月で散った花たち(『ぼくの地球を守って』に寄せて)
『ぼくの地球を守って』は、日渡早紀さんが「花とゆめ」で、1986年12月から1994年5月にかけて連載していた作品です。
以前、自分の記事で「友達経由で読んだ少女マンガ」として紹介したことがあります。ただ、その記事でも触れているんですが、好きな作品だったのに、なんか結末の記憶が怪しいんです。
最終的にどうなったのか、記憶にないんですよね~
ということで、先日ですね、ようやく文庫版(全12巻のやつ)で再読したんです。
そして、結論から言うと、最後の3巻分(コミックスでは15、16巻当たりから)は未読でした!w
『ぼくの地球を守って』は、当時、大学の友達からコミックスを借りて読んでいたのですが、大学を卒業してからはお互い忙しくなったため、マンガの貸借り交流が途絶えたことが要因なんでしょうね~。
その後、自分でも追いかけてたと思うんですが… 仕事も慌ただしくて… って感じだったのかな…
もう、30年ほど前ですからね~
”読んだ/読んでない” という記憶自体も曖昧だったようです。
30年越しでの読了となりましたが
完走して良かったです!
あまり『ぼくの地球を守って』というタイトル自体を気にしたことはなかったんですが、最後まで読んでみて、ようやくタイトルの意味が理解できました!
この年齢になっても面白かったし、この年齢だからこそ深く感じられる部分もあったのかもしれません。
読んだことのない方に内容を説明すると
この作品は "転生" を軸にしたSF的でファンタジーな世界観の中、7人の男女を中心にしたドラマです。
地球を月から監視していた7人の異星人たちが、月基地内で発生した伝染病により全員死亡し、その後、日本人として転生するという設定です。
同じ月基地での記憶を持った者たちが引かれあうように集まっていくことから物語は始まるのです。
やがて、”転生” した7人を巡って、いろんな事件が起こり始めるのですが、どうやら、前世で起きたことが無関係ではないようで…
その後、物語は転生パートと前世パートを並行して描きながら進んでいく構成になっています。
”転生” した後のメンバーの関係性にも前世の影響があったり、月基地での悲劇や愛憎劇もあったりで、とっても面白いんです。
+ +
この7人の月基地メンバーを紹介すると
木蓮/ コウ=ハス=セイ=テ=モク=レン
玉蘭/ オ=アンティ=シャ=ギョク=ラン
秋海棠/ レム=サイ=ネ=シウ=カイドウ
槐 / ト=フェコ=ロール=エン=ジュ
繻子蘭/ ロキ=シ=アノール=シュス=ラン
柊 / オク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ
紫苑 /ザイ=テス=シ=オン
ちなみに、左側の漢字の名前は月基地内での呼び名で右側が本名です。
生物学者だった木蓮が、7人のメンバーの名前が、地球の植物名に含まれていることを発見して、その名前で呼び合うようになるのです。
30年前に読んでた頃は気にならなかったのですが、今回は、この植物の名前がとても気になったんですよね。
木蓮と柊は分かるけど、他のはどんな植物なのかイメージできなかったんです。
今なら、簡単に調べることができるので、7人の呼び名となってる植物を調べてみました。
「木蓮」
花言葉で「自然への愛」の意味を持つモクレン(マグノリア)は、主人公である少女の前世での呼び名です。
添付画像の中心にいる額に印のある女性です。
歌うと植物が成長するという特殊能力を持つ人物なんで、ほんとピッタリの名前なんです!(いや、そりゃそうだろうw)
「玉蘭」
物語中でも言及されるんですが、玉蘭は木蓮の一種なんですよね。
花言葉は「高潔な心」..
恵まれた家庭で育ち優等生的な価値観の持ち主として描かれています。
物語の後半では、ちょっと影が薄くなっちゃうんですよね。
「秋海棠」
”転生”パートでのキーマンの一人が、前世では秋海棠と呼ばれたおっとりした男性なのですが、実は…
花言葉は「恋の悩み」… 読んだ人には分かるのですが、なるほどって感じなのです。
「槐」
玉蘭に一途な思いを寄せる槐は、前世は女性でしたが転生パートでは男性として描かれています。(ここら辺もおもしろいですよね~)そして、花言葉は「慕情」です。
「繻子蘭」
友人の槐を支える女性に付けられたのは繻子蘭。
蘭と付いてるからにはけっこう派手な感じなのかと思ったら、意外と可憐な花でした。花言葉は見つからないのですが、同種の別名ビロード蘭では「日々平安」でした。
「柊」
ヒイラギといえば、魔よけとして使われるあのトゲトゲの葉っぱのやつですよね。(赤い実をつけるのはセイヨウヒイラギと言うらしいです。)
月基地のリーダーだった柊の花言葉は「用心深さ」。
「紫苑」
そして、物語のもう一人の主役だったのが紫苑です。
飾らない野に咲いてる感じの花であるところが人物にピッタリです。
屈折した陰のある人物ですが、花言葉は「君を忘れない」…
こうして、並べてみると、作者の日渡早紀さんが、練りに練って付けた名前ということがよく分かります。
あらためて、緻密に構成された作品だと思いました。
30年越しの読了となりましたが、やはり傑作なのです。
*