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【エルピス】最終話 感想(ネタバレ有)


【エルピス】最終話

最初に。
感想を書いた気でいて書いていなかったので
今さらながらつらつら残していきます。

ざっとまとめると。
やっぱりこの作品はよく見る
正義の逆転劇】ではないということだ。
そんな生易しい悪ではないんだよ、と
10話かけて伝えた物語だったんだと感じた。

正義は綺麗事でもある。
嘘をつく場合もある。
浅川や岸本は嘘を拒絶し
正しく生きていきたいと望む中で
白(岸本)と黒(斎藤や政界、警察)だけ
じゃなく、グレー(浅川や大門亨)もある
ことをここまで痛々しく見せつけた
作品はなかったと思う。

ことごとく失望し、絶望した岸本に対して放った

なんで殺されなきゃいけないのよ

という浅川の心の叫び。

正しく生きるなら、自分の仕事をするなら
怖いものなどないという浅川の元に
必ず現れるのが真っ黒に染まった斎藤。
やたら壮大な例え話を並べて、
まるで俺は正義の味方とでも言いたげな
一番タチの悪い人間。

負け惜しみのように
"お前の命なんて簡単に奪える"
と脅迫する始末。
この斎藤が日本には山ほど存在する。
そう思うとゾッとした。

必死に逃げる浅川を見て、
本当にテレビ局ってこうなのか?と思ったが、
このドラマが6年間門前払いされていたと考えれば
"あぁ、こういう世界か"と理解した

本城が結局どうなったかは不明。
松本が釈放されてハッピー?
うーん。あれ、なんだか
曖昧でボヤけたままの結末だな…
では、ない。

最後に本城が逮捕されても、
松本の冤罪が晴れようとも、
この世の中が変わることなんて
何もないんだということ。
本当の闇は消えない
むしろ、その闇はもっと濃く深くなる。
【希望、あるいは災い】
…これが本作の結末だ。

正しいことをするのを諦めて、
夢を見ることにしよう

この作品で散々訴えかけていた
"正しさとは何か"

10話かけたってそんなものは
分かるわけがなかった。
たぶん、一生分からない。
ただ分かったのは、正しさという武器では
太刀打ちできない現実の残酷さを
見せつけられただけだった。

それでも、夢を見ることはできる。
この夢は"正義は勝つ"ではなく、
希望を忘れないということではないか。

希望って誰かを信じることなんだね

目の前の信じられる人と真実。
それさえ見失わずにいれば、
"正しく生きていける"はずだ。

二人が笑って食べて、飲み込んだのは
最終話の牛丼だけだ。(カレーの時は笑ってない)
どんな世界にも必ず、
希望(信じられること)はあるはず。

パワハラ、モラハラしまくりの村井でも
仕事に対しては真っ当だからこそ
二人は笑顔で迎えたのだ。

この牛丼を頬張る二人と村井は、
真っ暗闇の中に一筋細い光が射すような
危うくて、頼りないけど確かにある希望だ。


そして、このビジュアルポスターは
明らかな関係性を示していた。

岸本【白】、浅川【グレー】、斎藤【黒】
(一人だけ何を見ているんだ…そっちは闇だぞ。)

"夢を見ることにしようよ"

この言葉には、この件で自分がグレーの立場であることを理解した浅川が、限りなく白(岸本)に近い自分でいたい。だから、岸本だけはずっと白でいてほしいという思いも含まれているのかもしれない…。

改めてスタッフとキャストの
強い意志と熱意を感じた本作。

オファーから6年が経っても待ち続け、見事に浅川を演じ切った長澤まさみの女優としての挑戦を毎週1時間、拝見させていただいた。という感覚。
とても贅沢であった。

眞栄田郷敦という、ニューフェイスと呼ぶには
失礼過ぎるぐらい圧倒的な演技力を知ることができた。
特に7話からの岸本の目力と纏うオーラには
ただならぬ気迫を感じた。


ドラマ史上に残るであろう物語に出逢えてよかった。

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