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ムシできない、虫のこと

ここ1〜2年の間で、「多様性」という言葉を色々な場面で目にするようになったと思う。でも、僕の中で思う「多様性」って言葉から連想されるのは、植物や昆虫の種の多さや生態のような生物多様性なニュアンス。多様性って自然発生的なもので、認めるもなにも無いんじゃないだろうか?と勝手に思っている。

そんなことはどうでも良いのだけれど、たまたま書店で表紙が見える形で陳列されていて、タイトル見て、思わず「何が?」とツッコミを入れてしまい、負けた気がしたので、購入。

「昆虫はすごい」(光文社新書)

子供の頃は、草むらを駆け回り、虫という虫を片っ端から捕獲をし、愛で、挙げ句の果てには繁殖させようとして、親に怒られるほど明け暮れていた昆虫採集。

知ってることの方が多いでしょ?くらいに読み始めていたが、なかなかどうして知らないことだらけだった。

想像以上に、まるでヒトじゃないかと思うような行動を昆虫がとっている。
よく、アリやハチが社会性がある昆虫として挙げられ、女王アリ(ハチ)を中心としたコロニー(集団)を形成している様子を人間社会に似ていると比較されるが、そんなレベルではなかった。
植物を栽培して、食料にしている種類もいるというのだ。もう、農業ではないか…。他の虫との共生というところまでは知っていた。何かをもらうかわりに天敵からの身を守るとか、片方だけに利益がある片利共生(寄生)とか。

さすがにキノコを栽培するアリがいるとか、とても信じ難かった。
ヒトが農耕を行うようになったのが約一万年前に対し、昆虫はおそらく約八千年前くらいから行ってきているというのだ。もう、語彙がなくなる。「スゴい」しか出てこない。


著者は“おわりに“で、あえてヒトと対比する形でところどころ書かれたこと、それぞれの行動(本能と学習)の意味合いが異なることにも言及されているが、そこを抜きにしても面白さを感じた。むしろ、個人的には生物種として本能レベルでの行動ということにより興味がそそられる。

たとえば、今こうして文字を書いている僕にとっては、言葉や身振り手振り以外の意思疎通手段自体を不思議に思うし、さらに言うと、種が違うもの同士のコミュニケーションを、学習でなく本能レベルで行われているところに神秘性を感じる。

他にもさまざまな昆虫たちの生態が僕ら人間に近しい行動形態とっているので、いつ振り返って読んでもよい本になると思う。

進化系統樹的には大きく分かれていったはずの生き物が、本能と学習という違いがあるにせよ、環境の適応という生存戦略のために取ってる行動形態がここまで近しいというのは、世界の広さを実感し、思わずちっぽけな悩みなど吹き飛んでしまった。

本書冒頭で、人が地球上を我が物顔で跋扈していると思ったら大間違いなんだなぁと気づかされてから、引き込まれっぱなしだった。脊椎動物(脊椎動物門)を全部合わせても6万2000種に対し、昆虫(節足動物門>昆虫綱)が100万種とか桁違い。トラ×ライオン=ライガーができました、ヒャッホーとかいう比ではない。
勝手に増えてくのよ。というか、もっといるらしいのよ、マジで。はー、世界は広いなー。

そういえば、漫画の「テラフォーマーズ」に出てくる生き物が、いつの間にか虫以外も出てきたけど、もっと虫だらけでも面白そう。(戦闘向きでない能力も多そうなので、ボツになってしまっているだけかもしれないけれど…。)