冒険王へ、喝采。

北京五輪が活況です。
アスリートたちの活躍に歓喜し、
メダルに届かずとも、その勇姿に
心からの拍手を贈りたいです。

なかには、予期せぬ事態となり、
不甲斐ない結果で失望する選手もいます。
団体戦となれば自分一人のせいで、
国旗を揚げることができない
という結果もありえます。

スキージャンプの団体戦で
スーツの規定違反となった
高梨沙羅選手は、自分のせいで
他の選手の「人生を変えてしまった」
と猛省されていると、報道にありました。
 
高倉健さん主演の映画「駅STATION」
(1981年降旗康男監督、倉本聰脚本)で、
健さん演じる三上英次は北海道警の刑事で、
1968(昭和43)年に次期五輪の射撃選手に
選出されます。
ある雪の日、先輩刑事が追跡中の犯人に
射殺され、三上は先輩の弔いに、
どうしても自分の手で犯人を逮捕したい
と上司に願い出ます。
しかし、五輪選手として国民の期待が
かかっているから練習に専念しろと、
上司から強い指示を受けるのでした。

その先輩は元五輪射撃の選手でした。

三上が五輪への練習と仕事で        家族を失ったことを知っており、          三上の諸々の相談を聞いてくれる人でした。
 
苦悩する三上。葛藤は続きます。
敗戦からの復興の象徴として、
1964年の東京五輪で盛り上がった日本は、
次の五輪でもプレゼンスを高めようと
選手たちに大きな期待を寄せていた頃です。
アスリートという言葉のなかった時代。
五輪の金メダルは、現代以上に
名誉と栄光のシンボルであり、
選手にとっての重圧は想像を絶します。
 
今も五輪のメダリストは
後世に語り継がれます。
国を背負っての訓練の日々や、
その気の消耗度合いは途方もありません。
 
でも、時代は移ろっています。
個人の在り方、有り様も多様化。
自分のための、それぞれの人生です。
 
五輪に出場しただけでも、
素晴らしい、凄い記録だと言えます。
「オリンピアン」の称号が得られ、
僕からすれば、アスリート全員が
「冒険王」です。

失意のなか2回目のジャンプを
飛び終えた高梨選手の、あの涙は尊く、
あの姿で、選手の皆さんが
どんな思いで挑んでいるかを、
改めて考えた方も多いはず。
彼女はかけがえのない精神の持ち主。
 
今回のフィギュアスケートで
銀盤上の穴という悲運に遇った
羽生結弦選手は表しました。
「報われない努力だったかもしれない」。
しかし、ファンのために
4回転半に挑んだ彼は「冒険王」として、
世界中から「勇者」の記憶が刻まれます。
ある意味、金色以上の鮮明な記憶。
ソチ五輪のフリーの演技で、
前日の絶望から不死鳥に如く蘇った
浅田真央さんのように。
 
この絶望がいつの日か
輝くときが必ずくる。
過去の出来事は消せないが、
過去の意味を変えることは、できる。
今とこれからをどう生きていくか。
あの出来事があったからこそ、
今があるといえるように。
僕はそう信じています。
 
だから冒険王へ、喝采。

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