いろいろあっても、やっぱり後藤次利(ソングライター編)
80年代は、数々のソングライターが活躍した時代ですが、80年代のバブリーさを最も体現していたのは、通称 ”ゴッキー” と呼ばれた後藤次利さんで間違いないです。
ミュージシャンやアーティスト、アレンジャーの顔もありますが、今回はソングライターの後藤次利さんに関する "note" です。
あの空前の ”おニャン子” ブームを知っている人ならば、 "うしろゆびさされ組" や "うしろ髪ひかれ隊"、"新田恵利" さんや "渡辺美奈代" さん、そして、”とんねるず” のヒット曲などで、作曲:後藤次利のテロップは毎週のように歌番組で流れていた80年代後半を記憶してるのではないかと思います。
「うしろゆびさされ組」1985.10
作詞:秋元康/作曲・編曲:後藤次利
作詞家:秋元康さんとのコンビは、ホント、バブリーな時代を思い出させます。
まあ、”とんねるず” からは「とんねるずのアルバム曲は10分で作ってくる」と言われるぐらい、コミカルで勢いだけで作ったと思われる曲も多かったりしたんですよね。(失礼💦)
ただ、時に "後藤次利さんの本気" を感じることもあって、今回は、そんな3人(組)のアーティストを紹介していきます。
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◎河合その子
まず、最初に紹介するのは、おニャン子クラブから初のソロデビューを果たした河合その子さん(会員番号12)です。
グループ卒業に合わせてリリースされた 3rdシングル「青いスタスィオン」が大ヒットしたんですが、それまでのアイドルっぽさの残る曲とは違って、切ない感じの曲でした。
「青いスタスィオン」1986.3
作詞:秋元康/作・編曲:後藤次利
駅のホームを舞台に、都会へ旅立つ恋人を送る場面を描いた曲です。
いわば、秋元康版の「木綿のハンカチーフ」なんですが、タイトルの "スタスィオン" という仏語の響きがイメージを作っています。
他のタイトルでも、「落葉のクレッシェンド(伊)」、「午後のパドドゥ(仏)」、「再会のラビリンス(英)」「哀愁のカルナバル(仏・西)」などなど、随所にヨーロッパを想起させる言葉が散りばめられています。
後藤次利さんは、おニャン子卒業後のソロアーティスト:河合その子のイメージに合わせて、ソングライトしてるのです。
「再会のラビリンス」1986.7
作詞:秋元康/作・編曲:後藤次利
「哀愁のカルナバル」1987.2
作詞:秋元康/作・編曲:後藤次利
デビューから1987年のアルバム『Rouge et Bleu』まで、シングル曲を含めてほとんどが プロデュース/作・編曲:後藤次利だったりします。
まあ、現在の奥さんでもあるので、かなりの「本気」です。
シングルはもちろんですが、アルバムの方も、コンセプトからミュージシャンまで、相当な力の入れようでした。
シングル曲ではシリアスな曲が多いんですが、アルバムではフレンチ・ポップスのカラーで統一されていて、なかなかの傑作なんです。
『Rouge et Bleu』1987.7
◎工藤静香
二人目は、おニャン子クラブから最後のソロデビューだった工藤静香さん(会員番号38)です。
1987年の昭和デビューなんですが、平成でも大人気で、ヒット曲を連発していました。
後藤次利さんは、デビューシングル「禁断のテレパシー」から 20thシングル「あなたしかいないでしょ」までの全てのシングル曲、その他アルバム曲の多くをソングライトしています。
「禁断のテレパシー」1987.8
作詞:秋元康/作・編曲:後藤次利
おニャン子クラブ時代から人気の高かった工藤静香さんなんですが、可愛さとカッコよさが同居した独特のアイドル性があって、ソロとなってからも大人気でした。
イメージに大人びたアクセントを付け加えるためか、作曲は一貫して後藤次利さんでしたが、作詞の方はデビュー当初こそ秋元康さんでしたが、その後、中島みゆきさんや松井五郎さんがメインとなっていきます。
「FU-JI-TSU」1988.6
作詞:中島みゆき/作・編曲:後藤次利
「恋一夜」1988.12
作詞:松井五郎/作・編曲:後藤次利
20曲連続シングル曲っていうのもけっこうスゴいですよね。
それだけ、多彩な曲が書けるってことに信頼が厚いのでしょうが、次利さんなりにけっこう苦労があったようです。
(その苦労については次の記事をどうぞ)
◎野猿
さて、最後の3組目は、とんねるずの番組企画から1998年にデビューした野猿です。
とんねるずに番組スタッフさんを加えて組まれたグループなんですが、楽曲はどうしてどうして、けっこうクォリティの高いものが多かったです。
デビューから撤収まで、その楽曲のほとんどが 作詞:秋元康/作曲:後藤次利 で制作されています。
個人的に、河合その子さんや工藤静香さんの時とは違って、いい意味でバラエティに富んだ曲が多くて、後藤次利さんの多彩さが最も発揮されたのが野猿ではないかと思っています。
踊れる歌謡曲チックなデビュー曲「Get down」をはじめ、ロック有り、ヒップホップ調有り、ファンク有り、そしてシティポップ有りと、まさになんでも有りでした。
「Get down」1998.4
作詞:秋元康/作曲:後藤次利/編曲:後藤次利、田原音彦
「叫び」1998.9
作詞:秋元康/作曲:後藤次利/編曲:後藤次利・田原音彦
「First impression」 2000.2
野猿 feat.CA
作詞:秋元康/作・編曲:後藤次利
やっぱ何と言っても、女性ボーカルをフィーチャーした 7thシングル「First impression」が傑作です!
今で言うシティポップ感溢れる一曲です。
こんな曲も書ける後藤次利さんって、やっぱスゴイと思うんですよね。
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関係したアイドルとの恋愛を繰り返し、アイドルキラーとも呼ばれたりと、私生活ではいろいろある後藤次利さんですが、やっぱり才能豊かなソングライターだと思います。
ただ、秋元康さんの詞と同様に、その人のイメージに合わせたソングライトを心がけてる感じで、器用過ぎるのか、後藤次利さん自身の「色」は感じられなかったりするんですよね。
国武万里「ポケベルが鳴らなくて」1993.7
作詞:秋元康/作・編曲:後藤次利
この曲なんて、そんな器用な二人が、時代に合わせて作った曲って感じがします。
多彩で器用な故、ソングライターとしての色は感じさせませんが、実は、後藤次利さんって、尖ったアーティストでもあったんで、次回は、前衛的な面を紹介していきたいと思っています。
と、いうことで、次回へのブリッジとして、最後にこの曲を紹介します。
きょうの出来事NNNのテーマ(’95.4~’02.3)
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