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この季節の色〜手帳の佇まい(16)
頼り甲斐のある、どっしりした人。
昭和の刑事のようなこわもて、
でも朗らかな優しい表情も、
仁義もある人だった。
3年間僕とコンビで仕事をした彼は
4年前、異動していった。
3年という短い季節で
終わるはずではなかったが
結局、上司である僕が守れず
彼は去るに至ったのだ。
異動。
別れと出会い。
今年もこの時期を迎え、
街の景色だけでなく
職場の風景も、色合いが変わる。
そういう意味では、
別れと出会いは桜色。
もう何年こんなふうに
過ごしてきただろう。
この季節になると、
あの刑事のような彼と
一冊の手帳が僕の心をよぎる。
この手帳、fILOFAXのCROSS。
チョコレート色のタフネス。
2010年から僕の
マンスリーカレンダー専用の一冊。
![](https://assets.st-note.com/img/1648849919559-I6sjaXmaJ5.jpg?width=1200)
ASHFORD製のリフィル。
何月かひと目で判るよう
INDEXが鮮やかで
白と淡いブルーが目に優しい。
この11年の1日ごとのスケジュールが
縦横約2.5センチの枠に書き込まれている。
雑な走り書きの単語を見るだけで
様々な一期一会が蘇る。
![](https://assets.st-note.com/img/1648849947939-OnY9wJGFE6.jpg?width=1200)
僕は四半世紀、異動を経験してない。
人を見送り、迎えるばかり。
人の背中を見るのに、慣れはこない。
切なく濃厚な思い出、
彼、彼女の横顔は単一ではない。
楽しかった思い出も、無力感と後悔も
全てないまぜになる。
冬を見送り、桜色。
巷では、溌剌とした芽吹きの季節。
僕にとっては焦げ茶色。
少しビターなチョコレートブラウン。
顧みて反省し、
手帳の中の彼へとささやく。
「ありがとう」。
![](https://assets.st-note.com/img/1648849977724-G67g5Xpv8W.jpg?width=1200)
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