背伸びするためのnote

 SNSがあまり得意ではない。

 高校生の頃はTwitterで本当にどうでもいいことを比較的頻繁に呟いていたし、Instagramのストーリーもまあまあ更新していたが、よくやっていたなと今となっては思う。当時のアカウントはフォロワーのほとんどが高校の先輩後輩同級生だったし、その内容も彼らが見ている前提のものだった。投稿する動機の中には高校生特有のノリやテンション、そして見栄なんかが多分に含まれていて、SNSというのは学校というコミュニティの再現であり、裏世界だった。

 高校を卒業し、同級生たちは別々のコミュニティへ散らばってそこで出会った人たちと共有する目的でSNSを使うようになり、ストーリーズには知らない人間の顔が出現する回数がどんどん増えていった。アカウントを作り替える人もいた。
もともと後輩との繋がりも少なく、正直在学中も顔と名前が一致していない人が多かったので、卒業後の後輩たちのストーリーズを見ても「知らない人たちだなあ」としか思わなかった。それと、外側から見る学校というコミュニティに全く興味が持てなかった。学校内で起こっていることは結局当事者が一番楽しくて、外からみるとそれは心底どうでもよくて、青春は当事者だけのものだった。

 そんなこんなでSNSを見る頻度や更新する回数は年々右肩下がりになっていく。見るのもいちいち発信するのも、めんどくさいと感じてしまうようにまでなった。
高校の友人と久しぶりに会うと、他の同級生たちがどこ大学の何科だとか、今何をしているのかとか、この前あいつとあいつが飲みにいってたとか、割と知っていてビビる。インスタを見ていればわかるそうだ。そういえばここ1年くらい、ストーリーズを最後まで見切ったことも、タイムラインを3回以上スクロールしたこともないかもしれない。

 去年の4月に、新しくTwitterとInstagramのアカウントを作った。6月に出演した初舞台のオーディションの募集要項に「合格後、宣伝活動に協力していただける方」ということが書かれていたからそのために作ったのだが、やはりどうも頻繁に使用する気にはなれなかった。
 8月には配信活動もした。それもオーディションのためだった。オーディション期間が終わって、そこからライブ配信を続けていく気にもなれなかった。

 どうも、それではだめみたいだ。

 11月に出演した舞台で、僕はお客さんを10人しか呼ぶことができなかった。
稽古も本番もとても充実した期間を過ごし、俳優として成長できたと思った舞台だった。でも、10人しか呼べなかった。

 終演後、毎回Twitterで感想を探しても、僕の名前はそこにはなかった。

 もっと見て欲しかったし、批評して欲しかった。
いい演技ができたと思っても、回ごとにある僕のアドリブシーンがウケてもウケなくても、結局はお客さんの心に残れなかった。
少しリアルなことを言えば、お金も稼げなかった。

 ファンが増えれば、注目度が上がれば、そこで初めて今回の演技は良かった悪かったと批評してもらえる。そこでやっと他の俳優たちとの戦いの舞台に上がれるわけで。評価の面でもお金の面でも、僕は戦場にたどり着くことすらできていなくて。

 注目されるために、誰かに見つけてもらえるように、背伸びをする必要がある。

 もちろん舞台などの作品に出ている時は、見に来てくださったお客さんが僕のお芝居を見て僕のファンになってくれたらそりゃもう最高で。じゃあ出ていない間にどうやってファンを増やすかと言えば、今の時代SNSなんだそうだ。
芸能プロダクションの面接、プロデューサーさんとの会話、オーディション。僕が今まで行ってきたこれらの場で、SNSについての話題がなかったことはなかった。フォロワー数が、いいね数が、RT率が人気度を測る指標になっていて、みんなSNSはやったほうがいいと僕に言ってきた。

 だから、noteの定期更新と月末のライブ配信をすることに決めた。

 Twitterに毎日自撮りをあげたりTikTokで流行りのダンスを踊ることは自分のなりたい姿とかけ離れすぎているし、やりたいことや得意なこととの親和性がなさすぎる。それで僕のことを知ってもらえても、きっとそのニーズには応えられないから、ぼくのやってて楽しいことをSNSと結びつける。
 去年にやっていたライブ配信オーディションの期間、僕がもっとも楽しいと思った瞬間は終わり際、見にきてくれた人にありがとうと伝える瞬間だった。僕はインフルエンサーやライバーではなくあくまで俳優で、応援してもらう側とファンとの距離感はとても大事にしていきたいと考えている。だから月に1回だけ、ありがとうを伝えてすこしおしゃべりをして、告知をするための配信をする。
 そして僕は文章を書くのが好きだ。だからnoteを月に2回は更新する。それに伴ってなら、SNSも動かせる。
 得意ではないSNSを、得意なことで引っ張ってみる。

 僕のこのnoteで、1人でも僕の存在を知ってもらえたらなあ。背伸びしたかいがあるんだけどなあ。足が攣る前に、売れるといいな。

(2023年1月25日)

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