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着こなしとジェンダーについて/S&S OPEN TALK #62

四国にあるセレクトショップ SLOW&STEADY ではオープン直後から、お客様からの相談窓口として、LINE@を利用しています。

その内容は、商品在庫の確認から始まり、商品ご購入後のアフターケアに至るまで多種多様です。しかしそんな中「これは多くの方も同じお悩みをお持ちのはず」と感じるご質問も少なくありません。さらにそういったものほど短文では返しづらいのが正直なところ。
そこでこのnoteにて「マガジン」という形で回答させていただくことで、そんな魅力的なご質問の数々をピックアップさせていただければと思います。
名付けて『OPEN TALK』今回はこんなメッセージです。

✉️

私は普段メンズの服を着ているのですが、友人らから「Kが着てると女の子っぽくみえる」や「その服かわいいな」とよく言われます。
自分としては男っぽいと思って着ています。友人にとっての男らしさ、女らしさなどがどんなものなのかとても気になっています。
そこで質問なのですが、ファッションにおける男らしさ、女らしさとはどうお考えですか?

taku/24歳/男性

※今週は、毎週土曜配信の当店PODCASTと連動し、こちらでも同じ質問に対して文章にてお答えしようと思います。

結論から言いますと、男らしさ(女らしさ)を着こなしで表現するのは可能。
例えばシャツのボタンを一番上まで止めると上品さや賢さを感じさせますが、一つ二つ開ければラフで男っぽい印象になりますし、鎖骨や手首などを効果的に見せても同様の効果を得られたりします。

男性で体の線が細い方なら、ベストなどをうまく使い体のラインをある程度がっしり見せたりすると男性っぽさが演出できますし、女性で言えば体が男性に比べ丸みがあるため、その辺を効果的に見え隠れさせることで女性らしさの強弱が演出できますよね。

そうして組み合わせや着こなしである程度は調整できます。
ただ、それにも限界があって、これは自論ですが「男っぽさを洋服で表現できるのは、相手が自分に抱くイメージの4割程度」。
ここに女性の場合はメイクやネイルなどの装飾が加わるため、男性に比べ大幅に印象をコントロールしやすいのは皆がよく知るところです。

ここでひとつ、質問をします。

とある1人の男性がいるとします。彼の顔立ちは一見すると女性にしか見えないほど綺麗で、シルエットも細身ですらりとした出立ち。その彼はがっしりとした革ジャンに、ボロボロのジーンズを履いて、無骨なワークブーツを履いています。
さて、初見の印象はどうでしょうか?
…「男っぽい」と答える方は少ないのではないでしょうか。

何を言いたいかというと、どれだけ男っぽい着こなしを意識しても、印象のコントロールには限界があり、やはり顔立ちやシルエット、見た目のイメージなどで、相手は印象を持つということです。ではどうすればいいでしょうか?

その答えはただ一つ「自分が持って生まれたキャラクター(個性)を受け止めること」なんです。
ここ最近は特に「ジェンダーレス」「ジェンダーフリー」のような言葉も行き交うほどに多様性に寛容な社会が実現に向かっています。
そんな現代において、男性に生まれたから男っぽく着こなさないといけない、なんて考えはそもそも間違いで、人それぞれ持って生まれた「個性」を、性別などではなく、自分が「格好いい」あるいは「可愛い」または「素敵だな」と思える装いを求めればいいのではないかと思います。

歴史を振り返れば、政治と洋服は少なからずリンクします。
2015年に国連が制定したSDGsに「ジェンダー平等の世界」が掲げられていますが、男女格差をなくそうという動きは1980年代から加速し、そこから2015年までの35年で、少なくとも10個程度の新法案が制定、改正されています。
ちなみに日本のジェンダーギャップ指数はまだまだ他の国に比べあらゆる点で大きく、諸外国から大きく遅れをとっています。

このジェンダーギャップ指数とは「経済、教育、保健、政治」などの分野ごとの男女格差を数値化したもの。日本はその指数が153カ国中、120位。先進国でもアジアでも、最下位です。

ではなぜ日本はここまで出遅れているのでしょうか?

