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【第20話】不便でローテクなライカにハマった理由!私のカメラ遍歴と写真②

今年3月初め、コラム「寫眞機余話」がスタートして3ヶ月が過ぎた。そして、今回がちょうど第20話となる。

前回は30年ぶりにかつての仕事道具だったカメラを趣味として再開し、フルサイズはソニー、APS-Cはフジフィルムのミラーレスを選択した理由をお話しした。

要約すると、ソニーもフジフイルムもミラーレスの特徴である軽量コンパクトを体現し、レンズの種類と価格の選択肢が豊富だったのが決め手だった。

ソニーとフジフイルムの撮影システムを整備し終えると、次なる関心は過去の製品、とくにローテクで不便なカメラに向かった。

その視点で周囲を見渡すと、「いつかはクラウン」ではないが、趣味カメラの終着点はライカという時代になっていた。

ライカには全く魅力を感じていなかった

私はNikon F3を使って仕事していた1980年代当時、周囲に「ライカはいいぞ〜」なんて騒いでいる人は皆無だった。

ニコンはライカを打ち負かした一眼レフの王者なのである。「コンパクトカメラのようなレンジファインダーなんて使えるか」とばかりに、ライカには全く興味も持たなかった。むしろ、ニコンの方にブランド性を感じていたものだった。

しかし、2010年代、状況は大きく変化していた。

仕事道具ではなく、趣味ツールとしてのカメラ。そうなると、常に持ち歩けるサイズ感とデザイン性に着目する。

私の人生後半の楽しみは気になったカメラを全て使って、その中からお気に入りのカメラとレンズを持って全国を旅することである。

そんなとき、軽量コンパクトで所有する喜びのある機材が好ましい。

海外旅を計画していたが、このコロナ禍である。海外は諦めてディスカバリージャパンに切り替えた。

好きなカメラを持って全国を気ままに旅する。乙女のように、松尾芭蕉のような生活に憧れている。

すると、全く興味のなかったカメラが気になってきた。

ライカである。

なぜ、いま、ライカなのか?

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最初はM10を購入した。悪くはないが、シャッターの音色が気になった。1年ほどでシャッター音の上品なM10-Pと交換した。

次は、古きをたずねて2014年発売のM240、さらに2011年発売のM9-Pを入手した。現在、デジタルライカはM10-P Safariも加わり、4台となった。

デジタルライカの面白さは、世代によって絵作りが異なることである。

決して「最新が最善」ではない。ライカを使用しているうちに、レンジファインダーで撮る面白さや個性的な描写、さらにレンズのサイズ感やデザイン性にすっかり魅せられてしまった。

M9-PはCCDセンサー特有の狂った色乗りと絵画的な描写が良かった。M240は自然でどこか懐かしさを感じさせる描写だった。M10やM10-Pは、両者の中間、ややM9-P寄りの絵作りだと感じた。

どれも個性的。どの機種が優れているとか劣っているとか、優劣の物差しでは測りきれない魅力があった。

ライカレンズは新製品が安全かつ経済的

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さらに、ライカのMマウントレンズは「小さいは正義」を製品作りに徹底していた。しかも、精緻で良く作り込まれていた。

しかし、価格は狂気としか言いようがない。軽い気持ちで踏み込んだら家計は火の車になりかねない危険性を秘めている。しかし、カメラ販売が激減して経営に窮しているメーカーが相次いでいる現在、「薄利多売」とは真逆の「厚利少売」で経営できているのだから物凄いメーカーだ。

狂気を感じるのはオールドレンズ。1966年から1975年まで生産された初代ノクチルックス M50mm F1.2。「Map Camera」のサイトを見たら512万円となっていた。つい最近まで300万円台だったと思うが、中古の高騰が激しい。

これほど中古相場が上昇していると、F1.4のズミルックスやF2のズミクロンなどはむしろ新品を購入したほうが経済的だし、安心だ。不具合のある個体をつかまされる心配もない。

