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実はポルトガル語圏でも「とんでも修復事件」は起きていた(1)

美術品にとんでもない修復が施されてしまうというと、
なにかと「スペインで起き易いこと」
というイメージが定着してしまっていますが、

実はポルトガル語圏でも起きています...。


こちらはブラジル、
リオ・デ・ジャネイロ州ニテロイ市の
カペーラ・ジ・サンタクルース・ダ・バーハ」
と呼ばれるチャペルに祭られた
サンタ・バルバラ(聖バルバラ)像です。

https://www.gazetadopovo.com.br/caderno-g/santa-barbara-com-cara-de-barbie-1hv6lzzohiwkvpzu5wp6ramha/

「カペーラ・ジ・サンタクルース・ダ・バーハ」とは、
ニテロイ市南部のサンタ・クルース・ダ・バーハ要塞にある
小さなチャペルです。

要塞の位置はリオ・デ・ジャネイロ市から見ると、グァナバラ湾の対岸になります。
↾  サンタクルース・ダ・バーハ要塞の全貌

サンタクルース・ダ・バーハ要塞は
ブラジルの文化遺産に指定されており、
要塞からは対岸のリオの町の絶景を楽しめる上、

かつては牢獄が併設されていたため
ブラジルのアルカトラスとも呼ばれることもあり、

囚人に纏わる心霊現象も有名だったりする
ちょっとした「ブラジルの知られざる観光スポット」
といった地位を誇る名所なのですが、

その要塞にあるチャペルである
カペーラ・ジ・サンタクルース・ダ・バーハ」内に祭られる
いわば「ご神体」がサンタ・バルバラ像です。

https://www.thiagosantannafotografia.com.br/portfolio/casamento-ao-ar-livre/286813-casamentodanielleevinicius(チャペルで結婚式を挙げるカップルも多いです。)

見てのとおり小さなチャペルですので、
中もこのような簡素な造りとなっています。

               https://turistaprofissional.com/fortaleza-de-santa-cruz-niteroi/

そして、
正面の小さな十字架が置いてあるスペースが
本来サンタ・バルバラが「いるべき場所」なのですが、
この写真が撮られたときは、
1度目、ないし2度目、ないし3度目の修復のために
「席を外して」おられたのでしょう…。

というのも、
この記事の冒頭の写真について、

「こちらがサンタクルース・ダ・バーハ要塞の
チャペルに祭られた聖パルバラの像です」

と紹介されれば、

「ああ、そうですか」

で済んでしまいそうですが、

実はこんなことが起きたのです…。


サンタ・バルバラ像の元のお姿は、このようなものでした。
19世紀にポルトガル人の彫刻家により彫られたものだそうです。

お顔のアップはこれです。
(というか、「これでした」…)↓

https://extra.globo.com/noticias/rio/imagem-de-padroeira-em-niteroi-vai-de-santa-barbie-dos-militares-santa-barbara-22586180.html

ところが2012年に
陸軍博物館の保全チームが修復した結果、
記事冒頭にも載せた、このようなお姿になられました。

お顔のアップはこちらです...。💦 ↓

これを見た歴史家のミルトン・テイシェイラ氏が憤慨し、

「お顔といい、派手な衣装といい、
これではまるでバービー人形ではないか!」

との投書を行ったところ、
これがインターネットで拡散され、
この像はあちこちで「サンタ・バービー」
揶揄されるようになってしまいました…。

❇❇❇

その後、
「バービーと化した聖バルバラ」
という汚名は広がるばかりだったため、

2016年に新たな入札が行われ、
2017年に2度目の修復が行われたものの
これも失敗、

更なる修復が行われた結果、
取り敢えずは
ドレスの色などが当初のものに似たものに再現され、
このようになりました。

う~ん...、


残念ながらお顔のアップ画像は見つからなかったのですが、
こうして見る限り、

老けてしまわれたというか、
やつれてしまわれたというか...、

元の清らかさや優しさが
感じられるものではありませんよね…。

まあ200年も経てば
多少お年も召されるでしょうし、
度重なる荒療治に
心底お疲れになったでしょうから、

そのせいだ!


ということにして、
これ以上この像が痛めつけられることがないよう
願うしかないのかもしれません…。

❇❇❇

というわけで、

ポルトガル語圏でも「とんでもない修復」は起きている、

けれど

マイナー言語のマイナー国家にある
マイナーな観光地の出来事であったため
世界中のさらし者にされずに済んだ…

というケースを一つご紹介させて頂きました。


本日もお読み頂き、誠にありがとうございました!


※  サンタ・バルバラさまの痛いの、痛いの、飛んで行け~!、否、
「癒しの魔法使い 猫」はこたつぶとんさんの作品です。


その(2)はこちら。 ↓


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