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読書後にたまに発動する”領域展開”


たまには、自由度を制限して本を読んでみようと、「読書の秋2020」の企画に乗っかって本を選んでみることにした。約1ヶ月半あるんだし、いくら仕事が忙しいとはいえ、2冊くらいいけるだろうと。

気になる本があるとジャンルを問わずについ買ってしまうので、こうやって絞られているのはとてもありがたい。しかもジャンルが問わないのも最高だ。

久しく小説やフィクションの物語に没入するタイプのものを読んでいなかったので、対象書籍をスマホで見ながら、書店をフラフラ。ちょうど発行間もないころで、店頭では、秋の新刊がひしめく中で、ひと際目立ったのが本書。

『この本を盗む者は』(KADOKAWA)

・ ・ ・ あらすじ ・ ・ ・

「ああ、読まなければよかった! これだから本は嫌いなのに!」
書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、父の代わりに館を訪れていた深冬は残されたメッセージを目にする。
“この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる”
本の呪いが発動し、街は侵食されるように物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り世界が元に戻らないと知った深冬は、探偵が銃を手に陰謀に挑む話や、銀色の巨大な獣を巡る話など、様々な本の世界を冒険していく。やがて彼女自身にも変化が訪れて――。(Amazon.co.jpより)

本好きの身としては、手に取らずにはいられなかった。
そして、帯に書かれた「呪われて読む」というパワーワード。

普段、積読にあふれている環境には幸せを感じているが、 “呪い”とまではいかないが、たまに、うしろめたさのような心暗い感情が顔を出すこともあり、読む前からそそられた。

個人的に、特段気に入ったというか、ものすごく素晴らしかったところを2点ほど。
1つ目は、この本の中で出てくる蔵書を読むシーンで、普通に、別の物語として文章が展開されているところ。ストーリー展開上、当然なのだが話の途中で切られ、この本の物語(本筋)へと戻ってしまう。
いくつか出てくるのだが、多ジャンルを読む僕としては、正直どの作品も続きが読みたくなったのだ。

そう、独立した別作品として発行して欲しいと。
(この時、なぜかアニメ「機動戦艦ナデシコ」の中の「ゲキガンガー3」が真っ先に思い浮かんだ。)


もう一つは、読後感として、「好き」「嫌い」の対立構造ではなく、本書に出てくる人物は、全員"本が好き"なのだと感じられたところ。好きにもグラデーションがあり、さまざまな言葉であらわせる。人間に対しても使われる、愛好、敬愛、寵愛、偏愛、愛着、友愛、etc...。そんな言葉が浮かび、感じとれた。


読んでいる最中、終始アニメの映像が浮かんでいたため、続きから読んでもスッと世界に入り込める。

「舟を編む」、「ビブリア古書堂の事件手帖」、「かくしごと」…など”本”に関わる内容の本やアニメも色々見ているが、初めてかもしれない。装丁のイラストから、そう想起されたのだろうか。どちらにしても動く作品としても楽しみたい、そう思わせてくれる作品でした。

装丁にも惹かれ、カバーつけずに読みたいと思わせる見た目と質感。きっと手に取った段階で、本書の呪いにかかってしまったのかもしれない。本が好きな方は、間違いなくブックカースにかかってしまうはずです。


・ ・ ・ ・ ・ ・

この令和の時代になっても、今だに書店での万引き行為はなくならない問題として残っているようだ。いっそ、すべての本にブックカースをかけられたらよいのだろう、と読後も本の世界感から抜け出せずにくだらない物思いにふけりながら、今日も新しい本と出逢うために書店へでかける。