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【第5話】カメラ好きとYouTubeと気になる写真家

早いもので「寫眞機余話」も今回が5回目となる。

当初、寫眞機に関する私的小話を、静かに、こっそり、気楽に書こう思っていた。しかし、最近はものすごく読者が増え、「あまり、いい加減なことも書けないかな」とプレッシャーすら感じているが、基本的にはいい加減な小話の垂れ流しなので、寛容の精神でお読みいただければ幸いだ。

おそらく多くの人がカメラ好きから出発して写真好きに昇華する過程を歩んでいるのではないかと思う。

数年前にカメラを再開した私も、そのクチである。

世の中には「写真の話もしよう」と、カメラ収集を蔑むような空気も感じる。しかし、それはどうかと思うことがある。モノから入って動作に興じるのは、食欲、性欲、物欲の3大欲望で構成されている人間として、至極、自然な歩みだと思うからだ。

カメラが好きで好きでたまらなく、防湿庫が密状態になっていることに引け目を感じる必要はない。私も2台ある防湿庫が密状態で、とうとう、一部カメラを棚の上に飾り始めた。歯を食いしばって自己嫌悪に陥らないようにしている。

ところで、私がいま持っているカメラの中で、最古のカメラは1955年に誕生したバルナックライカⅢfである。次に、1956年誕生のLeica M3、そして1957年に誕生したNikon SP Blackと続く。

3台とも露出計がないので、若い頃に体得した勘で、F値とシャッタースピードを設定している。もちろん、絞り優先。下記の写真のように、時々、空を白飛びさせてしまうが、趣味だから気にしない。

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(上記写真・Nikon SP+NIKKOR-S 5cm F1.4で撮影)

ただ、困ったことに、ⅢfとNikon SPはファインダーが見やすいわけでもなく、井戸の底をのぞいているような感覚なのだ。このところ老眼が進化・発展した私には苦行のような撮影になる。ピント合わせが面倒になって、いまでは立派なパンフォーカスカメラマンである。

不自由と付き合うのが趣味カメラの面白さだが、最近は自分自身の不自由とも付き合わなければいけない。古いカメラと古い自分の不自由が2乗するわけだから、大変といえば大変だ。

昨年、古い機材はすべてOH(オーバーホール)した。すこぶる調子が良い。調子の良いうちに若い人に譲らなければと思いながら、今年もずるずる撮影してしまっているのだから、まったく、どうしようもない。

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(上記写真・FUJIFILM X-T4+XF18-55mmF2.8-4 R LM OISで撮影)

ところで、最近、とても気になる、いや注目している若手の写真家がいる。なぜなら、カメラに向き合う姿勢がいかにもカメラ好きなのだ。

私が感じるカメラ好きな写真家といえば、分かりやすい語り口と読みやすい文章でファンも多い赤城耕一さんが第一人者だと思うが、「2B Channel」というYouTubeチャンネルを運営している写真家・渡部さとるさんも、いかにもカメラ好きだと感じる。カメラやレンズを目の前にしたときの、あの、うれしそうな目、あれは間違いないと思っている。

二人とも、私より、少し年下のようだが、私にとっては教師のような存在だ。とても勉強になっている。

気になる、注目している若手写真家に話を戻すと、YouTubeで「Camera:Rev -OZEKIKOKI-」というチャンネルも運営しているOZEKIKOKIさんである。

古いデジカメで撮影した作例を見せつつ、そのカメラの魅力を伝えるチャンネルだが、その動画でOZEKIKOKIさんを知った。

私は多くの番組ディレクターや編集マンとも仕事をしてきたので、最初、OZEKIさんの動画を視聴した際、ナレーションの声質やBGの適切さ、カット割や編集の見事さに、俳優さんが動画制作会社に依頼して制作した動画かと思っていた。

それにしては、動画で登場する作例はセンス抜群だ。で、調べると、写真家なのだ。さらに調べると、2019年の日本写真家協会JPS展で文部科学大臣賞を受賞するなど実力派でもある。うまいはずである。

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(上記写真・PENTAX KP+smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limitedで撮影)

作例のうまさもさることながら、OZEKIさんは最新のカメラ機材ではなく、ディスコンの古いデジタルカメラばかりを紹介している。

古いデジカメだから、当然、時代遅れな部分や使いづらい部分がある。しかし、その不自由さや欠点との付き合い方を分かりやすく説明し、ジャンク箱に入っていそうなカメラの魅力に光を当てる。これこそ、カメラ好きの特徴だ。

カメラメーカーのPRよろしく、無味乾燥な作例をつけて最新カメラばかりレビューしている写真家が目立つなかで、古いデジタルカメラに愛情を抱いて伝える姿に共感せざるを得ない。

写真家OZEKIさんに注目する、もうひとつの理由がある。

どうやら、同郷らしいのだ。

ならば、将来、写真家として、どんどん大きくなって、ぜひとも写真界の太宰治、いや、それは最後が悲惨だ、そうそう、写真界の寺山修司、いや、写真界の棟方志功になることを祈って、本日の小話としたい。

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