秋と灰と朱

秋は空が曇っているほうがいい

黒や紺の外套に身を包んで俯く

湿気と熱気で蒸す車内
ガラスには白い水滴の膜

定まらない焦点
ぼやけた世界が走り去っていく

流れる景色、目につく朱
灰色の中、映えているあの木
枝の先まで憤るその血潮に嫉妬する

空と私の境目は曖昧だ
靄に包まれた秋の末。

燃えているあの葉だけは輪郭を保ち、
強く、美しい。

深く瞳の奥に逃げる残像を追いかけて

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