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つまるところ2019年

2019年が終わる。
振り返ってみると今年はわりにクリエイティブだった。なんだか久しぶりなことをたくさんやれたような気がする。

◇作ったもの

『Northern Mystica』

高校同期のシンガーソングライター、クロコちゃんとの共同制作(とは言わないまでも)により1枚のミニアルバムが完成した。これはクロコちゃんの記念すべきファーストアルバムでもある。
わたしはこのアルバムに寄せて「birthday」という歌詞を書いた。

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わたしの過去の作品たち、そしてわたしとクロコちゃん、このふたりの個人、かつて高校生だったふたりの少女が共有したものしなかったもの、今に至るまでのわたしと彼女の関係性すべてが、このアルバムにまとめられたらいいなと思っている。
Boothにて絶賛販売中なので、彼女のピアノを必要とする人、ひとりでも多くの然るべき人に届いてくれたらいいなと思う。

https://chroco.booth.pm/

わたしの2019年制作活動はまず「birthday」から始まり、6月のCDリリースまで何かしら発表していた。思いつきでwebラジオを収録してみたりして、結構楽しかった。

『一人で生きても誰かと生きてもしんどいときはしんどいし楽しいときは楽しい』

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みなもとはなえさんとの合同誌を9月の文学フリマ大阪で発表した。
この本の制作も2018年秋から話だけは持ち上がっていて、1年の時間をかけて発行することができた。
歌詞「birthday」を書き上げたあとに取りかかったのがこの本に収録する小説「ファイン・ファイン・ファイン!」だった。日本語の通じないクソ上司と人の悪口しか言わない肥満の同僚に挟まれきが狂いそうになりながら仕事に忙殺され、過去の理想と現実のギャップにめたくそにキレ散らかすOLの話に3万字も使ってしまった。
はなえさんとは思い返せば2014年から、つまり5年に亘り関係が続いている仲であるので、こうして一緒に本を出すところまで来たというのは感慨深いし、素直に、嬉しいことだったな〜と思う。
次の頒布予定はおそらく春の、名古屋コミティアあたりかと思うので、何か動きがあればおしらせします。


その他、瀬野ひとみさんが企画された平成生まれの人による平成を振り返る日記集『平成のある日とある日』に参加させていただいた。

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平成最後の4月30日と、大学時代に下宿していた部屋が水没した日のことを書いた。
瀬野さんのBASEで通販もされているとのことなので、ご興味があったらよろしくお願いします。


卒論を公開した

大学時代の学部卒業論文を公開した(もったいないから)
7月〜10月くらいの3ヶ月で週1連載のようなことができて、生活にリズムができてよかったなと思う。
わたしの2012年オーストリア留学時に観たオペラ『エレクトラ』についての演出について考えた論文です。実名名義ですが、興味ある方は読んでみてください。


◆映画と本

今年読んだのはだいたい60冊くらい。その中でもよく覚えている本たち。

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・夏物語 / 川上未映子
・アタラクシア / 金原ひとみ
・どこまでも亀 / ジョン・グリーン
・最初の悪い男 / ミランダ・ジュライ
・凍 / トーマス・ベルンハルト
・カリギュラ / アルベール・カミュ
・シーシュポスの神話 / アルベール・カミュ
・私たちにはことばが必要だ / イ・ミンギョン
・ダイエット幻想 / 磯野真穂

一冊あたりにいちばん体力を使ったのはベルンハルト『凍』だった。これは感想を書くのも難しい。冬の間ずっとこれを読んでいたような気がする。

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今年観た映画はだいたい85本くらい。厳選の10本がこちら。

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1. GODZILLA: King of the Monsters
2. WEEKEND
3. Beautiful Boy
4. Once Upon a Time in Hollywood
5. わたしは光をにぎっている
6. Marriage Story
7. FIRST MAN
8. THE FAVOURITE
9. バーニング 劇場版
10. Us

人間の叡智や文化、愛、など、人間を人間たらしめ尊ばれてきた営みを1位で全て破壊し尽くすという狂気のランキングになってしまった。


◇カリギュラとカミュ

菅田将暉主演の舞台『カリギュラ』の神戸公演に当選したのをきっかけに夏から冬にかけてカミュ著作を読みまくった。ほとんど筋トレみたいな読書の毎日だった。
『カリギュラ』周辺では主に戯曲『カリギュラ』『シーシュポスの神話』そして雑誌『悲劇喜劇』カミュ特集の3冊で臨んだ。

