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蒲公英に蹄鉄

わたしは白い綿毛のように
風に乗って流されていく。
わたしの希望はどこか遠く
安住の地に降り立つことだけ。
わたしは、人並みでいい。
多くは望まないから、普遍的な幸せが欲しい。
わたしを流す潮流よ
どうか、ありきたりな人生をください。

こんなささやかな願いであれば
労せずとも、叶うだろうと。
わたしはあわれな藻屑のように
白い波にかき回される。

そうしてわたしは道端に棄てられた。
轍の中途に、打ち捨てられた。
「幸福には、相応の対価がいるのだ」と
そう告げたあなたは涼しい顔だ。

わたしは白い綿毛のように
風に任せて飛んできました。
流され行き着く先にはきっと、
望んだ人生が待っているのだと。
されどあなたはわたしの足に
蹄鉄を打ち付け、二度と飛べないようにしたのです。

「自分の足で、幸せになれ」と。

軽やかに駆ける隣人を傍目に
わたしの足は重く、動かない。
一際、強い風がシャツの背中をふくらませるけれど
わたしはもはや、動けない。

この場から、とても動き出せそうにないので

わたしはせめて暖かな、日差しのほうに向き直ることにします。

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