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LOVE CINEMAS

第四話『イルカに乗った少年』

「ふぅん、君が言いたいことは私のことが好きってことね。」

時はさかのぼる。

僕の名前は長田学。こんなことは誰にも言えないが好きな人が一人いる。
イルカの調教師さん。彼女目当てでどれだけ水族館に通ったろう‥‥。
以前、水族館近くの喫茶店で彼女を見かけた。
その雑談から聞こえたのだけれど、名前は鈴江さんと言うらしい。

ちなみに僕はストーカーじゃない。
多分。

年上でも背が小さくてかわいらしい人だ。
高校2年である僕は、成人女性に惚れた訳だ。
敵わぬ恋かもしれないが、やってみる価値はある。

僕の好きな”山下晃司”さんの詩に「せめて攻めて散る」と言う一文があるように。

で、具体的にどうするのかと言えば、どう気持ちを伝えればいいのかわからないのでファンレターを書いてみた。すると返信があった。あったのだ。返信があったのだ。僕は「(500)日のサマー」の主人公張りに喜んだ。踊りたかったのだ。姉があの映画の意味が分からないのは恋をしたことがない人間だと断言していたのを理解した。

冷静になってみると、実はイルカに興味も何もないのにイルカに関しての質問ばかりを書いたので鈴江さんからの返事では「水族館で働きたい男の子」としてしか扱われてない様子。これは残念なことだが、僕にとってはアームストロング以上の一歩だろう。

男は真っ直ぐぶつかりなさい、と姉からのアドバイスがあったので次の手紙には

「会ってお話が聞きたいです。水族館近くの喫茶店で」

と書いた。真ん中高めのド直球、油断をすればホームランだ。僕の球威が勝つか彼女の選球眼が勝つか。えっ、何を言ってるのかわからない?そう、ぼくにもわからない。

返事があった。あったのだ。明後日、土曜の16:00に会いましょうとのことだった。当日、僕のとっておき。二本のペンギンのボールペンを握りしめると家を出た。

で、冒頭である。

ペンギンのボールペンのプレゼントを見るなり楽しそうに鈴江さんはコロコロと笑っていた。姉に聞いた話では”カタコト”とか言う作家が熱いらしい。何故、ペンギンのボールペンで気持ちが通ずるのかは教えてもらえなかった。

「君はロマンチストでインテリだね。付き合ってもいいけど、お姉さん、君が22歳の頃はもう30歳を超えてもうおばさんだよ?それでもいいの?」

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僕がどう答えたって?それは内緒、またの話。


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