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アンゴラ と モザンビークはどう違うか

トップ画像:IjimakiによるPixabayからの画像

アンゴラかモザンビークかと聞かれたら、私は断然アンゴラが好きなのですが、日系ブラジル人の同業者でも私と同じように感じる方にお会いしたことがあります。(無論、モザンの方が好きという方にもお会いしたことはありますが。)

同じような用件で訪れたお役所系の訪問先の事例をご紹介します。

アンゴラの場合

挨拶もそこそこに、

「必要な資料やデータについてのメールは確認している」

メールをプリントアウトしたものを手に、

「そこでだ。これとこれとこれについては準備させているので、明日にでも渡す。一方のこちらについては、問い合わせてはいるが、出てくるかどうかすら疑わしいと考えている。又、出てきたとしても、あなた方の望むレベルのものとは到底思えない。なお、これとこれとこれについてはアンゴラには存在しないと断言できる。さて、どうする?」

「いえいえ、ある物だけ出して頂ければ結構です」

「では、明日は○○に行けるよう調整しているのだが、そちらの都合は?」

「ああ、助かります。それでは明日○○時に」

で、概ねそのとおりとなる。

モザンビークの場合

まず、控室に通され、

「○○長がまもなくご挨拶に参りますので、こちらでお待ち下さい」

「ははぁ」

コーヒー、紅茶、ミネラルウォーター、ビスケット類(時にはサンドイッチなどの軽食)などが運ばれてきて、それを飲んだり食べたりしながら待っていると、15分~30分後に○○長と数名の実務者が入ってくる。

挨拶&一人一人の自己紹介が済むと、

「それではご用件をお聞かせ下さい」

日本人側が訪問の背景や目的を説明し、必要な資料やデータのリストは事前にメールで伝えてある旨伝えると、

「そうでしたか。私の手元には届いていないので、どのような資料やデータかお聞かせ願えますか」

日本人がプリントアウトしたリストを全員に配り、一つ一つの項目について説明して、

「これらをご用意頂くことは可能でしょうか。可能であれば、いつ頃頂きにあがればよろしいでしょうか」

と訊ねると、

「ええ、ええ、勿論ご用意致しますとも。来週でもよろしいでしょうか」

「それは大変有難いです。それでは来週の〇曜日に又伺わせて頂きます」

「では、ごきげんよう」

「ごきげんよう」

翌週。

前回と比べると控え目なティータイムの行程を踏み、実務者が出てくる。

「ええっと、いろいろと準備させているのですが、これとこれについて、
具体的にどのようなデータなのかというダウトが出てきまして~…」

日本人が例を挙げるなどして説明すると、

「ああ、分かりました~。それでは来週には~…。」

そして翌週。

「ああ、そうでした、そうでした、あの件ですよね~…。明日には必ず~」

これを繰り返し、日本人の帰国予定日までに何か出てくればラッキー♪ となる。

*****

勿論どちらの国でもこんなケースばかりではないですが、どちらかというと、口ぶりを含めてこんな印象です。

要は実務的で建設的な会話ができる人が多いアンゴラと、物腰が柔らかく、極めて「お返事美人」な人が多いモザンビークということになるのですが、日本人はというと、「アンゴラ人はふてぶてしかったり恐かったりするから嫌い」、「モザンビーク人はおとなしくて可愛げがあるから好き」という人が比較的多い気がします。

確かにモザンビーク人は日本人が好む謙虚さや礼儀正しさを感じさせる人が多く、ホテルのメイドさんなどでもチップを手渡そうとすると、片手をもう片方の腕に乗せた「頂戴致します」のポーズをして、受け取ると「Muito obrigada (ありがとうございます)」と言ってくれるのですが、その様子は、実に奥ゆかしく可愛らしいものです。

でも、そういう国民性と「実務」は別問題ですので、正直モザンビークには仕事がし難いイメージを持ってしまいます。

最初に紹介したようなケースでも、多少なりとも迷いや不安を顔にでも言葉にでも出してくれさえすれば対処のしようもあるというものですが、何を頼まれても取り敢えずは「勿論ですとも、致しますとも」と「お返事美人」になってしまうモザンビーク人には、いささか困ってしまいます。ニコニコしながら「できますとも」と言っている相手に、「本当に?」とかツッコミ辛いですからね…。「では、お願いします~」と引き下がらずを得なくなってしまうのです。

モザンビークで更に困るのが、どこかの村レベルの場所を訪ねる必要があるような場合です。

まず、distrito (群)レベルのお役所を表敬、次いで、その下の 行政区分であるPosto Administrativo の長にご挨拶、次にその下の Localidade の長に挨拶・事情説明等を済ませ、ようやく目的地に行けるといった塩梅なので、1日に
1か所以上訪れることができるようなことがあると、「なんと捗る一日だったのだろう!」とお疲れビールがより美味しくなってしまう程です。

*****

ここでポルトガル語圏で仕事をする場合の心得を一つ。

アフリカ葡語圏諸国のみならず、ブラジルのような大国でも、短期になって「~して貰わないと困るんです!」などと強めに言ってしまったり、「これはこうですよ」とちょっとでも上から目線で何かを教えてしまったりするとムクれて意地でも頼んだことをしてくれなくなるのでご注意下さい。

じゃあ、どうするかと?

「まだなのかと上から怒られてしまって~…」など、「上」のせいにして、可哀そうな自分を演出するのが一番の早道です。>笑

葡語圏人は皆人情に厚く気の毒な人を助けるのが大好きな反面、ポルトガル以外の葡語圏は、どこも支配されていた歴史がありますから、ほんのちょっとでも上から目線な態度を示す人には驚くほど敏感に拒絶反応を示します。

ただ、だからといって、日本人がやってしまい勝ちなふざけた態度で笑いを取ることで相手にアプローチしようというのも、「あの人は頭がおかしいのではないか」と思われて、逆効果になり得ますので、お勧めできません。

要は、あくまでも毅然としつつ、馬鹿にされない程度に下手に出るという「ワザ」を身に着ける必要があります。

いやぁ、マジ難しいんです、ポルトガル語圏って…。

ある時アンゴラでポルトガル以外のどこかヨーロッパの国のゼネコンの人と話したことがあるのですが、

「私は何十年もアフリカ諸国で仕事をしてきて、ここ5~6年
葡語圏諸国に来るようになったんだが、葡語圏はどことも違っていて、
他では通じる常識もルールも通用しないような難しさがある」

と、こぼしていらっしゃいました。

ま、良くも悪くも葡語圏は特殊ってことで…。

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本日も最後までお読み頂き、誠にありがとうございました!

※ 猫の落語家はイラストレーターのこたつぶとんさんに
リクエストして描いて頂いたものです♪



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