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〈季節の短歌〉なみうつきもち 夏・札幌/石狩

春夏秋冬、それぞれ異なる街の風景を詠んだ連作短歌をお届けします。
季節と街に波打つ気持ちを、31音の響きに込めて。
(著者/人子一人)



写真:夕暮れの石狩灯台

「凪の灯台」収録短歌一覧

白楊樹(トーポリ)の綿毛に初夏の陽は注ぎ都会の庭に出づる白浜
水無月の翠(みどり)の海に浮いている黄色いブイのようなたんぽぽ
昼時のバスターミナルに腰掛けて浜行き便を待ってたあなた
潮風が葦原吹けば沿岸の風車もずらりぐるりと回る
釣り人の帽子は風に飛ばされてかもめの群れのなかへと消えた
潮が満ち持って帰ると駄々こねた魔法の杖を波は攫って
船影が夕日の奥に沈むとき浜茄子の実の青さに気づく
灯台に私の影は情けなく伸びて静かにもたれかかった


短歌・写真:人子一人(ひとこ・ひとり)
2000年、東京都生まれ。日本経済新聞、毎日新聞歌壇などに掲載。連作に「新宿海底」(SLOW WAVES issue01)、「遠泳」(SLOW WAVES issue02)。


SLOW WAVES 海の文芸誌
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初回アップ日:2024年7月24日(水)
責任編集:今枝孝之

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