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秋思、ふたりの世界

昨日の金曜午後5時半頃、
末広町から地下鉄銀座線で
夜の席へと日本橋に向かいました。

車中、僕が座った真向かいに、
80歳近いと思われる白髪のカップル。
僕から見て左手に眠そうなおじいさん、
その隣には、すやすや眠るおばさん。

夫婦水入らず浅草巡りの帰りかな、
と勝手に拝察。よく見ると、
おじいさんの身体が
小刻みに揺れているのです。
電車の揺れとは違う波動でした。

あれっと思い、
おじいさんの膝当たりを見ると
おじいさんは、おばさんの右手の中指を
さすっているのです。
ふたりは手を繋いでいる格好。
彼は左手で彼女の右手を握り、
右手で彼女の指の関節痛を
ほぐすように、心を込めて、
丁寧に撫でているのです。

どこか羨ましくなりました。
このおじいさんは男らしいなぁ、
優しくて、立派だなぁと。

夫婦なのか、訳有なのか、
そんなことはどうあれ、
白髪のふたりが、11月の金曜の東京、
銀座線の中で気を交わし合っている。
おばさんは気持ち良さそうに、すやすや。
完全なるふたりの世界。

まるでタイムトリップして
時代が60年戻り、学生服のカップルが
デートの帰り道、電車に揺られ
身を寄せ合い、疲れて寝ているようで。
それから60年経った今でも
ふたりの仲は深まりこそすれ、
褪せることがないようで。

映画やドラマの観過ぎで
妄想巡りが僕の悪い癖。
この奥さんは実は持病があり、
旦那さんが彼女を励ますため、
浅草寺巡りのデートに連れ出し
その帰路、ふたりの思い出のひとコマ
などと勝手に考えてしまうのでした。

いずれにしても、
ものすごく美しい光景を
見させて頂いたようで。

金曜の夜、ふたりのラブストーリーを
勝手に堪能してしまったのでした。

おふたりは、素晴らしい人生を
手に入れられたと。そして、
これからの健やかなる日々を
祈念せずにはいられないのでした。

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