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2週間のライバー生活を終えて

 8/15〜8/28までの2週間、ミクチャというアプリで人生初のライブ配信というものを行なっていた。配信している間だけ、視聴者は配信者にポイントを送ることができ、そのポイントの合計得点で順位を競うオーディションに参加していたのだ。1位になるととあるフリーペーパーにモデルとして起用されるというもので、ちょうど初出演した舞台が終わり、細々とした撮影以外に特に目立った話がなかった自分にとっては、なにかのきっかけになるかもしれないとの思いで応募したものだった。ちなみにライブ配信をしなければならないと知ったのは、応募が完了して最終審査に進んでからのことである。

 イベント最終日、12時から20時までの8時間に及ぶライブ配信を終え、肉体的な疲労を無視して、そのままの勢いで着物をたたんだ。硬い床にゆっくりと倒れこみ、そこからしばらく脳みそを停止させたまま、形式的にYouTubeを見ていた。見ていたというより、ただ視認していただけという方が正しいかもしれない。内容を理解するでも、泣いたり笑ったりするでもなく、とにかくじっとその液晶を眺めていた。微動だにせずただひたすらに横たわっているだけでありながら、かろうじて生きてはいるその姿はまるで、7日目の蝉のようである。
 そこからしばらくしてむくりと起き上がり、応援していた他の配信者へ余ったポイントを投げ、夕飯を食べ、この文章を書き始めた現在、夜中の1時半を過ぎたところだ。

 結果から申し上げると、イベント終了時点で最終ポイントランキングは4位。スコアは78,000ポイントほどで3位とは140,000ポイント届かずフィニッシュ。1位〜3位は200,000〜300,000ポイント台のスコアを出しており、圧倒的に差をつけられての4位となった。今回のイベントでは1位にモデル掲載が確約される他に、2〜5位の中から選ばれた1人も特別賞という形でモデル掲載される。一応その特別賞圏内にはいることができたわけだが、やはり上位3人のポイントが圧倒的なことを考えると2位か3位の方が選ばれるのではないだろうか(ポイントをそのまま求心力の大きさと捉えるならば、だが)。
 ※追記(2022/9/3):特別賞は5位の方が選ばれました。

 今思えば、なんとも自分らしい結果だ。僕は今まで、なにかにつけてこういうポジションに収まることが多かったように感じる。

 中学2年生の時、吹奏楽部のパーカッションの先輩と喧嘩になり、そのまま吹奏楽部を退部した。
 その後、小学生の頃にフットサル教室に通っていたこともあり、同級生に1年半の遅れをとってサッカー部に入部した。フットサルに比べてコートも広く、人数も増え、戦い方も別物のサッカーを中2の7月に初めて体験した。そんな僕にレギュラーなど勝ち取れるわけもなく、最終的には2軍のスタメン、1軍の3試合に1回くらい出場するベンチメンバーに収まって引退した。運動神経が並レベルなことや、遅れを取り戻すための努力が今思えば不足していたこと、それまでに培ってきたサッカーIQの不足など要因は様々あるが、この頃からトップには届かず、かといって下に沈むでもなく、なんとも言えない立ち位置につく人生が始まった気がする。
 ちなみに、その中学3年間で好きになった女の子が2人いたが、その2人はどちらも僕が恋愛相談をしていた友達の方を好きになり、結局は彼らと付き合った。僕がフラれた理由は、僕が彼女らにとって『2番手だったから』である。

 高校は男女比が2:8で女子の方が多かった。それゆえに男子の結束は固く、仲間意識が非常に高かった。そんな男子たちのなかでも、僕の立ち位置はなんとも言えない微妙なものだった。いつも男子の溜まり場に顔を出して一緒に笑い合いながら、もっと小数のグループになると、そこに僕の居場所はあまりなかった。学校外での3〜4人での遊びに誘われることも少なく、まさにみんなにとっての『サブメンバー』と言った感じだったのだ。
 部活はジャズ部(吹奏楽部のジャズ版と思ってもらって構わない)と男子バレーボール部に入っていたが、ジャズ部ではドラムの2番手。男子バレーボール部ではポイントゲッターのレフトやセンターでも、セッターでもリベロでもなく、あまり活躍することのないセッター対角のライトだった。もちろん他の部員に比べて実力がなかったのも事実である。というかそれが全てである。

 そして今回のミクチャのイベント。まさに『そんな人生』を象徴する結果になった。数字で見せられると、そんな現実をまざまざと見せつけられている気になる。
悔しい。素直に今思うことといえばそれに尽きるかもしれない。イベントの結果以上に、これまでそうやって生きてきた自分への不甲斐なさが悔しい。

「これは本当に自分のやりたいことなのか?」
「今僕は、楽しんでるフリをしてるんじゃないのか?」
「自分を正当化しようとして、目の前のことにモチベーションがあるつもりになっているだけじゃないのか?」
 そうやって、批判的なもう一人の自分を頭の中に作り出しては、見えないふりをしてきた。

 そんな僕は今、俳優の道を志している。
 集団の中で突き抜けるでもなく、沈むでもなく、定着するでもなく、どっちつかずに生きてきた人生の中で。自分の意志で決めてきた行動や、自分の本心にすら懐疑的に生きてきた人生の中で、今間違いなく俳優になりたいのだ。
 結局、2番手やサブメンバーのまま終わるかもしれない。それでも初めて、批判的なアイツがどこにも見当たらないのだ。その不在を今、強く実感している。

 イベントが終わるとともに、獲得したポイントは跡形もなく消え去り、配信者としての自分もいなくなった。
 正直乗り気じゃなかったライブ配信を嫌々始めて2週間が経った今、配信をして良かったと、ほんの少しだけ思う。
 毎日配信をしたその時間が、配信をしないと出逢えなかった人たちが、3位との圧倒的大差で4位に終わったその現実が、僕の見据える未来を改めて明確に示してくれた。皆さんのくれた78,000ポイントとたくさんのコメント、そして41時間の総配信時間は、僕を前に向かせるには十分だったようだ。

 長文になった久々のエッセイの最後に、2週間応援してくれた方々への多大なる感謝を述べさせていただきたい。

 本当にありがとうございました。次は、スマホよりももっと大きな画面で、僕の部屋よりももっと大きな空間でお会いしましょう。それでは。

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