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007シリーズのオープニング全部観る③

 Ian Fleming's James Bond / 007


 007シリーズの第25作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開を記念して、これまでのシリーズのオープニングタイトルを全部観る記事の第3弾です。

 今回は五代目ジェームズ・ボンド:ピアース・プロスナン版と、六代目:ダニエル・クレイグ版をまとめています。

 このシリーズ記事もいよいよ最後なのですが、プロスナン版とクレイグ版を紹介するに当たっては、ジェームズ・ボンドの生みの親、イアン・フレミングの原作に触れておく必要があります。
 イアン・フレミングは12の長編と8つの短編を発表しています。(逆にこれだけしかないのです。)

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 イアン・フレミングの007シリーズの映画化権を持っているのはイーオン・プロダクションズという制作会社です。

 ただ、原作の第1作目「カジノ・ロワイヤル」と、第3作目の「ムーンレイカー」は、別の人に買われちゃってたんですよね。
 それで、イーオン・プロは、残りの長編を元に映画を制作してたんです。「ムーンレイカー」の方は権利を買い戻せたので、映画11作目として制作できたんですが、「カジノ・ロワイヤル」はなかなか権利を得ることができなかったんです。
 映画11作目で、権利のあった長編は尽きてしまったので、12作目の映画「ユア・アイズ・オンリー」からは、短編を膨らましたり、短編の一部の設定を使って脚本を仕上げていたのです。

 そして、ピアース・プロスナン版では、主な短編も尽きたため、すべて完全オリジナル脚本によることとなったんです。




■ □ ■ ピアース・プロスナン ■ □ ■

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 ピアース・プロスナンは4作品に出演しています。
 ティモシー・ダルトンと比較しても、元気なジェームズ・ボンドのイメージでした。
 映画の中でも、よく走ってたりして、快活な分、ちょっと陽性なアメリカンな印象を自分は感じてました。


第17作「007 ゴールデンアイ」1995

 監督:マーティン・キャンベル
 主題歌:ティナ・ターナー

 ボンド役だけでなく、これまでシリーズを支えていた多くのスタッフが入れ替わり、まさに新たな007シリーズという感じでした。
 デジタル化されたオープニングタイトルも、ティナ・ターナーの主題歌に負けず、迫力のある映像に進化してました。
 他にも、ボンドの所属するMI6の本部が出てきたり、情報戦の様子など、かなり近代化された感じでしたよね。
 ただ、最も変わった~と、感じたのは、実は、ボンドの上司 "" 役にジュディ・デンチが起用されたとこだったりします。

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 いや~、最初は違和感ありましたが、その後、回数を重ねるたびに、存在感が増していくのです。
 このジュディ・デンチの "M" が登場したことも、ボンド世界がアップデートされたことを印象付けたのです。


第18作「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」1997

 監督:ロジャー・スポティスウッド
 主題歌:シェリル・クロウ

 CGとレントゲン写真のようなスケルトン仕様の映像がかっこいいんです。今作で敵役になるのが、世界のメディアを牛耳ろうとする男なので、情報通信みたいなデジタルのイメージも盛り込まれています。
 物語の方は、偽情報を使いながら、イギリスと中国の戦争を起こそうとする組織との闘いなんですが、戦争を阻止しようとする中国の工作員役のミシェル・ヨーとのコンビが楽しかったです。



第19作「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」1999

 監督:マイケル・アプテッド
 主題歌:ガービッジ

 オープニングタイトルはオールCGなのかな... リキッドテクスチャーな女性たちのシルエットにセクシー要素はほとんどありません。
 ここまでくると、なんか、ムーア・ボンド時代のちょいエロなオープニングが懐かしく感じてしまいます………
 でも、安心してください!
 この作品には、なんと、ソフィー・マルソーがセクシーなボンドガールで出演してるのです!!

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 マジですか~って感じな役なのですが、あの中学生の頃、人気ナンバー1女優さんだったソフィー・マルソーに会えるなんて!
 それだけでも見る価値のあった映画だったのです。(←君はフィービー・ケイツ派だったろ?)



第20作「007 ダイ・アナザー・デイ」2002

 監督:リー・タマホリ
 主題歌:マドンナ

 けっこうピアース・プロスナンって拷問受けてるシーンの多いんですよね。ハードな感じで始まるこの映画のオープニングタイトルは、これまでの中で一番 ”怖い” 感じでした。
 サソリも女性のシルエットも怖かったですよね。
 さすが20作目の節目なんで、主題歌は大物マドンナを起用してますが、本編にまで本人が登場するとは... 

 90年代以降は東西冷戦に終止符が打たれ、スパイが活躍する舞台がなくなっちゃうのでは、と、心配されましたが、プロスナン版のボンドは、様々な社会情勢をふまえて作られていて、けっこう面白かったのです。
 もちろん、最新科学による大がかりな兵器や基地なども登場するので、これまでのボンド映画っぽさも残してたシリーズだったのです。



■ □ ■ ダニエル・クレイグ ■ □ ■

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 最新作の「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を含めて5作品で主演しました。
 これまでのボンド像とは違って、ジョークを言わない寡黙でタフなイメージでした。
 最初はいろいろ言われましたけどね、3作目で終わりと言いながら、4作目、5作目と継続したのは、やっぱり人気によるものですよね。
 ダニエル・クレイグって、タフでやんちゃ、でも瞳の奥に寂しげな色があって、自分にとっては、かのスティーブ・マックイーンを思い出させる俳優さんなんですよね。もう、単純に魅力的でした。