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観劇後のテンションで書いた感想と頭を冷やしてから落ち着いて考えてまとめた考察(もどき)でこの2019『カリギュラ』についてはすべて書ききったので、こちらを読んでほしい。

頭を使うとビタミンBを消費するとどこかで聞いたことがあったけれど、観劇から一週間足らずで脳のエンジンを全開にして寝食とにかく身の回り全てを雑に扱って考察を書き上げたらその翌日には一発で口角炎を起こしたので、頭を使いたい時こそ食べて寝るのが大事。
正直カリギュラ考察前後編については演出分析にもなるので実名名義noteの方で公開するのもありかもしれないと思ったけれど、あまり資料も時間も使っていない荒削りな考察なので、気軽にこっちで公開することにした。


◆アルキメデスの大戦と菅田将暉

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夏の間に『アルキメデスの大戦』にドハマりしてしまい、夏の記憶がアルキメデスか菅田将暉しかない。夏はアルキメデスに使い果たしたと言ってもいい。
泥臭く手と足を使って働く天才というキャラクターについ惹かれる。しかもその天才がやがて大きな組織の圧力や思想に飲み込まれていくという図というのはもうたまらなく趣味に突き刺さる。
夏から何かにつけて櫂少佐のことを考えている。今年わたしの心を最も狂わせたボーイ堂々の第1位、櫂直ならびに菅田将暉。2時間という映画の時間の中で滅んでいく君は何よりも美しかった。

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菅田将暉、豪華なブックレット付きのアルバムを買って毎日聴きまくって全国ツアー(大阪)の抽選にも全部応募したのに全部落ちてしまった。絶対当たる気でいたわたしの自信は一体どこから来ていたのだろう。

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それでもライブDVD+Blu-ray(限定盤)はしっかりと買うのであった。


◇リベンジ?

2018年末の日記を読み返したら、2019年のスローガンは「Living well is the best Revenge」だったらしい。
すっかり忘れていた。
この1年は誰かへのリベンジではなかった。仕事をして、作るものを作って映画を観て本を読んで気が付いたらいつものパターン、2020年を目前にしてのこのまとめがある。
だけど不当に、というか、悪意を持って人を傷つけてくる人間はその攻撃がすべて結局のところ自分に跳ね返ってくるものだし、わたしの言動もまた、良きものも悪しきものもそのうち自分に返ってくるものだと実感した1年だったと思う。
わたしは傷つきやすい人間だが、投げつけられた悪意を許さないだけの権利はあると信じている。


◆30歳になる

上記、『カリギュラ』考察で、カリギュラ王が29歳だったことに触れて、29歳とは「世界や神々に対して命がけで反抗できる、最後の年齢」だと書いた。
2020年で、わたしは30歳になる。29歳にしてすでに神への反抗心というクソデカな感情は重すぎて持てなくなってしまったが、それでもこれからさらに、わたしは「正気に戻っていく」のだと思う。
20代というのも10年過ごせば流石にもういいわ、みたいな、20代へのこだわりは特にないのだけど、それでも20代が終わる。
正直、20代はどこを切り取っても大変だった、しんどかった。30代がもっと楽になるのなら、わたしは早く30代になりたい。

20代の間、あまり恋愛をしなかった。もちろん結婚も妊娠も出産もしなかった。そのことに何も思わないわけではない。そのことは、確実にわたしのコンプレックスだった。でも別の領域で、多分幸せだった。来年のスローガンはまだ考えていないけれど、ただひたすらに、より善い人になりたいと思う。本を読み知識を得て、映画や演劇、音楽で自分が持たない人の感性に触れ、自分の言葉で考えて、たくさん考えて、生きていきたいと強く思う。
善い人になりたい。誰に押し付けなくてもいい、誰に還元されなくてもいい、誰にわかってもらわなくてもいい、ただ自分の尺度で、2020年の暮れに「少しはましな人間になったな」と思えるような1年にしたい。
わたしは、30歳になる。

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心の推しだって30代を迎えたんだから怖いものなんて何もないよね。

読んでくださってありがとうございます。いただいたお気持ちは生きるための材料に充てて大事に使います。