗り入れる鉄道交通の要所のひとつです。
1時間45分、長いようであっという間だった旅も終わり。新幹線に乗り換えるお客さんなんかは一足先に帰路につき、残った人たちで撮影会。

先ほどまで最後尾だった側にはディーゼル機関車が連結され、引揚の準備。この間にSLは切り離しを行い、隣の線路を使って入換を行います。
SLが去り、客車も引揚られるとこれにて撮影会も終わり、乗客達は各々帰路につきました。

本州最西の汽車の旅、いかがでしょうか。古そうで新しい汽車の旅、雰囲気だけ味わいたい方にもとてもオススメできます。

気になるけど例のウィルスもあり心配……という人もいらっしゃるでしょう。観光列車という特性上から車内を歩き回る人は多くおり、密集……という程ではありませんでしたがかなり混雑していましたので、心配で仕方ない人にまではオススメ出来ないのが辛いところです。ですがすごくいい列車でしたので、感染症が落ち着いたら是非とも乗りに行ってみてくださいませ。


冬の新山口駅、駅前はイルミネーションが設置され、美しく輝いていました。また私が行ったときは駅前にてピアノの演奏会があり、銀河鉄道999などの曲が流れていました。実はこのとき私は撮影に夢中になってしまったために新幹線に乗り遅れたのですが、イルミネーションや演奏会が見られたのでこのときの乗り遅れも悪くなかったかなと思う次第です。

SLやまぐち号に合わせて新幹線が停車し、事前にきっぷを用意してれば余裕をもって乗り換えられます。が、もしも近場で時間に余裕がある人はSL撮影のため1本遅い列車に組んでおくのもいいかもしれませんね。

なお定刻通りならすぐの接続列車でもちょっと撮影する時間はありますが、新幹線と在来線は若干離れておりまっすぐ乗り換えても5分程度はかかりますのでご注意ください。


旧型風新造客車はいいそ!!!!!(結論)

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