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なぜ鹿を捕まえるの?【有害鳥獣駆除】

私はジビエレザーで革小物を作っています。
isatoという名前のショップを始めました。

isatoの商品は、害獣として駆除されたケモノの革でできています。

今日は、山のケモノをつかまえてジビエレザー小物を作る理由をお話しします。


有害鳥獣駆除って?

農作物の被害を防ぐため、地域の獣害対策チームが活動しています。
対策チームが捕獲するのは、主に鹿や猪です。

増えすぎた野生動物が、畑を荒らしてしまう。
それを防ぐために、個体数を減らす。
それが、有害鳥獣駆除という取り組みです。


鹿を”害獣”とよぶ違和感

いきなり「害獣駆除」と言われると、違和感がある人も少なくないでしょう。

鹿は、人の文化となじんでいて、平和なイメージの動物です。
奈良公園の芝生の上で、のんびりとひなたぼっこする鹿。
厳島神社の境内を、連れ立って歩いていく鹿。

臆病な性格で、人に危害を加えることもありません。
それなのに、「害獣」として扱われていることに疑問を感じるのは自然なことです。

私自身、里山に興味を持つまでは
農作物への食害がどれくらいあるかなんて全く知りませんでした。
職場では、電車や自動車で鹿とぶつかったという話題はたまにあって、
「やっぱりここ田舎だね〜」と、ちょっとした笑い話でした。

農作物の深刻な獣害

「鹿は害獣だ、だから駆除する」という言い方は、乱暴かもしれませんね。
ただ、農作物を無事に収穫するにあたって、獣害は深刻な問題です。

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全国の鹿は、1989~2017年の29年間で 約9倍に増加しました。
2018年時点の推定生息数は、244万頭です。


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農作物の被害額は158億円を超えています。
私の住んでいる滋賀県の被害額だけでも、およそ1.1億円です。

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タネを撒いて水をやり、丹念に育てた作物を、無事に収穫して届ける。
途中で畑を荒らされると、それができなくなってしまいます。
獣害対策は、食卓に野菜を届けるための取り組みの一つです。

山林にも被害がある

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鹿は、ほとんどの植物を食べます。山に生えている植物が食べ尽くされ、ハゲ山になってしまうことも。全国で5000haもの山林が食害にあっています。

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鹿は、樹木の表皮をかじります。ネットを張ったり、音を出したりして鹿除けをしますが、根本的な解決にはなりません。

鹿の食害が増えた背景 鹿の性質編

強い繁殖力
鹿の妊娠率は80%以上。1〜2歳から毎年1頭、10年以上子供を生み続けます。

なんでも食べられるタフな性質
食糧危機になりにくいため、個体数が増えても生き延びられます。ただし好き嫌いはあります。

鹿の食害が増えた背景 人間活動の影響編

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経済成長にともなって、人工林が急増
戦後、燃料や建材として、成長の早いスギやヒノキの需要が高まりました。
鹿は本来、スギやヒノキを食べません。広葉樹の実や、柔らかめの草が好みです。近くに畑があるなら、そっちの方が好みです。

人口が都市部へ流出。
農業を離れる人が増えたため、耕作放棄地も増えました。収穫されない果実が鹿をおびき寄せ、畑だった場所が餌場になってしまいます。

天敵・オオカミの絶滅。
人間にとっても天敵だったオオカミ。
明治時代の駆除政策をはじめ、各地で乱獲され、姿を消しました。
天敵不在の環境では、個体数が調整されません。

様々な要因が重なって、鹿の大発生につながっています。

「食害で困っている」とは言っても、おおもとにあるのは「人間の都合」ですよね。複雑なところです。

小さな循環の中を見る

育てた作物を無事に収穫するための獣害対策も、
見方によっては「人間のエゴ」なのかもしれません。

ただ、ひとつの命をいただくということを軽く考えているわけではありません。むしろ、ケモノと対峙して止めをさす本人こそ、仕留めた相手を誠実に扱いたいと考えています。

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肉は獣害対策メンバーで山分けして食べます。一方、皮は扱いにくいため、多くの場合、埋めるか焼却しています。

人間の都合で、命を刈り取られるケモノたち。その体をせめて目一杯活用したいと思い、鹿革の小物づくりをはじめました。

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「人間vs自然」という構図で考えると、答えは出せません。
でも、一つの里山を共有する生き物同士、個体と個体の関係を結ぶことならできるんじゃないかと思います。

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革にさわるようになって、自分自身がゆくゆく土に還ることを想像するようになりました。大量に作って捨てる生活を離れ、小さな循環の中で生きるのは、たぶん気持ちがいいと思うんです。

活用できていなかった獣皮が革小物になって、誰かの手にさわってもらって、里山の循環のことがじんわり伝わったら嬉しいな。そういう思いで制作しています。

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