第21作「007 カジノ・ロワイヤル」2006

 監督:マーティン・キャンベル
 主題歌:クリス・コーネル「You Know My Name」

 イーオン・プロが唯一権利を持ってなかった、イアン・フレミング原作の1作目「カジノ・ロワイヤル」が遂に映画化という、ファンにとっては胸躍る報せでした。
 念願の「カジノ・ロワイヤル」ということで、これまでのボンドの世界観を一新して描かれることになった新シリーズです。

 この作品は、00ナンバーの諜報部員ジェームズ・ボンドの誕生が描かれたものなんで、いつものシリーズとちょっと違うんですよね。
 まず、冒頭のガンバレルのシーンで「ジェームズ・ボンドのテーマ」が流れない。
 主題歌の「You Know My Name」が流れるオープニングタイトルでは、女性のシルエットはなし。
 そして、序盤でのいつものセリフ「ボンド、ジェームズ・ボンド。」って、自己紹介の場面もなし...
 ”M” はいるけど、”Q” も ”マニーペニー” もいない...
 何もかもいつも通りではない感じなのです。
 物語としては、けっこうハードな上、悲しい結末なんです。そして映画が終わる直前に、「ボンド、ジェームズ・ボンド。」のセリフが入り、エンディングで「ジェームズ・ボンドのテーマ」が流れるという、ああ、ここでジェームズ・ボンドが誕生したんだ~っと、あまりにもカッコ良過ぎる演出で、かなり痺れました。


第22作「007 慰めの報酬」2008

 監督:マーク・フォースター
 主題歌:アリシア・キーズ、ジャック・ホワイト「Another Way To Die」

 なんと、前作「カジノ・ロワイヤル」の続きからという、これまた、定石を外したクレイグ・ボンドの第2作。
 オープニングタイトルには、女性のシルエットが戻ってきました!(←喜びすぎるな!w)
 プロスナン版の時は、ちょっとギラついていたCGも、クレイグ版では少し色調を抑えて作られてるので、新シリーズのストイックさに見合った映像になってるのです。
 ボンド映画にしては短くまとめられていて、スピーディな展開が◎なのです。


第23作「007 スカイフォール」2012

 監督: サム・メンデス
 主題歌:アデル

 狙撃されたボンドが湖面に落下するという衝撃のシーンからつながってるので、タイトルの中でも撃たれたボンドが漂ってたりして、見てる側としてはボンドがどうなったのかが気になるオープニングタイトルでした。
 それにしても、アデルの主題歌が印象的過ぎで ♪スカイフォ~ルの歌声が耳について離れなくなっちゃうんですよね~。
 物語の終盤では、私の好きだったジュディ・デンチの ”M” が退場して、新たな ”M” が登場したり、”Q” や ”マニーペニー” も登場したりと、いつものボンド映画に回帰して終わるという、ファンの心理をくすぐる作品なんですよね。


第24作「007 スペクター」2015

 監督:サム・メンデス
 主題歌:サム・スミス 「Writing's On The Wall」

 これもまた、権利の関係で登場させられなかった、ボンドの宿敵、悪の組織「スペクター」も戻ってきました。
 前作まででも謎の組織が見え隠れしてましたが、ここにきて遂にです。
 もちろん総帥のブロフェルドも登場して、白猫も健在で、これまた、ファンを喜ばせるとこがいっぱいなのです。
 この作品では、監督サム・メンデスの長回し・一発撮りのシーンで始まるのですが、そのシーンがあまりにも凄すぎて、それに続くオープニングタイトルは、その興奮を鎮めるように静かで不穏なんです。
 なんか髑髏のイメージは「死ぬのは奴らだ」のオマージュみたいに感じました。


+  +  +  +  +


 このクレイグ版のシリーズは、正真正銘の第1作「カジノロワイヤル」から、新たなボンド世界を再構築したプロジェクトなんですが、往年のシリーズファンにとっても楽しい仕掛けがたくさんあって、ほんとに面白かったのです。
 長いシリーズなんで、007シリーズで育ったスタッフによる愛のある作品だったのだと思います。

 そして最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」で、どんな風に完結してくれるのかも楽しみですね〜。
 ビリー・アイリッシュの主題歌が流れるオープニングにも注目したいと思います。

 

 一年越しの記事がアップできて、とても嬉しいです。まあ、オープニング・タイトルのまとめ記事なんですが、いつかまとめてみたいと思ってたので、こちらも念願叶ったりなのです❗


(追加)

 以下、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」のオープニングを追加します。
 何から何まで、007シリーズらしくない「ノー・タイム・トゥ・ダイ」でしたが、こういう007があってもいいですよね。
 うん、きっといいのです。

 次のジェームズ・ボンドが誰になるのか、ちょっと楽しみですね。


第25作「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」2021

 監督: キャリー・ジョージ・フクナガ
 主題歌:ビリー・アイリッシュ

 さて、オープニングシークエンスの冒頭には、シリーズ第1作である「ドクターノオ」のオープニングのイメージが使われていて、ガンバレルシークエンスや、多くの作品でタイトルデザインを手掛けたモーリス・ビンダ―へのオマージュになってますね。
 こういうとこに、シリーズ愛を感じるんですよね。
 ぜひ、このシリーズ記事の初めに戻って確認していただければと思います。



 

(シリーズ記事)


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