日本は鎖国政策を長きにわたり行っていました。加えて島国ということもあり、独自の文化形成をする期間がとても長かった国。
だからこそ日本独自のあらゆる文化が形成されたわけですが、反面、凝り固まった古い習慣が払拭しずらいというデメリットもあります。つまり表層的な流行、ファッション、食文化などとは異なり、新しい価値観に対しての対応がとても鈍感なのです。
以下にジェンダー関連の書籍を多く執筆される大正大学心理社会学部の田中俊之さんの言葉を抜粋してご紹介します。 

子どもが転んだ時に「男の子だから泣かない」と言う親はいるでしょうし、娘がスカートのまま鉄棒でくるくる回っていたら「女の子なのにはしたない」とつい言ってしまう「男の子のように活動的であってはならない」というメッセージを発してしまっていることもある。それは親に限った話ではなく、保育園や幼稚園、小学校などでも多かれ少なかれ言われていることかもしれません。子どもたちは親や学校、友達など周囲を通して男らしさ、女らしさの観念を“常識”として「学んでいっている」

日本の国民的アニメ「サザエさん」
「サザエさん」ではいまだに、波平が「母さん、新聞」と言ったらフネが「はい、はい」と言って新聞を持ってくるんですね。それから、フネが自宅にいないとカツオも波平も何も用事がないのに、「母さんいないの?」となる。「主婦は常に家族のために体を空けて待機しているものだ」ということを描くわけです。「サザエさん」は昔からある原作を使っているので致し方がないと思う面もありますが、子どもが見る番組を通して「男はこう」「女はこう」というメッセージを受け取ってしまっている、ということはあると思います。

大正大学心理社会学部の田中俊之さんの記事より

この記事でもわかるように、ジェンダーレスという考え方について、僕ら日本人が大事にしてきたはずの「常識」が、これから大きく邪魔になってくるのかもしれません。

・・・

海外のデザイナーの多くも日本のマーケットを強く意識していることから、ファッションにおいて考えれば日本は後進国ではないことがわかります。
しかし、ことジェンダーフリージャンルの洋服においては、日本古来の考えが根強く、まだまだ抵抗を感じる方が多い印象です。

古きよき日本古来の文化や伝統はそのままに、考え方や価値観は時代に合わせてフレキシブルにできれば最高ですが、経験を積まれた高齢者が考え方を新しくシフトさせることの難しさは、僕も祖父母を見ればよくわかります。

だからこそ、ご質問者のような若い世代が、現代〜未来に合わせたハイブリッド型の価値観を持ち、世の中を大きく変えてほしいと強く願います。
それぞれが持って生まれた素晴らしい個性を最大限活かして、洋服をもっと自由に楽しんでください!
40歳の僕も、若い世代に負けず、精一杯協力します!

・・・

今週は、以上です。
ここでは、あくまで僕の答えられる範囲内にはなりますが、このマガジンを使って、皆様からお寄せいただく「洋服に関するご質問やお悩み」を、ざっくばらんにご紹介しております。
個別の商品に関するご質問ももちろん歓迎です。ご質問は、LINE@(http://slow-and-steady.com/news/lineat/)の他に、下記メッセージフォームより随時受けつけております。どうぞお気軽にご連絡ください。

PODCASTのご紹介
そして
この度、SLOW&STEADYではPODCASTを始めました!
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SLOW&STEADY PODCAST "Backyard To Closet"
【毎週土曜日20時更新】 とある町にある小さなセレクトショップSLOW&STEADYによるPODCAST。洋服の知識や歴史、本当に似合う洋服とは?といった、とにかく洋服にまつわるアレコレをお届けします。「聴いたあと、クローゼットの洋服たちが、今よりきっと好きになる」
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