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【第19話】「古い奴ほど新しいものを欲しがるものでございます」!私のカメラ遍歴と写真①

フィルムカメラで仕事をしていた私が、数年前にカメラを再開して以降、さまざまなメーカーのカメラやレンズを購入し使用した。

色味の面白さで富士フイルム、先進性でソニー、歴史を味わいたいとM型ライカ、未知の世界だったペンタックス・・・

生きているうちに興味あるカメラやレンズを全て体験しておきたい。これが、いま、私が思い描いている人生後半のささやかな楽しみである。

ただ、私は特定メーカーに惚れたり、ライカ好きに見られる「○○は、いいぞお」と誇らしげな推奨はしたくない。カメラやレンズには惚れても、特定のメーカーに惚れないことに留意してきた。

それゆえ、さまざまなメーカーのカメラやレンズを使用し、それぞれの長所・短所を学んでいる最中だ。その過程は至福の時間でもある。たとえ短所があったとしても、それはそれで、そのカメラやレンズの個性だと割り切っている。

というわけで、今回は、当コラムのタイトル「寫眞機余話」らしく、多くのメーカーの機材で撮影し感じたことを記しておきたい。

仕事から趣味のカメラに変わって機材選びで意識したこと

以前にも申し上げたが、私はかつてNikon F3を仕事道具にしていた。30余年ぶりにカメラを再開したときにはミラーレスが一眼レフに追いつけ追い越せという勢いになっていた。

私は軽量コンパクトなミラーレスで再出発した。

カメラ選びの際、最も拘(こだわ)ったのは、デザインと写真の色味・描写である。なぜなら、趣味カメラだからである。

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(FUJIFILM X-Pro2 + XF35mmF1.4 R)

で、魅力を感じたのは、レトロなデザインの富士フイルムである。私がフジのミラーレス機で撮影し始めたころは、いまほど人気のカメラメーカーではなかったような気がする。

富士フイルムのX-T4などT一桁シリーズはニコンのオールド一眼レフ機のような趣だ。そのシルエットが好きで、X-T3やX-T4を使い、最近はレンジファインダースタイルのX-Pro2 Graphite Editionがお気に入りだ。

APS-C機は富士フイルム一択の理由

富士フイルムといえば、中判もあるが、世間のイメージはAPS-C機の専門メーカーだ。

APS-C機はソニーやニコン、キヤノンなど他のメーカーも生産販売しているが、レンズの豊富さやフィルムシミュレーションなど総合的に勘案すると、フジ一択だと思っている。

この選択は間違っていなかったと思っているし、最近、X100VやX-E4といった小型軽量なカメラが若い人たちを中心に人気となっているのは当然だと感じている。

で、最近の富士フイルムだが、私が使用し始めた頃、手振れ補正内臓のカメラはなかった。しかし、いまや、X-T4やX-S10など他メーカーと比べても高性能・高スペックなカメラが増えてきた。

AF性能もかつては他メーカーに劣ると言われたが、X-T4など最近の機種に私は不満がない。とても完成された機種が揃った印象だ。

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(X-T20 + XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS)

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(X-T4 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR)

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(X-Pro2 + XF35mmF1.4 R)

フルサイズでソニーが圧倒的に優れている点

一方、ミラーレスにおいて、フルサイズの選択肢はソニーしかなかった。

当時は、まだデジタル一眼レフも人気があり、むしろ、ソニー機は「カメラはニコンやキヤノンが安心。ソニーは家電屋のカメラ」「一眼レフの光学ファインダーと違ってEVF(ファンダー)は見づらい」などと、ハイアマを中心に決して評判は良くなかった。

私も一眼レフにすべきか、ミラーレスにすべきか、判断できず、様子見だった。しかし、ソニーαシリーズは第3世代(α9、α7RⅢ、αⅢ)から大幅に進化したのを確認し、ソニーを選択した。

ソニー人気に危機感を抱いたキヤノンやニコンが2018年11月ごろ、フルサイズのミラーレスを発売したが、ソニー機の足元にも及ばない内容だった。

「これはソニーで突き進むしかない」と判断し、長女の大学選手権の撮影のために望遠100-400GMを買い増すなどソニーシステムを充実させた。ボディもα7Ⅲ、α7RⅢ、α7Cと購入し、私にとって必要なカメラシステムは完了した。

