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白いスニーカーの理由

先週、平日の午前5時過ぎの、
横浜へ向かう電車の中で
何気なく発見したこと。
僕の真向かいに座る8人のうち、
6人がスマホに没頭、
5人が白いスニーカーを履いている。
前者はさして驚きはないが、
後者は偶然とはいえ、不思議な感覚。

6足ともに同じスニーカーではない。
メーカーは同じものもあるだろうが
どれもどこか形が違う。
共通点は、どこか眩しい白。

わが視線を上にもっていく。
靴の持ち主の方々は、
推定30代〜60代、様々な男女
どなたもジーンズやスカートで
ラフな服装。その他の共通項はなし。

今、何故、白のスニーカーなのか。
僕は読んでいる本はそっちのけで、
様々に思考を巡らし始めた。

梅雨入りと感染者数が減少傾向のなか、
スニーカーは気軽に履けし、白は爽やか、
心機一転の気分か。
あるいはメーカー側の心理誘導で、
何かしらの販売促進策が奏功しているのか。

でも、もしかしたら、
白いスニーカーのブームは
今に始まったことではなく、
何年も、何十年も前から流行っていて、
電車の中で読書三昧ゆえに
周囲が全く視界に入っていなかった僕の
全く間抜けな発見なのか。

何でも物事には「理由」がある。
勿論、言葉では表しきれない自然現象もある。
でも、白いスニーカーは???

まあ、良いではないか…
僕の思考は、ピタリと止まった。
白は、なんの遠慮もいらない色。
自由な色、爽やかに無になれる。
雨季に入り、スニーカーは、楽ちんだ。
それで良いではないか。
シンプルで快適、すこぶる上機嫌の靴。
僕のなかで、決着した。

その日の午後、東京のオフィス。
僕はフロア中央のコピー機の前にいた。
かつての同僚で、今は別部署で働く人が、
近づいてきた。
黒いワンピースに黒いスカート姿、
足元の白いスニーカーが眩しい。
こちらにゆっくり向かってくる。

何か言われる前に僕は訊いた
「何で、今、白いスニーカーなの?」

きょとんとして彼女は
「別に…、何となくね、えへっ。」
と微笑んだ。
僕が何故そんな質問をしたのか、
その「理由」を知りたい表情に。
そして僕を横切って行った。

心に白いスニーカー、軽やかに。

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