【第1話】9000円で買った古い寫眞機の話
最近、9000円に満たない古いデジタル一眼レフを買った。2007年に発売されたPENTAX K100D Superという、おそらく当時のエントリー機である。
バルナックライカ(Ⅲf)やフィルムのM3、M4、M10-Pなどデジタルライカも使ってきて、ふと、「私はデジタル一眼レフを使ったことがない」ことに気づいた。
世の中の流れは、重くて大きいデジタル一眼レフからミラーレスに大きく舵が切られようとしている。もちろん、私は寫眞機が大好きだがら、ソニーやフジフイルムのミラーレスは所有している。
SNSのTL上にも、新型のミラーレス機や対応するレンズ、あるいは念願のライカを買ったといったツィートがすっかり増えた。
それなら、いまや忘れ去られようとしているデジタル一眼レフ(デジイチ)を使ってみたいという好奇心が湧いてきたのだ。
というのも、私はデジタル一眼レフに出会うタイミングがなかった。20代前半に仕事で使っていたカメラはNikon F3。当時はプロやハイアマが使用する憧れの寫眞機である。
いまも我が家には電気系統が故障して再起不能となったF3が眠っているが、とにかく頑丈で多少ぶつけたりしてもびくともしない頼りになるやつだった。
寫眞機を使う仕事から離れ、約30年たった。フリーになることを見据え、人生後半の趣味にしようと、徐々に寫眞機を買い始めていた。ただ、機種を選ぶ際、どうしても小さな機種に魅力を感じていた。
というのも、若い頃、仕事に使っていたF3をデートの際にも持ち出したりしたのだが、嵩張り、しかも重く、撮影したい時にバックから素早く取り出せず、なんともプライベートでは使いづらいと感じたトラウマがあった。
小さく軽い寫眞機となれば、必然的にデジタル一眼レフよりもミラーレスに目が向く。我が家には、いろいろ入れ替えもあったが、現在はα7R3やα73、センサーサイズの小さなAPS-C機・X-T4、X100V、そしてiPhoneより小さなGR3と、次々と私の友人たちが集まった。
そして、今回、初めて経験したデジタル一眼レフK100D Super。APS-Cセンサーなので、ボディの重さは570g。ミラーレス並みだ。ライカM10-Pと比較してもサイズ感はまずまず。スナップ中心の私には好ましい大きさだ。
この「K100D Super」という寫眞機は、画素数が610万画素しかない。フジフイルムが1億画素の中判GFX100sを発売する時代。まさに極小画素である。
ただ、私がこの寫眞機を買った最大の理由が、いまは生産されていないCCDセンサーであるということ。CCDセンサーのカメラは2010年前半で姿を消していて、いまは中古でなければ手に入らない。
すでに、Leica M9-Pという2012年発売のカメラでCCDセンサーの素晴らしさを体験している私にはひどく魅力的な寫眞機に見えた。
しかも、シャッター回数も少なく、標準レンズ付きで9000円に満たない価格だった。仮に写らなかったとしても9000円なら勉強代と諦めることもできる。そう考え、即座に購入した。
この寫眞機の魅力は、私よりも写真家のOZEKIKOKIさんがYouTubeで紹介しているので、見事な作例とともに確かめて欲しい。
私はK100D Superを手にして、まず驚いたのは2007年当時、入門機でもすでに相当な機能が盛り込まれているという点だ。
AFは正確だし、ボディ内に手振れ補正(3.5段分)もある。しかも、センサーについたゴミ除去機構も搭載されていた。
キットレンズ(SMC DA 18-55mm f3.5-5.6 AL)でスナップした作例はブログに掲載したので、そちらをご覧になって欲しいが、現在のCMOS寫眞機で撮影したものとは一味違う写真が生成された。
最近は、連射性能や画素数、動画性能の高さを競った高額な寫眞機が花盛りだし、とかくF値の低いレンズが偉いとされる時代だ。しかし、そんなことは趣味写真にはさほど重要なことでもない。
大切なのは、自然な姿や光景を自由かつ気楽に撮影して、最後に吐き出される写真が自己満足できるかどうかという点だ。
古くて安いデジタル一眼レフの入門機。選択肢から外していたジャンルの寫眞機だが、人生後半になって、ひとつ大切なことを教えられた気がする。
小さくてかわいいK100D Superに感謝している。
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