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「おっさん」さんをレンタルしてみる ~とあるOLの乳がん日記㊻

46.

サイトのページ一面には「おっさん」さんの写真がたくさん並んでいて、ときどきネットとかで、レンタルの体験記を読んだことはあったけど、実際にそのサイトを見るのは初めてだったので、ほんとうにこの値段なんだ、と一律みんな同じ値段が並んでるのを見て、そう思った。

いろんな「おっさん」さんがいて、写真を選択すると、自己紹介のようなものが読めた。
ひとまず場所を東京に選択して、いろんな人の紹介ページを読んでみて、中には私と同い歳くらいなんじゃないかという人もいた。それからしばらく見ていると、なんだか、とても話を聞いてくれそうな、優しそうな「おっさん」さんがいて、目が留まった。

自己紹介をみると、まさに今、私が求めていたような内容が書いてあって、この人だったら、いや、この人に、話を聞いてもらいたい、と思って、思わずそのままページの「買い物カゴ」に入れようとした。でも、はたと我に返って、勢いで何を考えているんだろうと思ったので、一旦ページを閉じた。

でも、明日は別の病院で妊孕性について聞きに行かなくてはいけなくて、抗がん剤を受けるかどうか悩んでいて、再発するかもしれない恐怖に怯えて、将来どうしたらいいかわからなくて、すぐに頭はパンクしてしまったので、しばらくしたら、やっぱりまたそのサイトに戻ってきてしまった。

悩むこと以外、今できることはほとんどなかったので、だったらやりたいと思ったことをやったほうがいいと思って、またさっき見た「おっさん」さんのページを開いた。

でも、どうしても、ふんぎりがつかなくて、本当にここを利用して大丈夫なのかとか、心配になってしまった。だから、よし、このサービスの口コミを読もうと、ネットでそのサービスを検索してみた。

そうしたら、そのサービスの責任者の人のインタビュー記事を見つけて、それを全部読んだら、得体の知れなかったものに少しだけ実体が伴って、少しだけ心のハードルが下がった。

だから、そうだ、聞いてみればいいんだと思い立って、問い合わせページから、その「おっさん」さんがどういう人なのか、その責任者に聞いてみようと、その勢いのままメールを打った。

私にしては、珍しい行動だったけれど、ただただじっとしていられなくて、あと、今の状態を考えると、こわいものが少なくなっていて、なんでもこいみたいに捨て鉢になっていた。
だからほとんど読み返さないで、メールを送ってしまって、でも少しでも行動できたことに、ちょっとだけほっとした。

夜に送ったので、返事はいつ頃になるだろうと思っていたら、その30分後くらいに、その人はいいおっさんですよ、安心してください、みたいな返事が、まるで友達からの返信みたいなノリで来たので、拍子抜けと同時に心が決まった。
なので「おっさん」さんを「買い物カゴ」に「2」つ入れて、会計ボタンを押した。

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