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あの格安航空券を買った時点で、私の人生は変わり始めていた

*この記事は、「はじめての本 - Imperfect story of mine」という有料マガジンに掲載されている私小説の第三話です。第二話はこちらから。

私の人生は、チューリッヒ中央駅に降り立ったとき、いや、このチューリッヒ着の格安航空券を買った時点で、期せずして既に変わり始めていました。

初めて一人でやってきた海外。空港から乗った電車を降りると、映画にでてきそうなクラシカルで堂々とした駅舎と、隣接する国々(ドイツ、イタリア、フランス、オーストリア)から到着した電車から降りてくる国際色豊かで多言語な人々に、私は圧倒されました。

多様性が大好物な私にとって、スイスはよだれが垂れるほどの多様っぷりで、かつ全てが美しく洗練されていて、トラムに乗り換えながら、背中がぞくぞくするほどの興奮を覚えました。

グーグルマップもスマホもない1998年、私の頼りは「地球の歩き方」と、駅の観光案内所に置いてあった路線図つきの地図のみ。
目的地のユースホステルの最寄り駅でトラムを降り、地図を見ながらしばらく歩いていると、間もなく美しい湖が目に飛び込んできました。

幸か不幸か大きな荷物はなかったので、宿に直行せずチューリッヒ湖畔をぶらついてみることにしました。道行く人々は、みんな身なりが小ざっぱりしていて、たいていの大都市にいそうな浮浪者どころか、貧しそうな人すら見当たりません。緑が多く、ゴミ一つなく綺麗に清掃された街には、歴史ある石造りや煉瓦造りの建築が立ち並び、カラフルな牛のオブジェが点在し、素敵なカフェがいくつもあり、その美しい街並みに私はすっかり魅了されてしまいました。

ふと小腹が空いている自分に気づき、サンドイッチでも買おうと湖畔の売店をみてみると、どれも8〜10スイスフラン(当時のレートで800〜1000円弱)というお値段。日本だと500円程度で買えそうなものが、2倍近くすることに軽くショックを覚えながら、ベンチに座りチーズサンドイッチを食べていると、となりにブラウンのロングヘアがきれいな女の子が座り、私にニコっと笑いかけてきました。

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