ソニーを使用して感じるのは、AF性能の安定感である。

写真はピントが合わなければ、画質云々の話が始まらない。ピントは写真撮影の基本である。そこがしっかりしているわけだから、普段使いにソニー機はとても重宝した。

このため、私は友人や知人からカメラ選びの相談を受けた際には「まずはソニーから始めてみたら」とすすめている。

サードパーティーの進化とカメラ選び

ソニーの強みはサードパーティー製品の存在だ。

ソニーEマウントは、シグマやタムロンから多様な画角やF値のレンズが発売されているので、予算に応じてシステムを構築しやすい。しかも、シグマやタムロンは技術力の進化が物凄く、純正レンズの半値以下で純正に勝るとも劣らないものを選ぶことができる点はソニーEマウントの大きな魅力だと感じている。

ソニーがマウント情報を公開していること、ボディが売れていることが、サードパーティーが熱心な背景だと思われるが、手頃な価格で魅力的なレンズが続々発売されているので、私自身、衝動買いしないように注意しているほどだ。

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(α7C + SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary)

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(SONY α7C + SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary)

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(SONY α7Ⅲ + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary)

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(SONY α7Ⅲ + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary)

「隠れ名機」や「隠れ名玉」に出会う喜び

ただ、ソニーの純正レンズも少し古めのレンズを探せば、隠れた銘玉が安値で手に入る。

最近、久しぶりに2015年ごろに発売されたソニー純正マクロレンズ 「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」を購入した。マクロにもスナップにも使用している。

ソニーユーザーはとかくGMレンズに目が向きがちなのだろうか。このレンズ、意外に人気がない。しかし、百聞は一見にしかず。とにかく高精細、写りすぎるくらいだ。まさに「隠れGMレンズ」である。

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(α7RⅢ + FE 90mm F2.8 Macro G OSS)

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(α7RⅢ + FE 90mm F2.8 Macro G OSS)

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(α7RⅢ + FE 90mm F2.8 Macro G OSS)

というわけで、フルサイズなら、現時点ではソニーを選ぶのが無難だ。

カメラ選びに正解はない。所詮、趣味である。恋人探しのように、心に刺さったカメラがあったら、メーカーを気にせず、突き進むのも人生である。

ただ、キヤノンやニコンは純正レンズが高価なうえに、サードパーティーのレンズも極めて少ない、いや、もしかして、ないかもしれない。このことは留意する必要がある。

次回は、ライカ、ペンタックス、そしてニコンに言及したい。

趣味カメラ選びで最も心がけていること

最後に、カメラ選びの際、私が最も心がけていることに触れておきたい。

まず、何の撮影に使用するのか、自分の軸を決めること。

私の場合、スナップであり、家族の記録である。つまりはドキュメンタリーだ。その用途にモータードライブ(現在は縦グリ)や連射性能は不要だ。レンズの性能もそこそこでいい。持ち出しやすく、普通に写ればいいのである。

もし、私が野鳥やスポーツ撮影が目的なら、別の選択基準になっていた。動物の瞳認識が可能なAF性能や最新の長望遠レンズを選んでいるかもしれない。

何を撮影したいがためにカメラを買うのか。この軸が大切だと考えている。

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(写真左が仕事に使用していた Nikon F3とモータードライブ。レンズなしでも1.4kgという重さ。それでも手持ちで長時間撮影し、撮影中に重いと感じなかった)

もう一点は、趣味のカメラだから所有欲を満すデザインや材質の機材を選びたい。

性能が超一流で不細工なカメラと、性能は劣るがデザインの超絶優れたカメラとでは、私は後者を選ぶ。

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(「Elmar-L 50㎜ F3.5 沈胴 1st」を装着したバルナックライカⅢf)

たとえば、バルナックライカ。

私の使用するⅢfはオーバーホール済みだが、それでもファインダーは見づらくフォーカスも決して楽ではない。暗くなったらフォーカスは無理。もっぱらパンフォーカスだ。シャッタースピードも最速1/1000秒までしかない。フィルム装填にコツが要る。

しかし、原始的なローテクゆえの魅力がある。クラシックカーに例えれば、ローバーMINIのような愛らしさがある。

愛せるか、愛せないか。極めて抽象的な物差しかもしれないが、大切な選択基準だと考えている。

たとえ、不人気なカメラでもスペックシートには現れない隠れた魅力があるかもしれない。その邂逅こそが趣味カメラの面白さなのだと感じている。

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