この時代に生きて

読書は、旅をすることに似ている。作者の目や手を通して紡がれる、よく考えられた世界を、思考を頼りに巡り歩く。最初のページをめくってから、奥書をあとに本を閉じるまでの、ひとときの非日常体験─

歳を重ねるごとに魅力を増す人がいる。自分にとってのその一人に、小田和正がいる。今回は、2018年 株式会社PHP研究所 発行/小田和正 著『「100年インタビュー」保存版 時は待ってくれない』を読んだ。

もともとは2017年にBSで放映された番組のインタビューを、原稿に起こした内容。幼少から放映当時までの小田さんが、本人の心情と共に描かれていた。

在るものはそれとして受け止め、自らの為すべきことを行う─本人の発言に表れるそんな潔さが、すごくいい。

残念ながら放映された番組は視聴したことがなかったが、インタビューの合間に小田さんの歌の歌詞が載っている。このタイミングで歌が流れたのだろうか。繊細に綴られた言葉と、前後にある本人の口から語られる素の言葉の連なりが面白い。

“「時は待ってくれない」なかで、目いっぱい走ったということかな。”

“本当に心からやりたいなと素直に思うことがあるならば、時はきっと待ってくれるね。”

インタビューを締めくくるその言葉が、すごく響いた。まさにそのとおりだと思う。歳に言い訳して手を拱くのか。それとも、果てなくとも一歩を踏み出すのか。たとえそれが遅かった本気でも、ひたむきな動きには、時は何かしらの答えをくれる。誰のためでもない人生。一つでも多く、待っている時に出会う自分でいたいものである。

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