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涙のわけ。秋思かな。

1977年。乙女心あふれ、涙止まらず。
そして名曲が生まれ、歌謡史に刻まれた。

幾多もの哀感あるメロディを紡ぎ出した三木たかし。守備範囲が圧倒的な作詞家、昭和歌謡の巨人阿久悠。
1977年の岩崎宏美「思秋期」は、そんなヒットメーカーたちによる秋歌。

♪「足音もなく行き過ぎた
季節をひとつ見送って
はらはら涙溢れる私、十八
無口だけれど温かい
心を持ったあの人の
別れの言葉抱きしめ、
やがて十九に」♫

岩崎宏美「思秋期」

レコーディングの際、岩崎宏美はこの歌詞と自分の感情が重なり、涙が溢れ、何度も中断したと、阿久悠の著書「夢を食った男たち」(文春文庫)にある。
阿久先生は何故少女の心が分かるのだろう、と岩崎宏美は不思議がったと何かで読んだ。

♫「心揺れる秋になって
涙もろい私
青春はこわれもの
愛しても傷つき」
青春は忘れ物
過ぎてから気がつく」♪

岩崎宏美「思秋期」

この歌で岩崎宏美は、日本レコード大賞歌唱賞を受賞。
それ以上に岩崎宏美にとっての幸福は、高校を卒業した秋にこの曲と出会い、創作の世界で、感情が止まらず、涙溢れて、何度も録画し直したことだろう。
制作スタッフにはお疲れさまと思うがこういう経験が出来た岩崎宏美は本当に幸せなシンガーだと思う。人生の瞬間だ。

♫「誰も彼も通り過ぎて
二度とここに来ない
青春はこわれもの
愛しても傷つき」
青春は忘れ物
過ぎてから気がつく」♪

岩崎宏美「思秋期」

僕らは仕事でそんな想いを
生涯何度経験出来るだろう。
答えは自分の中にある。
そして阿久悠の性別を越えた、
人の涙への熱い眼差しに脱帽。

我、あれこれ想う。
深まりゆく朝空に、秋思かな。

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