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日本の食糧援助絡みのいろんな話(3)

日本の食糧援助絡みのいろんな話(1)では
食糧援助のあらましについて、

日本の食糧援助絡みのいろんな話(2)では
港での荷役などについて
少し書かせていただきました。

今日は、援助米の内容、
つまり
被援助国へ送るお米の種類について
書いてみたいと思います。

日本はミニマムアクセス米として
米生産が盛んな多くの国々から毎年おコメを購入しています。

細長いインディカ米(長粒種)が主流ですが、
無論米国からは
カリフォルニア米(中粒米)を購入しているので、

被援助国家側が好みを示せば
出来る範囲で応えます。

ポルトガル語圏はどこも
もともと結構ライスを食します。

なので、
政府の受け入れ機関への聞き取りでは
まず99%の確率で

「私達の文化では伝統的に
パラパラの長粒米を好みますので、
それを優先してもらえると助かります」

といった答えが返ってきます。

前年に人気がなくて
売り捌くのに苦労したものがあった場合などは、

「○○国のコメは、前回と同等のものである場合は
なるべく避けてほしい」

といった要望が出されることもあります。

なにせ、この食糧援助が年中行事であるならば、
日本がミニマムアクセス米を調達するのも
恒例行事です...。

日本にお米を毎年買ってもらっている国の中には
売ったところで日本人が食べるわけでもなく、
どこかの途上国へのドネーション物資になるのだからと

国内でも販売し難いものを
押し付けてくるようなこともあるようです。

そんなこんなで
貰う方は貰う方で思うところはいろいろあるのでしょうが、
取り敢えず要望が出せるのであれば
ということで、

「なるべくなら炊いたらパラパラになる長粒米を」

と、先方政府側は要望を出してくるのです。

🌾🌾🌾🌾🌾


さて、今度は町に出て
中央広場や露店マーケットの様子を見てみましょう。

こちらはモザンビークの首都マプトの中央市場です。

                https://www.afar.com/places/maputo-central-market-maputo

こちらはアンゴラの青空マーケット。

https://www.dinheirovivo.pt/economia/internacional/africa/fmi-diversificar-a-economia-e-a-maior-prioridade-para-angola--14518496.html


そしてこちらは
ブラジルのテレビドラマのタイトルが名前になっていることで有名な
カーボベルデの首都プライア市にあるスクピーラ市場。

https://search.yahoo.co.jp/image/search?ei=UTF-8&fr=mcafeess1&p=mercado%20praia%20cabo%20verde#aa5d3c52ee760a1c44c8d8609684e5c5

いずれにせよ、
ポルトガル語圏アフリカのマーケットは
どこへ行っても

「静かだ!」

という印象です。

最近では多少活気があるとも思いますし、

とりわけアンゴラのマーケットでは
客引き行為なども見受けられたりもしますが、

20年~25年前のモザンビークやカーボベルデの市場は
誰も「らっしゃい、らっしゃい!」と声を張り上げるでもなく
「見てってよぉ!」と声を掛けてくるでもなく、

売り子は皆、ただボケーっと座っているだけで、
場内はしーんと静まり返っており、
あまりの静けさに
却って何かあったのかと思ってしまう程でした...。

🌾🌾🌾🌾🌾


モザンビークの中央マーケットで
聞き取りを行ったときのことです。

     日本側:「このお米はいくら?」
     店側: 「○○メティカイシ」 
             
※ 通貨:MT=Metical、複数:Meticais

     日本側:「このお米はいくら?」
     店側: 「○○メティカイシ」
 

                    何人に聞いても同じお値段です…。それでも続けると、

     日本側:「このお米はいくら?」
     店側: 「○○メティカイシだよ。あんたらさっきから皆に
          聞いているだろう。皆同じだ。ここには抜け駆け
          するような人間はいないよ!」
 

 なるほど...、
 ポルトガル語圏アフリカといえば、
どこも概ね冷戦時代に
ロシアの支援を受けて独立を果たした国です…。

 つまり、
「安売り」だの「競争」だのといった
  意識も概念もないというわけです…。
  場内が静かなのも、そのような要因があるのでしょう...。

    日本側:「ところで、日本から贈られているお米は売ったこと
         ある?」
 
    店側: 「あるよ。毎年来るやつでしょ?」
    日本側:「で、食べてみた?どうだった?」
    店側: 「よく増える良いコメだよ!」
    日本側:「実は、あのお米は新しいものではないの。一年以上
         倉庫に入っていた古米がこちらに持ってこられるの
         だけれど、そのことに不満はない?」
    店側: 「ないよ。コメは新しいと水があまり入れられなくて、
         炊いたときに増えないから、よく寝かしたものの方が
         いいのさ」
    日本側:「じゃあ、おコメの種類はどう?あなたは粒が長くて
         パラパラになるものと、粒が短くて粘り気があるもの
         とでは、どちらが好き?」
    店側: 「私は粒が短くて粘り気がある方が好きだね。おそらく
         ここいらの大抵の人がそうだよ!」

😲

 おっと!
役人の言うことと消費者の言うことが

  違うじゃ~ん!!



そうなのです…、

政府のお役人であれば、
当然海外(ポルトガル、ロシア、キューバなど)で
教育を受けており、
他の外国も訪れたことがあり、
と同時に
アイデンティティーとしての文化圏はポルトガルなので、
当然子供の頃から

「美味しいお米とはパラパラになるもの」

と教えられています。

一方、援助米の実質的消費者は
 いわゆる低所得者層ですから、

今でこそお米の消費量が増えつつあるものの、
元々の主食と言えば、

多くのアフリカの国々ではウガリと呼ばれる
キャッサバイモの粉を練って作られる
「餅」の親戚のようなものです。

そりゃあ、粘り気が欲しいでしょうよ!(笑)


ちなみに「ウガリ」は国ごとに多少
やわらかさなどテイストが違うのですが、

 ポルトガル語圏の場合、
これを多く食すのは
 モザンビークとアンゴラで、
 アンゴラの場合はトウモロコシの粉を使ったものもあります。

 そして、名称も各国で異なり、
 アンゴラでは「Fungeンジ】
 モザンビークでは「Ximaーマ】といいます。

🌾🌾🌾🌾🌾


ともあれ、

「お米は粘り気があるもので、とくに古米が良い」


とは、日本人にとっても、
もし傍にいたとしたら、現地の役人にとっても
寝耳に水な情報なわけでして…、

…とはいえ
変に偉すぎる人から
「パラパラの長粒米を望む」
聞き取ってしまったあとのこと、

当然日本側は、
「極力長粒米を望むとのこと」
 と本国に報告することになるというわけです…。

ちなみにアンゴラの
青空卸市場の人ごみの中で

「以前は質が良くて美味しいカリフォルニア米が来ていたのに
最近は来なくなっちまった。なんでだ?!?!」

と文句を言われたこともありましたし、

現地在住の日本人の方々も当然

「カリフォルニア米が日本から贈られてくるのは
私達にとっても
貴重な食糧調達の機会だったのに...」

とこぼされます…。

🌾🌾🌾🌾🌾


いや~、
どこの国でも
国民の声って、なかなか政府には届かないものですね…。

😞😞😞


さて、次回は
この食糧援助に係る
ちょっと風変わりな入札方式について
書かせて頂くつもりですので、
懲りずに読んで頂けると嬉しい限りです。

まずは本日もここまで読んで頂き、誠にありがとうございました!


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※ 「ボクは王様だから、パラパラなのがいい♪」、否、
「王さま 猫」はこたつぶとんさんの作品です。


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