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3/11 早朝読書会 『旧約聖書 ヨブ記』11章レポ

読書会をやってみて

『ヨブ記』11章の読書会を7名でやりました。
今回読んだ11章はナアマ人ツォファルの弁論で、ヨブに対して「ぐちぐち言ってないで、罪を認めて反省しろ!反省すれば神様から許してもらえるから!」というようなことを語っていました。

読書会で、「友人たちは自分たちの中で一番信心深かく、真面目だったヨブが不幸になってしまったことによって、友人に不安が広がってしまった」という意見がありました。この意見にはなるほどと思い、今後『ヨブ記』を読む上での補助線になりました。
『ヨブ記』読む上で、ヨブ=善、友人たち=悪という図式に当てはめてしまうと、なにか読み誤ってしまう所があるとぼくは感じています。それは『ヨブ記』を読むということ以外でも、誰が善であり、誰が悪かという簡単な考え方に当てはめてしまうと、その人自身の背後にある複雑なものを消去し、単純な良い悪いの二項対立へと置き換わってしまいます。なので、一見自分の考えとは反する理解できない発言でも、なぜこの発言をしているのか、発言の背景はいかなるものか考えることにより、物事が単純なものから立体的なものに変化し、より思考が深まっていくようになります。
友人たちは「ヨブが不幸になった原因はヨブ自身にある」という主張を繰り返ししており、ヨブの立場になって考えるとこれを言われてしまったらつらいだろうな思い、ぼくは友人たちに対してあまり良い印象がありませんでした。しかし、ヨブの友人の立場になって考えてみると、ヨブの不幸は友人たちから見てもショックであり、友人たちが信じていた世界が崩壊の危機にさらされており、何とか崩壊を食い止めようとして、ヨブにたいして過剰な発言になってしまったのかな、と考えました。
以下の友人エリファズの発言からわかる通り、神への信仰という点で、不幸になる前のヨブはトップランナーであり、沢山の人を先導し勇気を与えていたことが伺えます。

まことに、あなたは多くの人を教導し、
数々の弱々しい手を強くしてきた。
あなたの言葉はよろめく者を起こし、
かがみ込む膝に力を与えてきた。

第4章 エリファズの弁論、第一回

まさかそんなヨブが不幸になってしまったのは友人としてもショックであったでしょう。不幸とは、神から突き付けられたNGです。ヨブから勇気をもらい、それを糧に生きてきた者たちにとって、ヨブの不幸は衝撃的だったと思います。友人たちは「もしかしたら、自分たちが信じて行ってきた伝統、習慣が間違えだった..?」とよぎり、不安が広がっていき、そして友人たちは信じていた世界が崩壊しないためにはどうすればよいか考えた結果、「ヨブがどこかで罪を犯したので不幸になっている」という発言につながっていると想像します。
この問題は非常に根深いと思いました。この視点ではもしかしたら友人たちに悪意はなく、むしろ善意としてヨブに対して助言をしている可能性があります。今回読んだツォファルの発言でも「ちゃんと罪を反省すれば救われる」とあるとおり、ヨブが不幸からいかに抜け出すことができるか、考えての発言のようにも解釈できます。友人たちの世界では罪を犯したものが不幸になるという、因果が支配しています。その世界の中でヨブをどう救うか、ヨブに降り掛かったマイナスをプラスに転じさせるためどうすればよいか。そこで自分の罪を反省するという発想が出たのだと思います。
ヨブ記はヨブが主人公ということもありヨブに感情移入しがちですが、友人の立場になった場合、本当にヨブの気持ちに寄り添えるか、難しいかも知れません。どうすれば自分のいる世界を乗り越え、ヨブに到ることができるか考えていきたいです。


ご参加いただいた方の感想

Mimiさん
ヨブ記の主人公がかかっている思い皮膚病。友達が早く治してあげたいと思い、このような不幸にあった原因を探そうとする。その友達の態度は哀れみよりも追及するようなので私はずっと反感を持っていました。
しかし、ふと友達もこの信心深いヨブがこのような不幸に陥る、おそらく前例の無い非常事態に相当不安だったのだろうと思いました。信じていた幸せが急に破壊される恐ろしさ、それがもしかしたら自分にも降りかかるかもしれない。確実な理由を見つけて、早く安心したいと私も思うだろうと思いました。
皮膚病、というとハンセン病が思い浮かびます。1980年代には完治する病気になったそうですが、かつて隔離され、人間としての権利を剥奪された悲しい歴史があります。ヨブ記が書かれた当時、医療も進んでいないし酷い皮膚病患者が差別される状況だったとしたら、ヨブの友達はヨブのために急いでいたのかもしれないとも思いました。焦ると、冷静になれないですね。

おおにしさん
読書会参加2回目で、ゆっくり本を読む会の良さが少しわかってきました。ヨブ記の各章は短いのですぐ読めてしまいますが、1章ずつ読んで立ち止まり、みなさんと感想を語りあうことで最初の印象がどんどん変化して、気づかなかったことが見えてきました。これは普通の読書会ではなかなか得られない体験です。11章では友人の助言を友人の立場で読み直すと見えて来るものがありました。次の章が楽しみです。

次回

土曜日と日曜日交互に開催致します。いずれも朝6:00〜7:00です。
興味を持った方はぜひご参加ください。

3/19 芥川龍之介『蜘蛛の糸』

3/25 『ヨブ記』12章

4/2 アラン『幸福論』「遠くを見よ」


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