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冬の過酷な練習を乗り切るために必要な自律神経の話。

早速ですが、皆さんはこの本を知っていますか?

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青学駅伝選手たちが実践! 勝てるメンタル / 原 晋, 根来 秀行

大学駅伝3冠・箱根駅伝4連覇など、陸上競技の世界に旋風を巻き起こしてきた青学陸上部。当時無名だった青学陸上部を10年間で改革し華々しい成果を上げてきた原晋監督と、国内外のトップアスリートのアドバイザーも務めるハーバード大学の根来教授のタッグによって書き上げられた本書では、科学的なメソッドを用いて「勝てるメンタル」が分析されています。

今回は本書を土台として、冬の過酷な練習を乗り切るために必要な自律神経の話をしていきます。

二大制御機構

私たちの体には「二大制御機構」というものが存在しています。
人体の土台には遺伝子があり、その上に自律神経系とホルモン系が二大制御機構を形作っているのです。
自律神経系とは瞬発的に体を制御している部分のことで、ホルモン系はゆっくりと体を制御している部分と考えると理解しやすいと思います。
どちらもアスリートが高いパフォーマンスを発揮するためには重要な人体システムですが、今回は特に自律神経にフォーカスを当てていきます。

さて、自律神経の働きを具体的にみていきましょう。
自律神経とは、生命活動に必要不可欠な「鼓動」「脈拍」「血圧」「体温」などの自らの意思で動かせない部分を制御しています。
例えば、冷たい川に飛び込んだとき。鼓動が早くなり、血圧が上がります。
これらの働きは全て無意識下で自律神経によって行われている作用です。

そんな自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」という二つの相反する神経によって構成されています。
人体を車に例えると、交感神経は活動するためのアクセル、副交感神経は休息するためのブレーキの役割を果たしているといえます。
このアクセルとブレーキを上手にコントロールすることで、冬の過酷な練習においても高いパフォーマンスを発揮することができるというのが、本稿で皆さんに最も伝えたいことです。

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交感神経と副交感神経のバランス

アスリートが高いパフォーマンスを発揮するために最も大切なことは、交感神経と副交感神経のバランスを取ることです。そしてそのためには、副交感神経の状態に着目するのが確実だと言われています。

交感神経(=アクセル)は、緊張・興奮を司る神経です。そのため、「不安」や「心配」、「恐怖」、「怒り」、「落ち込み」と言ったストレスを受けると急激に交感神経の働きが高まります。
つまり、心配したり興奮するような場面で緊張してしまうのはいわば本能ですので、そんな場面で「緊張するな」というのは無理があります。

そこで、安心・休息を司る神経である副交感神経(=ブレーキ)の働きを高め、交感神経とのバランスを整えることができれば、緊張しつつもパフォーマンスを低下させずに実力を出し切ることができるようになる、というわけです。

このように、常に副交感神経を引き上げる習慣をつけるということは、ポテンシャルを引き出しやすい状態に心身を整えることと同義となります。
特に冬の過酷な練習は交感神経が活発になりやすいので、副交感神経を引き上げる習慣をつけるためにうってつけの期間と言えるでしょう。

自律神経が人体にもたらす作用

もう少し自律神経について見ていきましょう。

栄養を過不足なく摂ることは、健康に繋がります。これは、血管を介して各細胞に運ばれる血液の質が上がるためです。
また、疲労した時はマッサージによって疲れが軽減します。これは、血管およびリンパでの老廃物回収作業を、マッサージの刺激により助けているためです。
このように、血液および血流を最適な状態にすることは、疲労回復に大きな効果を発揮しますが、それを最適な状態にコントロールするための働きも「自律神経」が司っているのです。

例えば緊張しているときなど、交感神経が優位な状態を考えてみましょう。このとき体では、血管が収縮し大きな血管(大動脈等)にしか血液が巡らなくなっています。

反対に、お風呂上がりなどの副交感神経が優位な状態では、血管が緩み、体の隅々まで張り巡らされている毛細血管まで血液が行き渡るようになっています。

この働きをうまく使うことで、例えば寝る前に副交感神経を優位にすることによって、血管および血流を疲労回復に最適な状態に持っていくことができ、翌日に疲労が残りにくくなる効果が見込めます。
他にも、冬の過酷な練習においても副交感神経を優位にすることによって、手や足の先の筋肉まで血液を送ることができ、体の可動範囲を広げる効果が見込めます。

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自律神経の整え方

ここからは、実際にどのようにして自律神経を整えるのか、その方法についてお伝えします。

私たちの心情と呼吸はリンクしています
緊張した時、焦った時、パニックを起こしそうな時は呼吸が浅くなります。
冬の練習においても、寒さによって呼吸が浅くなります。
そして、呼吸が浅くなると交感神経が優位になるのです。

そんな時ほど、まずはゆっくり腹式呼吸をしてください。
ゆっくり腹式呼吸をすることによって横隔膜が膨らみ、横隔膜の近くにある自律神経が集まっている組織が刺激され、副交感神経の働きが大きく高まると最新の研究によってわかっています。
またこの場合、吸う息よりも吐く息を長くすることで横隔膜がゆったりと緩み、より副交感神経が高まります。

実際の例として、一流のアスリートは呼吸を整えるのが上手です。
例えばイチローはバッターボックスに立つ時、そして立ってから、必ず同じ一連動作をします。それも、どんな時も必ずゆったりとした動きで行なっています。
このルーティンは交感神経を刺激することなく、ゆったりした動きで副交感神経のスイッチが入り、呼吸リズムを整えるのにもとても効果的なのです。
さらに、普段の動作や喋り方もやはりゆったりと落ち着いています。呼吸が浅く速い状態だとゆっくり話せないので、普段から呼吸を整えているからこそゆったりと話すことができます。

このように落ち着いて喋るように心がけるだけでも呼吸は連動して穏やかな深い呼吸となり始めます。
余談ですが、『鬼滅の刃』でも呼吸法が鬼殺隊の強さの鍵を握っています。あれもあながちデタラメとは言えないのかもしれませんね。

まとめ

長くなってしまったので、最後に本稿のポイントをおさらいします。

1. 交感神経は活動するためのアクセル、副交感神経は休息するためのブレーキの役割を果たしている
2. アクセルとブレーキを上手にコントロールすることで、冬の過酷な練習においても高いパフォーマンスを発揮することができる
3. 副交感神経を引き上げる習慣をつけるということは、ポテンシャルを引き出しやすい状態に心身を整えることと同義である

冬の過酷な練習を乗り越えるために、そして大一番の大会で実力を発揮するために、これから自律神経を意識してみてはいかがでしょうか?

それではまた次の記事でお会いしましょう!

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