四冊目 『ゴドーを待ちながら』サミュエル・ベケット 感想
笑いは人生を豊かにする。笑っている本人も、それを見ている他者も。
しかし反面、笑いは世界を無に返してしまう恐ろしい側面がある。この『ゴドーを待ちながら』は極限まで世界を無意味化する作品である。
終始、登場人物たちの会話が噛み合っていない。舞台にある一本の木に対して「喬木」か「灌木」か、渡した食べ物が人参か大根か蕪か、などなど殆どの部分で噛み合っていない。
普通の物語がある小説では、会話が成り立っているか、成り立っているようにみせている。登場人物同士の会話が伝わっていなければ