5月_鯉は渓では外道なのです [フライフィッシング歳時記]

5月は連休で始まる。
最近は不景気のせいもあって、家族サービスを近場で済ますお父さんが多いそうだ。
例にもれず我が家もそうした。
渋滞の時間をさけて、開園前に到着したのは山間部のファミリーパーク。
ここは広大な敷地の中に、各種遊具施設、巨大なジャングルジム砦、池などが在る。
公営なので料金が安く、子育て世代では言わずと知れた存在だ。

だから混む。
ゴーカートに乗るにも30分待たされる。
並ばされるのに疲れたところで、池のほとりにやって来た。
こう言う施設の池に必ず在るのが鯉のエサやり場。
ここには順番待ちがない。

早々に我が家もエサのペレットを3袋買った。すでに湾度には沢山のペレットが浮いている。
その下の鯉の数も多いのだけれど、彼女達は飽食状態。投げ入れて時間のたったペレットには見向きもしない。
それでも上手く鯉の鼻先にキャストできれば、のそっと浮いて来て、口にしてくれる。
満腹とは言え新鮮なエサにはつい口が出てしまうのだろう。

そこでこんな遊びが始まった。
まずお父さんが一匹の鯉を指名する(『今こっちに泳いでくる赤白のマダラのやつ』てな感じ)。いっせいのでエサを投げて、鯉がどっちのエサを食べたかで得点を競い合う。
七歳の息子はコントロールが悪く、ほぼお父さんの圧勝・・・・と思いきや妻が参戦してきた。

僕「ナイスキャスト、やるねえ、そろそろフライフィッシングも復活したら」
妻「・・・・」。
妻は結婚する前、2、3度だが、僕のフライフィッシングに付き合ってくれた事があるが、今では逆に僕の釣行を疎ましく思っている。
何とかおだててご機嫌を取り、彼女をフライフッシャーウーマンに復活させようと思ったのだが、どうやらその手には乗らなかった様だ。


連休の最終日、先日のご機嫌とりと家族サービスが効いたのか、1日だけ釣に行っても良いとのお許しが出た。
しかし前日の雨がたたって川はどこも増水ぎみ、なかなか行き先を決められない。
まずは春先に良かったY川の中流部、堰堤上のプールに行ってみる。
ライズが少々ある。
早速ドライフライをキャストしてみるが、反応がない。
それならばと、フライをニンフ(水性昆虫の幼虫時代を模した沈める毛針)に交換して、底を流す。
数回流した所で大きな当たり。竿が2、3度大きくしなるが、スッポ抜けた。
「な~んだ、やっぱ居るんじゃん」がぜんやる気が湧いてくる。
またしても当たり。
今度はしっかり針がかりした様だ。
水底で魚がギラッとひかる。
寄せてくると・・・・なんとウグイ(外道)だった。


渓流釣り師が狙うのは、アマゴやイワナなどのサケ科の魚。
ウグイやオイカワなどはコイ科の魚で、一般には外道とされている。
ひどいエサ釣り師になると、ウグイを釣った時、自分の背中側に投げ捨てる(川に戻さない)。
コイ科の魚は雑食性で、アマゴの卵を食べてしまう。比較的水質の汚染にも強く、近年、生活排水の流入によって清流が汚れ、しだいに勢力を延してきた。

かつて、清流の町郡上八幡では子供達がウグイ釣に興じた。
繊細で用心深いアマゴなどは大人が狙う魚であり、運良くアマゴを掛けた子供はそのシーズンヒーローに成れた。
ウグイを川に戻さない郡上八幡のエサ釣り師には、もしかしたらその頃の思い出があるのだろう。

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