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キーマカレー・アネモネ・女子大生

僕の職場の立地を一言で説明すると、正しいオフィス街である。正午から13時にかけては、首から正しい社員証を下げた正しい人たちが、彼らの胃袋を狙ってチェーン展開された正しい飲食店に列をなす。

正しい彼らは定時で帰る。遅くとも19:00には帰る。飲食店は一応22:00くらいまで店を開けているものの、正しさに置いていかれて閑散としている。

僕はこの街で夜勤の仕事をしている。

今日は珍しく忙しかったので、休憩が遅れた。”わ〜いお昼ご飯だ〜”という気持ちで20時のカレーチェーンに入店したところ、インド人シェフが厨房に肘を突き、グラビアアイドルのような上目遣いでこちらを見てきた。唯一の客にその目をするな。肘もだめ。いやごめん、正しくなくてごめんな。アイアムアブノーマルジャパニーズ。ナマステ。

ヘラヘラ謝罪しつつ、僕はこの寂しさにあぐらをかく。

毎度落ち着いてしまい、カレーを食べ終えてからも、居座ってアニメを観ている。

今夜の食後の楽しみは、「交響詩編エウレカセブン」第48話”バレエ・メカニック”。地球の歴史上最も明確に”愛の可視化”に成功した神回である。この回だけなら既に120回観ている。デザートにしては量が多いが中毒なので大丈夫。

ドミニクのアネモネへの愛の告白(最高)、それに対するアネモネの反応(最高)のセリフは当然暗記している。それでもまだ感動する。中毒だから。鑑賞を終え、静謐な気持ちでイヤホンを外すと、隣の席に女子大生のグループがいることに気づいた。他に誰も客がいないのに、隣に座らせる店側の意図も全くの謎であるが、それは置いておく。

ダダ漏れの会話を要約する。A子ちゃんには、彼氏がいて、彼氏と付き合っている根拠は男性器のサイズ感一点のみであり、B美ちゃんは今までの数あるワンナイトラブの中で忘れられない男性器があるとのことだ。そして、男性器の型を取り模型を作れる医療器具?があるらしくそれを使って忘れられない男性器をいつでも手の届く位置に置きたい。というようなこと言っていた。女の子もすげえ話をするもんだ。そして、隣に愛の全てを鑑賞し終えた直後の男がいることにはお構いなしだ。愛を目視した人間は存在感を消せるらしい。

話変わって、実は最近、色々とつらい出来事があった。本当に疲れている。

そういうときに限って、コマ送り映画のように、日常のどうでもいい記憶が強く残る。男性器は要らないが、正常で元気なときの自分の心の型を取り、いつも手の届く位置に置いておきたいものだ。身近な誰かに僕の気がすむまで話を聞いて欲しくても、僕は僕の気がすむまで他人になにかを押し付けられない性格なので、どうでもいい日記を書いて自分を慰める。

カレーもアネモネもエロ女子大生も、日記のネタになってくれてありがとう。特に女子大生。


「スキ」を押して頂いた方は僕が考えた適当おみくじを引けます。凶はでません。