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葬送のフリーレン



この漫画はとてもいい。

キャラクターの魅力もそうだし、
なにのりも深い。

魔法使いのフリーレンは、
エルフで長生きな女の子。
魔王を倒すため10年という月日を共にしながら旅をした仲間、勇者ヒンメルの死をきっかけに
フリーレンは人を知るための旅に出る。

フリーレンには感情がなかった。
情緒的な部分が欠けていた。
ヒンメルの死を持って始めて涙を流した。
10年間一緒にいただけで何も知らない。

『…人間の寿命は短いってわかっていたのに…
…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…』

そうしてフリーレンは旅を始める。

人を救うため、
仲間が褒めてくれた魔法を集めるため、
人間を、仲間を、自分を知るために。

ヒンメルの死後から28年後…
という時間軸で物語は進んでいくのも
なんだか新鮮で。
大切な人がこの世からいなくなった後の世界は
まるで違って見えたりする。
時代は変わっていくし、
人々や街も変わっていく。
人間は年老いていずれ死ぬ。
でもフリーレンは違う。
そのままの姿なのだ。
自分自身はなにも変わらないから分からない。
だからフリーレンは時間の経過を
仲間の死、ヒンメルの死で感じているのかもしれない。
そんなことを考えると
とても寂しいし、孤独でもあるが
フリーレンの中には時の流れのように
当たり前の存在としてヒンメルがいる。
それはとても心強いはずだ。

ハイターも歳をとり、先が短い。
アイゼンはドワーフなのであまり変化はない。

ハイターは孤児であったフェルンという
女の子と暮らしていた。
彼女もまた、魔法使いだった。
病を抱えた自分の先が長くはないと悟り、
フェルンを一人にさせたくないと願う。
そして、フリーレンに託すのだ。
二度と誰かを失う悲しみを味合わせたくないと。

そんな想いを受け取り、フリーレンは
フェルンに技や知識を叩き込み
いつの間にかフリーレンの背を越したフェルンと
旅を再開する。

フェルンもまた、魔法に打ち込む。
それは自分を救ってくれたハイターに
『正しいことをしたと思って欲しい』から。
あのとき私を救って良かった、間違いではなかった
そう思ってほしい。
一人で生きる術を身につければ
そう思ってくれるだろうと。
フェルンもまた、人を想う優しい子。
(ちなみに私の推しはフェルン)

そして次に向かったのはアイゼンの元。
アイゼンには気掛かりなことがあった。
それは弟子のシュタルクの存在。
彼は何かの手違いで英雄扱いされ
街に居続けているが、本当は臆病で逃げるのが常。
アイゼンはシュタルクの真の強さを見抜いており
フリーレンたちの前衛としては最適だという。

シュタルクを訪ねるが、
想像以上の臆病者だった。
しかし、彼もまた人を想う温かさがある。
自分を育ててくれた師匠アイゼンへの想いだ。
アイゼンに成長した姿を見せるため、
安心させるため、
教えてもらったことを実直に。

『恐怖は悪いことではない。
恐怖が俺をここまで連れてきたんだ。』
その言葉の意味を知ると共に
シュタルクは自分の弱さと向き合い
強く逞しく成長する。

最後に勇者ヒンメル。
人々が今もなお感謝し、敬意を持ち続けている。
彼は人を救うことを一番に考えていた。
そして自分の顔が大好き、と言いながらも
人を、仲間を何よりも大切に思っていた。
人を救う理由として、
『誰かに自分のことを覚えていてもらいたいのかも』
の言葉通り、何かに迷った時、悩んだ時
皆が口を揃えて言うのだ。
『勇者ヒンメルならこうするだろう』
彼の生きた証は人々の心の中にあり続ける。

まだ序盤しか読んでいないにも関わらず
一人一人の弱さと信念、大切な人との大切な約束
人は亡くなっても記憶や思い出はなくならない。
自分が生きている限り、いつでもその思い出の中に
飛び込んでいけるという人間の儚さと強さ。
そんなことを感じられる作品だ。

もちろん魔族といわれる悪党もいる。
人間の言葉で人を欺くという
フリーレンが最も憎んでいる存在だ。

今ちょうどこの辺りを読んでいるが
ますます面白い。早く続きが読みたくて
ぐぬぬぬ…状態でもある。

アニメでも見始めたが、
アニメは映像と音楽がとても美しい。
あと思った以上に穏やかに感じる。
どちらもそれぞれの楽しみ方があって良い。

とにかく儚い。
でも、確実にフリーレンが心を耕していく。
元々いい子なのだがそれを上手く表現したり
言葉にできるようになる。
周りの人間や、仲間たちの愛情によって。

私は勇者物やファンタジー系の漫画は
あまり好んで読んだり見たりしないが
これは本当に面白い。おすすめ。です。

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