ライカはレンズ1本で、国内メーカーの新型ミラーレスを買えてしまうようなメーカーだ。自分の経済状況、人生の価値観など、総合的に判断してほしい。

歴代デジタルライカの作例

では、作例をご覧いただきたい。写真は、発売日の古い順に、M9-P、M、M10-Pで撮ったものだが、どれも描写に新旧の差はない。むしろ、個性を感じる。

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(M9-P + Summilux-M 50mm F1.4)

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(M9-P + Summilux-M 50mm F1.4)

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(Leica M9-P + Summilux-M 50mm F1.4 現行)

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(Leica M Typ240 + Summicron-M 35mm F2 1st  8枚玉)

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(Leica M Typ240 + Summicron-M 35mm F2 1st  8枚玉)

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(Leica M Typ240 + Summicron-M 35mm F2 1st  8枚玉)

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(Leica M10-P + APO-Summicron-M 50mm F2 ASPH. )

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(Leica M10-P + APO-Summicron-M 50mm F2 ASPH. )

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(Leica M10-P + APO-Summicron-M 50mm F2 ASPH. )

経済的負担を減らす方法

ライカで撮影する際、何も純正レンズにこだわる必要はない。

35㎜か50㎜の純正レンズを1本買ったら、あとはライカレンズと互角の品質を誇る国内光学メーカー・コシナのレンズを利用するのも賢明な選択だ。

私も何本か所有しているが、コストパフォーマンスがすこぶる優れている。「この品質でこの安さはすごい」と感じるレンズも少なくない。

たとえば、ライカを代表する初代ノクチルックスと同じF1.2の「NOKTON 50mm F1.2 Aspherical VM」。レンズの明るさ、その描写力は抜群なのに、価格は初代ノクチルックス復刻版の9分の1。これを使わない手はないと感じた。

フィルムライカが魅力的な理由

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(写真左から、ライカM3、バルナックライカⅢf、ライカM4)

懐に優しいという点では、フィルムライカはデジタルより優れているかもしれない。もちろん、レアものは狂気的な値段がついているが、普通の商品であれば、少し頑張れば手が届く。

私自身、フィルムで育った世代だから、ミラーレスに慣れてくると、フィルムライカも使ってみたいと思った。

世界を驚愕させたM3はライカ好きが一度は手にする機種。35㎜レンズも楽に使えるM4は最も完成度の高い全機械式のフィルムライカだ。戦前から続いたLマウントのⅢfは、バルナックライカの完成形と言われる。

私のフィルムライカはこの3機種だが、この3台は撮影の楽しさに加えて、ビルドクオリティも高く、他の機種の買い増しを考えないようになった。そのくらい満足している。

フィルムライカは現在、M3、M4が10万円台から20万円前後、バルナックライカは4〜5万円で手に入る。手に取ると、最近のデジタルカメラよりも高級感がある。1970〜80年代のメルセデスベンツに感じる高級感にも似ている。使い勝手もスナップ時の速射という点ではニコンF3より優れていると感じた。

ただ、中望遠レンズを使用したい人には、断然、F3など一眼レフをおすすめしたい。レンズを通して被写体が大きく見える分、ピントも合わせやすい。かつて日本の一眼レフがM型ライカを圧倒した理由はまさに、この辺にあるのではないかと思う。

スナップならフィルムライカで十分、いや、十分以上ではないだろうか。フィルム撮影には、デジタルにない面白さもある。その話はまた別の機会に詳しく説明したい。

思わぬ伏兵が現れた!

ミラーレスシステムは十分に揃った。日常的な撮影に困ることはない。

より趣味的なライカも買いたいものがなくなった。

今後は、若い頃、自分を育ててくれたニコンの最新機種をゆっくり時間をかけて探そうかと考えていた。

しかし、今年、思わぬ伏兵が現れた。しかも、全く未知の世界だった。

その話は次回に譲りたい。

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