見出し画像

帯の”どんでん返し”は不要な作家(ジェフリー・ディーヴァーのツイスト)

 Jeffery Deaver's TWIST.


 本に巻かれている”帯”には、推薦文やキャッチコピーが並んでたりするものなのですが、中には余計なコピーもあったりしますよね。

 例えば

「ラスト一行の衝撃!」

「きっと、このラストに驚愕する!」

 

 みたいなやつですが、こういうの必要ありませんよね。

 まあ、手に取ってもらわなければ仕方がないので、刺激的な文句を並べたくなる気持ちはわかるのですが、物語の最後に、”どんでん返し”があることを予告するのは、それを楽しみに読んでいる人には興ざめですよね。

 できれば予備知識なしで読んでいて、最後に

 え、えーッ!

 みたいな感覚を味わいたいのです。


 ただ、中には、”どんでん返し” がお約束になっている場合もあって、まだ、何かあるだろうと思いながら読むのが楽しい作家さんがいたりするのです。

 その代表作家がジェフリー・ディーヴァーなのです。

ジェフリー・ディーヴァー(1950年5月6日 - )
アメリカ合衆国のミステリー小説家。
ベストセラー作家の常連で、二転三転するスピーディーな展開で「どんでん返しの魔術師」と呼ばれている。


 ジェフリー・ディーヴァーには、「リンカーン・ライム シリーズ」という中心となるシリーズがあって、現在のディーヴァーの地位を築いたのは、まさにこのシリーズによるものといって間違いありません。

 あまり海外ミステリーを読まない方も、ディーヴァーだけは読むという人もいるぐらいなので、それだけ人気のある作家さんなのです。


<リンカーン・ライム シリーズ>

 1.  ボーン・コレクター (1997)
 2.  コフィン・ダンサー (1998)
 3.  エンプティー・チェア (2000)
 4.  石の猿 (2002)
 5.  魔術師 (2003)
 6.  12番目のカード (2005)
 7.  ウォッチメイカー(2006)
 8.  ソウル・コレクター (2008)
 9.  バーニング・ワイヤー (2010)
 10.ゴースト・スナイパー (2013)
 11.スキン・コレクター (2014)
 12.スティール・キス (2016)
 13.ブラック・スクリーム (2017)
 14.カッティング・エッジ (2018)

 シリーズはこれまで14冊が発表されていて、1997年以降、定期的に刊行されています。


 このシリーズは捜査中の事故で四肢麻痺となった科学捜査官リンカーン・ライムが、持ち前の科学捜査の技術と明晰な頭脳を使いながら、犯人を追い詰めていく物語になっています。
 当然、四肢麻痺なんで、ライム自ら捜査を行うわけではなく、ライムの手足となって現場に赴き、科学捜査用の証拠物件を集めてくる助手が必要となるわけですが、それが男勝りの女性警察官アメリア・サックスとなります。
 このアメリア・サックスの科学捜査官としての成長も、シリーズの序盤では大きな見どころになっているのです。

 このシリーズの醍醐味は、相手となる犯人とのライムの知恵比べの部分なのですが、犯行を未然に防ぐため、時間単位、時には分単位の展開があって、とてもスピーディーに進むんです。
 それに加えて、科学捜査が進むにつれて事件の様相も二転三転して、ジェットコースターのような物語が繰り広げられるものですから、後半、ページをめくる手が止まらなくなるのは必至なのです。

 14作品を数えるシリーズの中では、やはりライムにも負けない狡猾な犯人が出てくるやつが面白いです。
 お薦めするならば、#2『コフィン・ダンサー』、#5『魔術師(イリュージョニスト)』、#7『ウォッチメイカー』あたりですね。


 シリーズの中では、事故当初、絶望を感じていたライムの心情の変化や、アメリアの成長をはじめ、ライムの捜査チームの関係性などが変化していくので、基本、刊行順に読むのがお薦めですが、『ボーン・コレクター』が気に入れば、ぜひ、これらの作品を手に取ってほしいのです。

 **********

 『ボーン・コレクター』は、1999年にデンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリー主演で映画化されています。

 デンゼル・ワシントンも良いのですが、なんといってもアメリア役のアンジェリーナ・ジョリーがハマり役でした。
 原作を読んだ人でも、アメリアのイメージがピッタリと感じると思います。

 その後、続編が作られなかったのは、何か事情があったのかなと思います。でも、個人的にはけっこう面白かったので、若き日のアンジェリーナ・ジョリーを堪能したい方はぜひ!

**********

 シリーズを長く読んでいると、いつもいつも二転三転する展開もマンネリ化してくるのは仕方のないことです。が、このシリーズの楽しさは、犯人との対決のスリリングさや、登場人物たちとのやり取り、ライムとアメリアの関係の変化等にあるので、どんでん返しの部分以外のドラマも楽しんでもらえればと思います。