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イメージのジャンプ力の話

Jumping power of Imagination.


 心地のいい季節になると、村上春樹さんの「ノルウェイの森」の一説を思い出します。


 それは、主人公がガールフレンドから「素敵なことを言って」と言われて、「春の熊くらい好きだよ」と答えます。

 何それ?と、思ったガールフレンドに主人公は、こう説明します。

~以下、引用部分

春の野原を君が一人で歩いているとね、向こうからビロードみたいな毛なみの目のくりっとした可愛い子熊がやってくるんだ。

そして君にこう言うんだよ。
「今日は、お嬢さん、僕と一緒に転がりっこしませんか」って言うんだ。 そして君と子熊は抱きあってクローバーの茂った丘の斜面をころころ転がって一日中遊ぶんだ。

そういうのって素敵だろ? 

それくらい君のことが好きだ。



 この場面でのやりとりにとても惹かれます。


 多分、こういう表現が面白く感じられるかどうかが、村上春樹さんに、はまるかはまらないかの分岐点だったりすると思うのです。

 「春の熊くらい」という表現は、普通に考えるとよくわからないんだけど、何だか意外なとこに着地させてもらえたような気持ちになります。


 他にも、村上春樹さんの小説の中では、同じようにイメージをジャンプさせられる意外な表現が出てくるので、私をはじめ、村上春樹さんの小説に惹かれる人の多くは、この提供されるイメージのジャンプが心地いいのだと思うのです。


 もちろん、心地よく感じるジャンプの幅は人それぞれで、

 「春の熊」? 何それ? ぜんぜんわからない!

 なんていう人もいっぱいると思うんですよね。

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 もしかすると、人と話をする時は、このイメージのジャンプ力を意識することが大事なのかなって思います。

 話をしていて気が合う人って、けっこう似たようなジャンプ力を持った人のような気がしませんか?



 自分は職業柄、大勢の前で話をすることが多くあって、そんな時は、このイメージのジャンプ力の幅を意識します。

 難しい専門用語ばかりの話だと、そもそもイメージをジャンプさせることはできませんし、オチのわかりやすい話だと、あまりにもジャンプ幅が短すぎます。(いわゆる親父ギャグなんか典型的ですよね。)


 聞いている人たちのジャンプ力をはかりながら、わかりやすい言葉を選び、イメージのジャンプで意外な場所に着地させたり、逆に、意外な場所から目的地にたどりついたり......


 そんな話ができれば、きっと相手も楽しく聞けるのかなと思います。


 もちろん、そんな話ができるようになるためには、自分自身、イメージのジャンプ力の幅を持つことが必要だと思っているのですが........

 

 ここで、いろんな方の「note」に触れることも、きっと、そんな自分のジャンプ力の幅を作ってくれていると思います。

 と、いうことで、これからもよろしくお願いします。




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