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TRIZのシステム進化パターン

前の記事(背反問題の解決:入れ子にしてみたら)では、TRIZ(発明的問題解決理論)の中でも最も良く知られている「発明原理」について、シンプルな例を使って紹介しました。
発明原理は、「こちらを立てれば、あちらが立たず」といった背反問題(矛盾問題)の解決を支援する発想ツールです。

今日は、TRIZの「システム進化パターン」という発想支援ツールについて紹介します。「技術進化のトレンド」などとも呼ばれます。

TRIZ研究者たちは、膨大な特許事例や技術文献に基づいて、技術システムがどのような段階を経て進化しているかを分析しました。

その結果、一見無秩序なプロセスに見える技術システムの進化には、実はいくつかの規則性があり、業種や分野を超えて、技術システムは共通のパターンを辿って進化している、という洞察が生まれました。
その洞察に基づいて、普遍性のある共通パターンを抽出して体系化したのが「システム進化パターン」と呼ばれるものです。

システムは、必ず何かの目的を持って存在しています。
技術システムの進化とは、この“目的(=主機能)の強化”の歴史と言えます。TRIZの「システム進化パターン」は、この“機能の強化”の過程における業種・分野の枠を超えた規則性を抽出したものです。

「システム進化パターン」をヒントに、自社製品や技術の機能を強化する(“有用な作用”を強化、また“有害な作用”を除去)方法を発想したり、自社製品の将来像を発想することができます。

「システム進化パターン」のひとつに「空間の細分化」に関わる進化パターンがあります。

空間の細分化

このパターンに、ランニングシューズのソール構造の進化を当てはめてみると、ソールはひとつの固体だった構造から、ひとつの中空構造を持つようになり、さらに複数の空洞を持つ構造となり、そして今は連結された空洞にゲルを充填した構造へと進化しています。
この進化のプロセスを通して、例えば「着地衝撃を吸収する」や「推進力の強化」といった有用な作用を高めていきながら、「ソールが重くなってしまう」という有害な作用を低減しています。

もし自社の製品が、「空間の細分化」の進化過程で見た場合に、「ひとつの中空構造を持っている」段階であれば、「中空構造を複数にする」あるいは「多孔質構造にする」ことで、自社製品にどのような効用が生まれるか(有用機能を高める、有害機能を取り除く)を考え、自社製品の進化の方向についてのアイデアを出すことができます。

言い換えると、今「中空構造」段階なのであれば、「複数の空洞」「多孔質構造」「活性要素を入れた多孔質構造」といった段階は、未だ実現していない(使っていない)進化のポテンシャル(潜在的可能性)と捉えることができます。

「システム進化パターン」をはじめとするTRIZ発想ツールと、TRIZによる課題解決プロセスについてはこちらを見てください。


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