【第4話】カメラとお金の話
カメラ趣味に必要不可欠なのはお金である。
カメラや写真撮影に興味があっても「毎月の生活費で手一杯でカメラやレンズまで買う余裕はない」といった人は少なくないと思う。
私も子供の教育費や住宅ローンが残っていたころは、車は買ってもカメラやレンズを買う心の余裕はなかった。買えなくはないのだが、「今必要なのか」という心の抑制が無意識のうちに働いていた。
家と子供という2大支出要因が去り、幸いにも先々の経済的なメドもつき、人生後半の生き方を考えたとき、趣味の大切さに気づいた。
そのとき、若い頃、仕事道具だったカメラが目に入った。
1980年代に新品を確か10回払いで購入したNikon F3。カメラを使う仕事から離れたあと、長年放置したため、電気系統が腐食。Nikonに修理を依頼したが、修理不能となった個体だ。
スポーツ撮影などに活躍してくれたモータードライブ(最高秒間6コマ)とともに思い出のオブジェとなっている。
あの時のシャッター感触を思い出したくて、中古のF3を4万円近くで購入したが、残念ながらデジタルカメラの優位性を感じざるをえなくなっている。
最近、フィルムが急騰し、現像代も安くはない。フィルム代も現像代も不要なデジタルカメラはトータルコストが安い趣味だ。いまや、私の趣味カメラはデジタルが主体となっている。
考えてみれば、カメラはクルマに比べたら、ずいぶん安上がりな趣味だと思う。
友人のなかには1台1000万円や2000万円といった欧州車を何台も所有している人がいるが、車は購入時だけでなく、所有している間の税金や整備費などランニングコストは馬鹿にならない。車検1回でフルサイズのプロ機が買えるかもしれないという世界だ。
以前、ある方から「なぜ、カメラでマウントを取りたがる人がいるんでしょうか」と聞かれたことがある。私は「おそらく実社会で満足できるほどの仕事やポジション、経済力に辿りつけていないコンプレックスがあるからではないか」と答えたことがある。
というのも、ニコンやキヤノンなどのプロ機やM型ライカが高いといっても、軽自動車より安いのだ。その程度のお金でマウントを取ろうとする精神は、全くレベルが低いし、無視するのが賢明だ。人生に満足している人がする行為とは思えない。
そうはいっても、カメラやレンズを手にするためには、ある程度のお金が必要だ。
私は年間の購入予算を決め、10年以上保有している株式の利益確定をするなどして趣味資金にあてている。
人柱的気分も働き、100万から1万円未満まで幅広くカメラやレンズを購入したが、クルマのように所有しているだけで課税されることもない。
さまざまなカメラを所有して感じるのだが、カメラやレンズの性能・品質は、価格に単純比例はしない。場合によっては反比例するものもある。
面白いもので、100万円で素晴らしいカメラを購入する以上に、1万円程度、あるいは数万円で素晴らしいカメラに出会った時は童心に戻ったような気分になる。心底、うれしいのだ。
家人に「いい買い物をしたわね」と言われたら、もう天にも登るような気分だ。全くもって、子供なのである。
ところで、最近、私はスナップに適したデジタル一眼レフ探しの旅に夢中だった。
先日、2010年以降発売された現代カメラ部門で2017年に発売された「PENTAX KP」を選出。その旅は終わった。
選考基準は、①小型軽量②デザイン性③適度な機能性能の3点。その3点とも高い水準で満たしたモデルがKPだった。今回のデジイチ探しを始めるまでは知らなかったモデルだ。
詳しい選考過程や作例、撮影後の感想はブログにアップしたので、関心のある方はご覧になってほしい。
ベストカメラに選んだPENTAX KPだが、残念ながら、今年2〜3月に生産が終了している。しかし、2017年2月に販売が始まったモデルなので、中古でも程度の良い個体は多い。
私はPENTAX KPのレンズキット(smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6 ED AL IF DC WR)を中古で7万円ほどで購入した。
ライカのプロダクトに惚れて、M型ライカをはじめ各種レンズも購入したが、そのライカ純正のレンズフィルター3個ほどの費用で、KPを買えた計算になる。
しかも、KPの描写は実に素晴らしく、改めてカメラやレンズの幅広さと奥の深さを学んだ気分だった。
ペンタックスはキヤノンやニコンに挟まれてデジタル一眼レフの販売は苦戦が続いているが、軽くて描写力に優れたレンズも豊富だし、アルミ削り出しで作り込まれたlimitedシリーズは品質やデザインも絶品だ。Kマウントはなかなか楽しめる。
もうひとつ、学んだことがある。
私のブログにPENTAX KPをベストなスナップカメラに選出したという記事をアップしたところ、1日あたりのアクセス数は過去最高に達した。
これまで、フジフイルムのX-S10やX-E4、ソニーのα7C、あるいはライカQ2の記事もアクセス数は凄かったが、PENTAX KPはその比ではなかった。圧倒的なのである。
いまなおデジタル一眼レフに興味を抱く人が多いこと、なによりもPENTAXを愛する人たちがたくさんおられることを強く実感した。
撮影スタイルにはさまざまあるが、私は街スナップが好きだ。街の風景を通じて、時代時代の人々の息遣いを知りたいし、その記憶を記録しておきたいからだ。
今回、PENTAX KPを購入・撮影・レビューして、別の意味で人々の息遣いを痛いほど感じたような気がしている。
多くのことを気づかせてくれたPENTAX KPには感謝している。そして、いま、ペンタックスの純正レンズを充実させようとしている自分がいる。
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