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小名木川と高橋

スローリー余話
川と橋と美味しいもの#15

江東区を東西に流れ隅田川と旧中川を結ぶ「小名木川」。徳川家康が江戸入り後まもなく運河として開発。製塩地帯だった千葉の行徳から江戸までを水路で結び、当時は戦略物資であった塩の安定的な供給を目的に建設されたと言われています。江戸の街が発展するとともに食料や物資を運ぶ重要な運河となり人や物資の出入りを管理する舟番所も旧中川との合流地点に置かれていました。

乗船場もある「高橋」

両国と門前仲町を結ぶ清澄通りの「小名木川」に架かる「高橋」の歴史も古く家康の時代に造られ、葛飾北斎による浮世絵「たかはしのふじ」という作品も残っています。清澄通り森下の交差点近く暑い季節にこそ食べたい鍋『さくら鍋 みの家』があります。

特製熟成のさくら肉の下町鍋
麹の香味が引き立てる“令和の甘辛

森下
さくら鍋 みの家

滋味あふれるさくら鍋

今なお下町深川の風情を残す森下。旧き良き江戸の味と、庶民の粋に出逢える老舗が『桜なべ みの家』である。昭和29年に建てられたという木造家屋に年代物の銅板を用いた看板。艶やかな漆黒の光を帯びた店構えは、ここに降り積もった時の長さとともに、行き届いた手入れの良さを実感させる。当時は木場で働く職人や船人足が常連だったことから、値踏みされぬよう、全国から銘木を集め贅沢な造りを施した結果だ。度重なる修繕の際にも創業時の姿を頑なに追い求めたことで、この美しい郷愁へと客をいざなう空間が今日まで守られたのである。

さくら鍋と馬刺し

「この建物を維持しながら、さくら鍋の美味しさを深めたい」とご主人は言う。当代になってから割り下のお味噌を、これまで以上に麹の風味が引き立つ「江戸甘味噌」と希少な「八丁味噌」に変えて砂糖や味醂の甘さに頼らない穏やかな香味の甘辛になっている。建物が竣工した時代は近隣の肉体労働者が中心だった顧客層はスーツ姿のビジネスマンになり、現在は下町を散策する若い男女や女性同士の顧客も増えている。これも美味しさの進化の証明なのかもしれない。青森県の契約牧場で大切に育てられてきたお肉を、お店の冷蔵庫でじっくりと熟成され旨みを増す『みの家のさくら肉』。特製の割り下でいただくスタイルは創業以来変わらないが、時代や顧客とともにその美味しさは進化し続け、建物とともに『みの家の味わい』は日々深まっている。

座敷からのぞむ中庭

さくら鍋 みの家
〒135-0004 東京都江東区森下2-19-9
03-3631-8298
営業時間:平日12:00〜14:30(L.O13:50)、17:00~21:30(L.O.20:50)
土12:00〜14:30(L.O13:50)、16:00~21:30(L.O.20:50)
日・祝12:00~21:00(L.O.20:20)
定休日:火曜日