占いをしに行く ~とあるOLの乳がん日記【141】
141.
家外泊はあっという間に終わった。
よく覚えてないけれど、あとで母の日記を見ると、私はよく寝ていたみたいだった。
病院の戻り時間は15時だったけど、ぎりぎりまで家にいたので、ちょっと15時を過ぎてしまった。
でも、全然何も言われなかったので、よかったと思った。
外泊ができたから、次に目指すのは退院になった。
そのためには、どうするのがいいんだろうと思って、やっぱり毎日外出をして元気になったところを見せるのがいいと思った。
そういえば明日は、占い師さんのところに行こうと思っていたので、さっそくまた外出届を書いて出した。
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次の日の午前中、先生が回診に来てくれた。
家への外泊はどうだったかを聞かれたので、とくに何も問題なかったことを伝えた。
そうしたら先生は、今週あたり退院できそうですねと言ったので、おお、と思った。
でもじゃあ、いつとは具体的に言わなかったので、今週のいつだろう、と思った。
この日はあいにくの雨だったけれど、この間持ってきてもらった日傘は、雨傘でもあるので、全然問題なかった。
占い師さんは、病院の最寄り駅そばの建物にいるので、今日他の場所を歩いたあとの帰りがけに行くことにして、まずは本の街に行こうと思った。
本の街のこの場所も、中高生時代は、学校帰りによく歩いた私のテリトリーだった。
発売日より2、3日前に新刊が入荷されるお店とか、ゲームの攻略本が立ち読みできた場所とか、変わらずお店はあって、母校のそばを歩いたときと同じくらい、懐かしい気持ちになった。
ひととおり本屋をひやかして、よく覚えてないけれど、お昼を食べたと思った。
そのあとは、電車で病院の最寄り駅に戻って、占いの先生のところに向かった。
そうしたら、平日のお昼だったけれど、先客がいた。
そうか、そのパターンを想定していなかったと思って、傍で待つことにした。
でも、こういうたいていの対面の占いは、30分いくら、というところから、10分ごとに追加料金を払うという設定なので、いくら並んでいても、占ってもらっている人がどんどん色んなことを聞きたいとなったら、いつまでたっても順番が来なかった。
せっかく占ってもらうのだったら、せめて30分は聞きたいので、時間的に間に合うかなと思った。
そうしてじりじりと待っていたら、ちょうど外出終了時間の30分前に、前のお客さんが終わった。
私の番になったので占いの先生が、どうぞと言った。
でも私は、すみません、今日はもう時間がなくて、と言って、また明日来ますと言った。
そうしたら先生は、明日はここじゃない場所なんです、と名刺のようなものをくれた。
名刺には、曜日スケジュールと場所が書いてあった。そこに明日いる場所もちゃんと書いてあった。
そうして名刺を受け取って、じゃあ明日必ず行きますと言って、病院に戻った。